「量子コンピュータは仮想通貨の脅威になる」──野口悠紀雄氏
「量子コンピュータの発展は仮想通貨やビットコインにとって、非常に大きな脅威になると考えている」―――一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は、9月27日に開かれたRakuten FinTech Conference 2017の講演「ブロックチェーンの進化とDigital通貨」でそう話した。
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術に支えられており、取引の承認や追記を行うには難易度の高い計算問題をコンピュータで解く必要がある。野口名誉教授によれば、この計算問題を解くには“総当たり攻撃”――可能な数を1つ1つ試して正しい答えを見つけるという方法しかなく、この方法にブロックチェーンの暗号技術は依存しているのだという。
しかし、量子コンピュータの発展は加速しており、5年以内に実用的な量子コンピュータを発表する予定の企業もあるという。そうなればコンピュータの計算スピードは飛躍的に上昇し、現在ブロックチェーンで用いられている暗号システム「公開鍵暗号」が破られる可能性があるという。
量子コンピュータは、量子ビットと呼ばれる情報単位を用いることで従来のコンピュータよりも高い計算能力を持つコンピュータ。量子ビットでは0と1だけでなくその2つを重ね合わせた状態(量子の重ね合わせ)を表すことができ、よりたくさんの値を扱えるようになるため、量子コンピュータはこれまで時間がかかっていたような計算や解析も短時間で行えるようになるとされている。
公開鍵暗号は電子署名などに用いられている暗号システム。署名を作る「秘密鍵」と、署名の信頼性を確認する「公開鍵」という対になる2つの鍵を用いる。片方の鍵で作った暗号文はもう1つの鍵で復号が可能で、秘密鍵は署名した本人だけに分かるよう厳重に管理されている。公開鍵から秘密鍵を求めることは原理的には可能だが、膨大な計算処理を行わなければならないため、従来のコンピュータでは難しいとされてきた。しかし、相手が量子コンピュータとなれば話は変わってくる。
公開鍵暗号が成立しなければ、それに依存する仮想通貨やブロックチェーンも成立しなくなる。「仮想通貨やブロックチェーンはもうおしまいなのではないか」といった極端な意見も出てきているという。しかし野口名誉教授は、「仮想通貨やブロックチェーンが全てダメになるわけではない」と話す。
「現在の公開鍵暗号に変わる新しい暗号システムや新しいブロックチェーンのシステムがすでに開発されている。新しい暗号は、量子コンピュータが実用化されたとしても、解くことができないと考えられている」(野口名誉教授)
ブロックチェーン技術については、現在のように取引データを塊(ブロック)にしてつないでいくのではなく、取引を1つ1つ承認していくような方法も考えられはじめているという。
「新しい暗号やブロックチェーンシステムはまだ完成しているとはいえないが、量子コンピュータも完成しているわけではない。将来を正確に見通すことは非常に難しいが、量子コンピュータができたからといって、必ずしも今の世界が壊れてしまうわけではない」(野口名誉教授)
「ブロックチェーンの進化とDigital通貨」で野口名誉教授らとともに登壇した、ブロックチェーン技術プロバイダーである米BitFury Groupのジョージ・キクヴァッズ取締役副会長も「野口教授と同感だ」と話す。「暗号化もどんどん進化し、ビットコインの活用技術やP2Pの世界も進化している。手をこまねいているわけではない。必ず新しい解が生まれてくると思う」(キクヴァッズ副会長)
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