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2004年の自作PCパーツを「年末年始商戦」で占ってみた

» 2004年01月07日 18時36分 公開
[長浜和也,ITmedia]

前年よりも好調だった年末年始商戦

 各ショップで口をそろえていたのが「昨年に比べて年末年始は人出が多く、売り上げもよかった」という感想。「といっても急激に回復したわけではなく、客足が落ち込むことなくアベレージがじわじわっと増えたような感じ」(ツートップ秋葉原本店)「12月始めは出足が遅く不安だったが20日を過ぎるあたりからお客がドッカンドッカン増え始め、結果的には来店者数も売り上げも好調だった」(T・ZONE PC DIY SHOP)「とくに目立った製品が登場したわけではないが、晴天が続いて暖かかったことが大きかった」(ブレス)

 好調だった年末年始商戦で、とくに目立って売れていたのが記録型DVDドライブ。各ショップで1万円台半ばの価格をつけたドライブに人気が集中したようだ。「使う使わないは別にして、DVD-RAMにも対応したマルチドライブを購入するユーザーも多かった」(ブレス)

 そのほか、動きが多かったのは季節に関係なく人気のあるビデオカード。どのショップでも「相変わらずRADEON 9600XTが強い」という傾向は共通している。ただし、苦戦を強いられているGeForce FX陣営のなかでも、GeForce FX 5700 Ultraはそれなりに出ているようだ。また、昨年末に登場してそのコストパフォーマンスが注目されたGeForce FX 5900 XTも「GeForce FX 5700 Ultraと並んで人気が集まっていた」(TSUKUMO eX.)

 CPU&マザーボードは「インテル系の製品が強い」傾向が続いている。「動きが多いCPUは、2万円台のPentium 4やCeleron。とにかく2万円台という価格的な要因が大きい」(TWOTOP)という意見は各ショップで多く聞かれるが、Athlon 64 3000+の登場でAthlon 64系も出る数が多くなってきたというショップもいくつか見られた。「ただし、Pentium 4からの乗り換えというよりは、Athlon XPのハイエンドクラスからの転向が多いようだ」(ブレス)

 マザーボードはIntel 865ファミリーが相変わらず堅調に購入されている。昨年後半に相次いで登場したサードパーティ製チップセットを搭載したマザーボードは「SiS、VIA狙いのマザーボード購入予定ユーザーは、SiS655TXを待っているようだ」(T・ZONE PC DIY SHOP)、「SiS655FXに人気が集中している。VIAのPT880は登場したときに即売状態だったが、その後はペースが落ちてしまっている」(TSUKUMO eX.)「意外と数が出たのはATIのRADEON 9100 IGP。サードパーティ製ではこれに人気が集中した」(T・ZONE PC DIY SHOP)という声もあったが「思ったよりも動きが少ない」という声が各ショップで共通した感想のようだ。

 AMD系マザーボードでは、長らくAthlon XP対応のnForce2 Ultra400が売り上げの主流だったが、Athlon 64 3000+の登場で、nForce3 150やK8T800といったチップセットを搭載したマザーボードに売れ筋が移行する気配が各ショップで見え始めている。

 「インテル系を選択するユーザーは、多様なインタフェースを用意している多機能マザーを選び、Athlon 64を選択するユーザーはコストを抑えるために、シンプルな構成のマザーを選ぶ傾向が見られる」(TSUKUMO eX.)「Athlon 3400+に対するユーザーの反応が早い。きょう入荷した分がもう(取材したのは昼休み直後)完売してしまった」(クレバリー)

 マザーボードで一つ気になったのが、「売れるマザーが特定のベンダーに偏り始めている」といった状況が各ショップで聞かれたこと。以前から、大手ベンダーのマザーに人気が集中する寡占傾向はあったものの、その比率が今までよりも大きくなっている、という声を多くのショップで耳にした。

