小寺信良のIT大作戦
小規模企業向けクラウドPCは浸透するか Webブラウザから使えるマシン「Windows 365」登場で考えた(2/2 ページ)
一方で一般業務では……
さてクラウド利用に関して、特殊な業界の事情から紹介したが、振り返ってWindows 365である。料金プランとしては「Windows 365 Business」「Windows 365 Enterprise」といったものが提供される予定だが、「Windows 365 Home」や「Windows 365 Personal」がないところを見ると、個人向け・家庭向けには需要がないと見ているのだろう。
仮想CPUコア数やメモリ、ストレージ容量で複数のコースが用意されるようだが、コスト的に高いか安いかは、リアルにWindows PCを買った場合と比べてどうか、ということになる。現在のPCの平均価格をざっと10万円と設定して、法定耐用年数が4年で48カ月。割り算すると月額2083円である。そう考えると、意外に実マシンは安い。
10万円のPCでスペックを調べてみると、AMD Ryzenなら8コア、Intel Core i5なら4コア、メモリ16GB、SSD512GBぐらいである。つまりものすごく単純に考えれば、これぐらいのスペックのクラウドPCが月額2000円以下ならWindows 365の方が得……ということになる。
現在多くの企業でテレワークが導入されて久しいが、各社員にテレワーク用PCまで支給できた会社は少ないだろう。会社のマシンは持ち帰り禁止となれば、社員の私物マシンで業務をこなしていることになる。プライベートでも利用するPCに会社のデータが同居するというのは、セキュリティ面でも問題があるところだ。
そうした課題をかかえる、社員100人未満の会社がWindows 365を人数分契約するといった状況は、比較的想像しやすいところだ。ハードウェア自体の管理やセキュリティに関しての工数も減る。ローカルにデータを持たず、全てクラウド上に置くことで、ファイル共有などはテレワークであっても社内LAN同様の環境に戻ることも期待できる。
そしてWindows 365に期待されるのは、ローカルマシンよりも強力でクリーンなWindows環境が手に入ることだろう。例えばWindows 11に見放された旧マシンでも、ブラウザさえ動けば最新のWindows 11環境が手に入ることになる。またメーカー製PCにありがちな、使わない体験版が山ほど入っててパフォーマンスを落とすみたいな事態に悩まされることもない。
こうしたメリットまで含めて考えると、月額3000〜5000円ぐらいでもコストとして合うのかなあという気がする。
ただ、オフィスアプリとWebアプリだけで業務が回るならいいが、特殊なアプリを業務で使用する場合は、簡単にいかないかもしれない。例えば先のEDIUS Cloudでは、クラウド上でソフトウェアを動かすことよりも、ライセンスキーをどう動かすかに一番時間がかかったようだ。起動するたびにIPアドレスやマシンIDが変わるという状況でどうライセンス管理していくのか、ソフトウェアメーカー側の対応も迫られる。
Windows 365は、映像制作のような特殊業務ではなく、一般業務ユーザーを狙って提供するものだろう。少人数の企業でそうしたメリットを理解して、実マシンを買うよりもいい、と考えてくれるかが課題になる。だがそこは、非常にコストに厳しい世界でもある。コストとは単に月額料金のことだけではなく、移行時間や手間、習得にかかる労力等も含まれる。ゆくゆくはクラウドPC化するにしても、「うちは今じゃない」という判断は、常にありうる。
コストを度外視しても導入したいというキラーソリューションがうまく見つかればいいのだろうが、まずは値ごろ感で魅力がなければ、旧態然とした「リース」にも勝てないということにもなりかねない。Microsoftは、こうした中小企業に対してどういう訴求を用意しているのだろうか。答えはもうすぐ、分かる。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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