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» 2004年01月29日 22時55分 公開

カーエレクロトニクス分野に見る“質の変化”

近年の自動車には多くの電子部品が使われ、エレクトロニクス技術が欠かせなくなっている。そのカーエレクトロニクス分野に、ここ数年“質の変化”が見られるという。そのキーワードは“情報化/電動化/知能化/ネットワーク化”だ。

[西坂真人,ITmedia]

 自動車にはエレクトロニクス技術を駆使した多くの電子部品が使われている。以前は、ライトやワイパーといった電装部品が中心だったが、近年では可変カム機構や電子燃料噴射システムといった運転制御や、ABSやエアバッグのような安全に関する機能、カーオーディオやナビゲーションシステムといった利便・快適性をサポートするものなど、さまざまなところでエレクトロニクス技術が欠かせなくなっている。

 1月29日に東京・ビッグサイトで行われたインターネプコンワールドの特別講演で、日産自動車電子技術本部副本部長の浅野正春氏が、進化するカーエレクトロニクスの将来展望やエレクトロニクス業界への期待について語った。

mn_car1.jpg 日産自動車電子技術本部副本部長の浅野正春氏

 電子部品の積極的な採用が進む自動車だが、浅野氏は、ここ数年のカーエレクトロニクス分野には“質の変化”が見られると述べる。

 「“質の変化”を語るキーワードは、『情報化/電動化/知能化/ネットワーク化』の4つ。情報システムとメカトロ技術をミックスしたシステムなどドライバーへの提供情報が増えてきたり、車載機構の多くがモーターを使うようになっていることからも、質の変化の兆しが見え始めている」(浅野氏)

 その一例が、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)。ACCにあらかじめ車間距離をセットしておくことで、オートクルーズ( 設定した車速を自動的に維持する機能)時でもドライバーが意識せずに前方の自動車との車間距離を一定に保つことができるこのシステムは、高級車を中心に搭載が増えている。

mn_car2.jpg 時速100キロのオートクルーズに設定していても、前方に時速80キロの走行車を発見すれば自動的にスピードを落として車間距離を一定に保つ。高速道路などの追突防止に効果を発揮する

 また、センサーで車線を読みとって自動車が車線の中央を常に走行するようにステアリング/アクセル/ブレーキを制御するLKS(レーン・キープ・サポート、直線路車線維持支援装置)などといった、さらに進んだ“視覚機能”も登場し始めている。

 「人間の目の役割を担うこのような“視覚機能”のほかに、DSRC(専用狭域通信)を使ったETCや当社テレマティクス『カーウイングス』などは耳の役割を担う“聴覚機能”といえる。また、音声認識/合成といったHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)技術も今後より高度化していく」(浅野氏)

 このような自動車の「情報化」とともに、HEV(ハイブリッド車)やFCV(燃料電池車)のように走行に電動モーターを使うといった自動車「電動化」も増えている。また、“走る”だけでなく“止まる/曲がる”といったシステムへの電動化の適用も始まっている。

 「電動化での注目は、メカリンクや油圧を置き換える“By-Wire技術”。電子制御スロットル(Drive-By-wire)やモーターの回転力で舵角を制御(Steer-By-wire)したり、電磁力でブレーキパッドを制御(Brake-By-wire)するなどがある。例えば、ステアリング機構に応用すれば、ハンドルはゲームで使うジョイスティックのようなものでもよくなる。また、従来のステアリングのシャフトは、事故のときなどに凶器になる可能性がある。安全面からもBy-Wire技術は注目されている」(浅野氏)

 By-Wire技術は従来のメカリンクや油圧配管を細い電線に置き換えられるため、機器のレイアウト自由度が増すといったメリットもあるが、非常に高い安全性が求められる重要保安部品だけに信頼面で課題が残るという。

 「だが、航空機などはすでに油圧系から電気系に変わっている。そのかわり航空機には、例えば、1つの制御機構に何重もの代替システムを搭載して制御CPUは異なる数社のものを使うといった安全策が施されている。大きさや重さが限られた自動車でこのようなシステムを搭載するのも難しい」(浅野氏)

 さらに「情報化」と「電動化」を融合して予知機能の付加や運動性能の高度化が進むといった「知能化」という流れや、車載機器がネットワークでつながれて協調動作する「ネットワーク化」も、今後さらに加速すると浅野氏は指摘する。

mn_car3.jpg

 「このようなカーエレクトロニクスの“質の変化”には、インバータの小型化・高温動作といったパワーエレクトロニクスや42V化、車両周囲検出技術の高度化、モバイル通信や車載LANなど通信技術の発展などが不可欠で、それを吸収できる新しいアーキテクチャーも必要となる。30年前までは電子部品のカスタム化をエレクトロニクスメーカーに提案しても、生産数量の低さから相手にしてもらえなかった。だが今では、自動車そのものが電子部品なしでは成り立たなくなってきた。われわれも、エレクトロニクスメーカーとともに、技術の発展に貢献していきたい」(浅野氏)

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