 テレビチューナー内蔵キャプチャーカードも年末年始で動きが多かったパーツの一つ。「カノープスのMTV1200に人気が集中」(クレバリー)「うちではアイ・オー・データ機器のGV-MVP/RXはよく出た」(ブレス)「カノープスのMTVとNECのSmartVision HG2がトップ、それを追ってバッファローとアイ・オー・データ機器」(TWOTOP)と売れ筋は各ショップで異なっているが、共通しているのは「価格が1万円台半ばで、ハードウェアエンコード対応」という条件。「MTV1200から上位機種になるといきなり価格が跳ね上がる。テレビが見れればいいというユーザーは5〜6000円程度のソフトウェアエンコードの製品を購入するが、録画を意識するほとんどのユーザーはハードウェアエンコードの製品を選択している」(ブレス)

2004年に期待するのはやっぱり「Prescott」

 年末年始商戦が思いのほか好調で「笑顔」の多かったパーツショップが、口をそろえて今年のキーワードとしてあげていたのが「Prescott」コアのPentium 4。

 「昨年半ばからPrescott対応を謳ったマザーが登場していたが、やはり、CPUが登場して正式に対応するマザーが登場してから本格的に市場が動くようになるだろう」(TWOTOP)という声がある一方で「でも、一部のマニアを除いて広く普及するのは、価格がこなれてきてから」(TWOTOP)という慎重な見方が大勢を占めている。

 Prescott関連で、意外とショップの注目を集めているのが「水冷」。「キューブ型や省スペースPCでPrescottを搭載したら、空冷ではもう限界を超えてしまう。取り扱いが容易になって小型化された水冷ユニットが必須になるのでは」(T・ZONE PC DIY SHOP)「キューブ型以外でも水冷クーラーの需要は増えてくると思われる。一部のマニアだけでなく、普通のユーザーでも取り扱える手ごろなパーツになるのでは」(ブレス)

 水冷ユニットとしてはすでにソルダムのAquaGizmoが昨年末に登場しているが、「筐体とマザーボード、そしてクーラーベンダーのコラボレーションで、汎用性の高い水冷クーラーユニットが登場すると面白いと思う」(T・ZONE PC DIY SHOP)という意見もあった。

 さて、ここで話題となっているキューブ型PCについては、各ショップで「今年も盛り上がる」という声が多かった。「個人的にはPrescottよりもキューブ型がまだまだいけると思う。Intel 865搭載タイプは3万円を切る価格で安定しているが、Athlon 64を搭載したキューブ型PCが登場したら面白いだろう」(クレバリー)

 新世代アーキテクチャの投入が予定されているATI、NVIDIAそれぞれのGPUに対しては、各ショップとも慎重な見方が多い。昨年のGeForce FXシリーズ登場当初の混乱を引きずっているショップもあれば、「価格的に安くないと数は出せない」(TWOTOP)と見ているショップもある。

 ビデオカードで注目されているのは、先ほども出てきた「ゲームが牽引するビデオカード需要」。一昨年のFINALFANTASY XI for WindowsがGeForce Ti 4200搭載ビデオカードを一気に売りまくったように、「リネージュIIをやるために、ビデオカードを購入するユーザーが増えるだろう。一画面に登場するキャラクターがこれまでよりも多いので、FF XIよりも負荷は重くなるはず。快適に動作させるなら新しいビデオカードが必要になる」(T・ZONE PC DIY SHOP)

 新しいアーキテクチャといえば、PCI Express対応のマザーボードやビデオカードが今年前半に登場する予定だが、こちらについては「パワーユーサーは興味を持つだろうが、一般的に普及するにはならないだろう」という意見が多かった。

 「1カ月先のことも予想がつかない」といわれるPCパーツビジネスであるが、各ショップとも今年の期待(あるいは希望)として一致していたのが「とにかく新しい製品が次から次へと登場して欲しい」という声。ユーザーにショップへ足を運んでもらうには、常に目新しい商品で飾っておかなければならないという意見は、各ショップで共通していた。どうやら、2004年もパーツショップの店頭は動きの激しい1年になりそうだ。

取材協力

クレバリー

TSUKUMO eX.

ツートップ秋葉原本店

T・ZONE PC DIY SHOP

DOS/V パラダイス

ブレス

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