「ブロッキングの前にやるべきことある」 ISPや弁護士が考える「海賊版サイト対策」とは(3/3 ページ)

DNSブロッキング、なぜ違法・違憲? 森弁護士による説明

 企業法務や電子商取引、インターネット関連などを専門とする森弁護士は、「DNSブロッキングは憲法における通信の秘密の侵害や、電気通信事業法違反に当たる」とした上で、例外的に適法となる「違法性阻却事由」の1つである「緊急避難」にも当たらないのではと指摘する。

「違法性阻却事由」とは

 ISPによる児童ポルノサイトのブロッキングは確かに行っているが、これは現在起きている児童の人格権への侵害が「重大かつ深刻」で、「生命に対する重大な危険に比肩しうるもの」かつ、ブロッキングの他により侵害性の少ない手段が存在しなかった、つまり、「緊急避難」の要件である「現在の危難」(今起きている)、「補充性」(やむを得ずにすること)、「法益権衡」(生じた害が避けようとした害の程度を超えない)を満たすからだという。

「緊急避難」の構成要件
児童ポルノのブロッキングの際に議論された、緊急避難の3要素

 2010年に公表した児童ポルノ対策作業部会の報告書でも、著作権侵害に対するブロッキングは認めていないという。著作権侵害は「現在の危難」に認められる可能性はあるが、差し止め請求や検挙の可能性があることや、損害賠償によって被害回復の可能性があり、一度流通すると被害回復が不可能な児童の権利と同様に考えられないことなどを報告書では理由に挙げている。

安心ねっとづくり促進協議会 児童ポルノ対策作業部会の2010年の報告書

 こうした過去の検討から、森弁護士は「国が主導するブロッキングは違憲の恐れがある。だから政府は『民間の自主的な取り組み』という表現をしたのだろう」と歯切れの悪い政府決定の事情を推測した。

 JAIPAの立石さんは、「児童ポルノへのブロッキングの検討は3~4年ほど慎重に検討してきた。それに対し、今回の政府決定にはオープンな議論がない。自民党の通信関係の議員ですら私が電話するまで本件を知らなかったというほど。政府が法的リスクを負うというが、どうやって負うのかも分からない。特定サイト以外への影響がないようにブロッキングをプロバイダーに導入するのも時間がかかるし、数年前ならともかく、パブリックDNSなど迂回(うかい)方法がある現在の状況でDNSブロッキングに効果があるのかも疑問だ」と、政府の不透明で拙速な決定に対し苦言を漏らした。

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この記事の著者

井上輝一
井上輝一

2016年3月からITmediaにジョイン。ITmedia Mobile、PC USER、LifeStyle、ヘルスケアで編集・執筆を兼務。2017年4月からITmedia NEWSでの兼務も開始。2019年4月にNEWS専属となる。スマートフォンやPCといったガジェット系の他、理系(神経科学)のバックグラウンドを生かして科学系のネタや、量子コンピュータ、ブロックチェーン、AIなど多岐に渡って取材している。

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