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“メタボ”が脳にゴミを詰まらせる? 「においが分かりにくい」経て認知症へ 米大学が新説

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 米テキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校と米メソジスト病院に所属する研究者らが国際学術誌Frontiers in Neuroscienceで発表した論文「The olfactory-glymphatic syndrome: linking smell dysfunction, cognitive impairment and sleep disturbances in neuropathological disorders」は、メタボリックシンドロームが脳の老廃物排出ルートを塞ぎ、認知症などの初期症状である嗅覚障害を引き起こすとする仮説を提唱した総説だ。

 アルツハイマー病やパーキンソン病といった脳の病気では、記憶障害や運動障害が現れる何年も前から、においが分からなくなるという嗅覚障害が先行することが多い。また認知機能障害、睡眠障害、そして脳の老廃物を排出する機能(グリンパティック系)の低下もセットになって現れると分析している。

 一連の症状を引き起こす根本的な原因として、研究者らが指摘しているのが、「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)。高血圧や糖尿病、肥満といった代謝の異常が起きると、自律神経のバランスが崩れ(副交感神経の亢進)、鼻の奥にある鼻甲介の血管が異常に拡張して血液が滞るようになるという。

BMIが同程度の2人の全身血液プール画像。メタボリックシンドロームの徴候がある患者(A)では鼻部に血液の滞留(矢印)が見られるのに対し、BMI高値以外に徴候のない患者(B)では同部位に滞留が見られない

 近年の研究で、睡眠中に脳内にたまったアミロイドβなどの有害なゴミ(老廃物)は、鼻の奥にあるリンパ管を通って排出されることが分かってきている(動物実験が中心の知見)。要するに、メタボリックシンドロームによって鼻の奥の血管が腫れ上がると、脳のゴミの排水管の役割を果たしているリンパ管が物理的に押しつぶされて、流れが塞がってしまうというのだ。

関連記事: “脳のゴミ”は鼻から捨てられていた? 老化で詰まる排出路、薬を鼻から投与で改善 韓国主導チーム研究

 こうして脳のゴミ捨て機能が滞ると、排泄ルートの出口に近い、においを感じる神経の周辺から有害なタンパク質があふれて局所的に蓄積し始める。これが、記憶力の低下よりも先に嗅覚障害が起こる理由だという。

 そして、処理しきれなくなったゴミの蓄積が脳全体に波及していくことで、最終的に認知障害といった症状へと進行していくと説明している。この現象は、神経変性疾患だけでなく、うつ病や外傷性脳損傷、統合失調症、自閉スペクトラム症など、様々な脳のトラブルに共通して見られるという。

提唱する概念図。メタボリックシンドロームでは副交感神経の亢進により鼻甲介の血管が拡張・血液が滞留し、隣接するリンパ管を圧迫して、脳の老廃物を含む脳脊髄液の流れを妨げると提唱している

Source and Image Credits: Phillips WT and Schwartz JG (2026) The olfactory-glymphatic syndrome: linking smell dysfunction, cognitive impairment and sleep disturbances in neuropathological disorders. Front. Neurosci. 20:1897376. doi: 10.3389/fnins.2026.1897376

掲載した2枚の図はいずれも同論文に再掲されたもので、初出は1枚目がPhillips, Sheesley, and Schwartz, Front Neurosci, 2026、2枚目がPhillips and Schwartz, Front Aging Neurosci, 2024. doi: 10.3389/fnagi.2024.1482255

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山下(Seamless)
山下(Seamless)

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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