災害発生時の「現金最強説」は本当か キャッシュレス決済の現実(3/3 ページ)
理由はいくつかあるが、「キャッシュレス決済の普及自体がここ10年ほどのことで、参考になるケースがほとんどない」「仮に障害が発生しても全国規模ではなく局所的で、ニュースとして話題にならない」「英ロンドンで昼間にクレジットカードの大規模障害があったが、みんな適当にティータイムを楽しんでいる間に復旧した」といった具合だ。
ただ、筆者が唯一参考になると思ったのは、2012年10月に米国東海岸を襲ったハリケーン「サンディ」のケースだ。このときは米ニューヨーク市が広範囲にわたって浸水し、地下鉄や自動車のトンネルの多くが水没したほか、ニューヨーク証券取引所も2日間閉鎖を余儀なくされ、電力を含むインフラ復旧まで数週間を要した。
世界最大の都市での大災害ということもあり、さまざまな情報が報じられたため、これらがアーカイブとして大量に残っている。このため、月日が過ぎた現在でも「都市インフラは自然災害にどう対処すべきか」というテーマでの研究が可能となっている。当時の米国は「キャッシュレス先進国」といえるほど決済インフラは発展していなかったが、「災害時の決済では現金が重要」というのは見て取ることができた。
サンディ通過後に現れた「大量のATM」
サンディ通過後にニューヨーク市内各所でまず見られたのは、当面の生活費と移動手段確保のためにATMとガソリンスタンドに長蛇の列が発生したことだ。人が殺到することでATM内の現金やスタンドのガスもすぐに底を突くので、この供給体制が問題になった。
ここで何が行われたかといえば、銀行による大量の臨時ATMの設置だ。これにより、行列をさばくとともに、1台当たりにストックしてある現金が足りなくなる問題に対処した。移動ATMは日本でもイベント会場などでよく見られるが、いろいろ聴き取りを行っていると、そもそも災害時の出動は想定していないという。
このような大量のATMは普段は使わないものなので、ある意味無駄なのかもしれないが、とっさの機転でATMを大量配置するという行動はなかなか目からうろこだ。キャッシュレスの推進もさることながら、そのバックアッププランとして災害時にどのような決済手段が有効で、それを必要な人に実際に届けることが可能か、そろそろ日本全体で検討してもいい時期なのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
2
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
3
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
4
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
-
5
Xの「いいね」長押しで1ドル送金 マスク氏が“投げ銭”機能を予告
-
6
「楽天ドライブ」に不正アクセス 保存したデータなど1.5万アカウント分が取得・閲覧のおそれ
-
7
たばこ休憩なき時代の“一服”をどう取るか 温熱と“聞こえない音”で休む、JT子会社のアイマスクを試す
-
8
「能動的サイバー防御」きょう開始 警察・自衛隊などが攻撃元サーバを無害化 高市首相も狙いを説明
-
9
パナソニックHD子会社、使用禁止の生成AIに従業員約33万人分の個人情報をアップロード
-
10
「漏えい」の一言で素通り客が振り返る──相次ぐ情報流出の中で開幕のセキュリティ展示会 来場者の態度も激変
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR