分かりにくいけれど面白いモノたち
技術者「本当にやるの?」──わざと光を被らせるエフェクトを搭載した大胆なインスタントカメラ、富士フイルム「INSTAX mini 99」開発秘話(5/6 ページ)
その攻めの姿勢を最も強く感じるのが、色ではなく、光漏れを再現するために発光自体もランダムに設定されている「LL(ライトリーク)」である。何だか、うっかりカメラの裏ぶたを開けてしまった時に出来るような、なんともドラマチックな光になるのだ。これは、単なるカラーフィルターでは実現できない。
「開発陣が作成したサンプルを見た時、これまでのデジタルのカラーフィルターとは全然違うなと感動しました。やっぱり本当の光を使っているからこその表現力なのです。そう感じた時に、この商品企画はいける、と思いました」と高井さん。
「スマホなどの写真を比べると微妙に失敗感があるんだけど、それはそれとして見ると、なにかいいんですよ」と高井さんが言うように、このカメラは、アナログのフィルムカメラで、アナログな感覚で絵作りができると同時に、これまで見たことがない種類の写真が撮れるカメラなのだ。
しかもそれは、トイカメラのように、レンズの性能が低いとか、設計が悪いとか、工作精度に問題があるとか、フィルムが古いとか、そういう偶発性の元での「変な写真」ではない。そう写るように狙って作られて、その上にシャッターを切る人の思惑や感性が加わり生まれる新しい写真だ。
あえてアンコントローラブルなところを残したり、飛んだり、写らなかったりする可能性も含めて、使う人に委ねた設定にしている。そのことが、このカメラの新しさだし、魅力だと私は感じた。
とにかく、撮っていて面白いのだ。チェキフィルムならではの、じわじわと像が出てくる間も、とてもわくわく出来るし、出てきた写真が意図に沿っていなかったとしても、じっくり見ると面白さを発見できたりする。デジタルとは違って、フィルムは意外に、飛んでいたり潰れていたりしているようで、案外、像をしっかり捉えていたりする。その微かに写っている感じもまた面白い。
ビネットモードも、面白い手法で実現している。レンズの周囲を覆って周辺の光量を下げる、つまり意図的にケラレを作るという方法だ。
この方法自体は、特に新しいものではなく、あえてケラレが起こるフードを着けて周辺光量を落とす手法は、フィルムカメラの時代から結構普通に行われていた。ただ、この機能をデジタル処理ではなく、アナログの手法で搭載したというところに、「mini 99」の「カラーエフェクトコントロール」と同じ姿勢が感じられるのだ。
このビネットモードは、十分な光の元で撮影した場合、あまり周辺光量落ちが目立たない感じに写る場合がある。それは暗い背景の写真の時も同じだ。つまり、ビネットモードをオンにしても、その効き具合は被写体や撮影状況によって変わるのだ。それこそが、このカメラがアナログの手法で機能を実現する意味なのだろう。そうやって、ある程度までは撮影者の意図を反映しながらも、少しだけアンコントローラブルな部分を残す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
分かりにくいけれど面白いモノたち
ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
熊本地震でTeslaのスーパーチャージャー無料開放 熊本、福岡など九州10カ所
-
3
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
4
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
7
熊本「通れた道」マップ、トヨタが公開 ホンダも「通行実績情報マップ」
-
8
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
9
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
10
熊本で非常時Wi-Fi「00000JAPAN」発動中 KDDIが無料開放、他社ユーザーも利用可
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR