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話題の「空気入れのいらない自転車」に乗ってみました(2/2 ページ)

» 2004年02月04日 16時53分 公開
[松尾公也,ITmedia]
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 私は今、自転車通勤の人だ。自宅(練馬区)から会社(港区赤坂)まで、往復約39キロメートルを走る。いつもは「Bianchi BACKSTREET 2003モデル」に乗っているのだが、この往復ルートを、サブナードスポーツAHで走ってみた。

 BACKSTREETと比べると、さすがに重さはあるものの、20キロ近いと思われる普通のママチャリよりは軽い、約17キロだ。これなら取り回しにはさほど苦労しない。ホームセンターなどで売られている、いわゆる“なんちゃってMTB”よりははるかに出来がいい感じだ。会社に届けられたサブナードスポーツAHで自宅まで乗っていくことにした。「帰宅コース」でいきなりスタートする。

 コースは、急勾配で知られる赤坂の薬研坂から青山一丁目を四谷四丁目に向かい、靖国通りに抜けた後、歌舞伎町を通って青梅街道に入る。ここで成子坂下、中野坂上と、2つの急坂を超え、あとは中野、高円寺、阿佐ケ谷、荻窪と飛ばし、西荻窪に近くなったあたりで北上し、自宅のある石神井公園まで至る。東京は平地のようでいて、けっこうな坂があるのを実感しながら自宅と会社を往復しているわけだ。

 自転車通勤としては、わりと距離のあるほうだ。歩道を走るのは、青山一丁目→会社間と新宿大ガードから成子坂上までの、一部のみ。無理をしない程度に走って片道1時間10分(±10分)といったところ。サブナードスポーツAHは、重さが+5キロ、ライトはダイナモ(発電方式)なので、何パーセントかの負担はかかる。変速もBACKSTREETの24段に対し、7段。というスペック上の違いがあるのだが、数字上はほとんど同じ時間で家に着いてしまったのだ。これにはちょっとびっくり。

 もちろん、ハンドリングの反応とかには違いがあるし、車重があるからレスポンスはちょっと遅かったりするが、この程度の距離の通勤には十分に使えるという印象を持った。

 夜中、後方に気をつけながら車道を走った(BACKSTREETはハンドルの先端部分にミラーをつけている)ので、細かいところには気づかなかったが、翌朝、ダイナモを外して会社に向かうと、普通の自転車との違いに気づいた。車輪が回転するたびに、「スー、スー」とかすかに音がするのだ。よくよく気をつけていないと聞こえない程度(ダイナモを動かしていると、聞こえてこない)。ひょっとして、これがロータリーポンプの音か? そうに違いないと思いつつ、きわめてスムーズに会社に到着。けっこう急で長い坂があるのだが、それも難なくクリアできた。

 本来ならば、1カ月は続けて乗ってみて、空気抜けがないことを確認したかったのだが、貸し出し期間が短かったため、実機インプレッションは、会社までの往復39キロで終了となった。

結論

 ホームセンターで売られているような、なんちゃってMTBやママチャリよりは、はるかに出来がいい。通勤・通学に自転車をと考えている人は、リストの中に入れてもいいかも、と思った。

 ブリヂストンサイクルには、タイヤ空気圧チェッカ「空気ミハル君」というテクノロジーがある。空気圧が不足すると赤サインが現れ、空気の充填が必要なことを知らせ、赤サインが消えるまで空気を充填すればOK、というもの。他のモデルには、この「空気ミハル君」が搭載されているものが多い。おそらく、これから発売される「空気ミハル君」搭載モデルの多くに、エアハブが組み込まれることになるのだろう。

 だが、このエアハブには、全モデルに搭載できない理由がある。それは、軽量化だ。

 サブナードスポーツAHの前年モデルのスペックを見てみると、変速が6段になっており、エアハブがないかわりに、車重が16.2キロと、700グラムほど軽い。おそらくこれが普通のハブとエアハブとの重量差なのだろう。スピードを出すためにできるだけ軽量化したい、中級モデル以上では、この重さは大きい。また、推測だが、軽快車の空気圧は3気圧だが、ロード用のチューブでは、6気圧以上に対応しなければならず、それがコストと重量に跳ね返る可能性もある。

 でも、これが十分に軽量化されれば、上級モデルにも搭載したいという人はいるのだと思う。適切な空気圧に保つには、圧力メーターのついたポンプを備えている必要があるし、定期的に空気入れを使わなければならない。マニュアルでメンテする楽しさというのは、確かにあるけれど、寒い日や雨の日は遠慮したくなるのも事実だ。

 一つ気になるのは、エアハブ仕様車のタイヤは、ユーザーがマニュアルで空気を入れられないということだ。たとえば、パンクした場合などは、タイヤを修理して、空気を入れる必要がある。空気入れの口は、簡単には外れないようになっているため、この場合は、自転車販売店まで持っていかなければならない。

 まあ、「ベコベコになるまで空気を入れなかったために起きたパンク」が解消すれば、その必要もなくなるかもしれない。

車輪の回転を再利用する、その他の技術

 せっかく車輪が回ってるんだから、利用したいね、という人は多いらしく、エアハブ以外にも、いろいろな「回転利用」テクノロジーが出ている。

  • ダイナモライト:昔からある、タイヤやタイヤのリムに軸を押し付けて発電するタイプ。光量はあるが、負荷も大きい。
  • ハブダイナモ:エアハブと同じく、ハブに新機能を組み込んだもの。ダイナモの欠点である、効率の悪さと騒音を解消し、軽いペダリングで、ライトを点灯させることができる。これでノートPCの充電ができるとスゴイのだが……
  • マグネット発電式テールライト:スポークに装着したマグネットが回転するに従って、テールライトが点滅する。蓄電しておき、停止時にも発光できるタイプもある
  • マジ軽ライト:基本的には、上のテールライトと同じ方式。マグネットの部分が大きく、LED使用で前照灯として利用可能にした
  • サイクルメーター:マグネット発電式テールライトと同様、スポークにはさんだマグネットで車輪の回転を検出し、スピードや距離、平均時速などを表示する。とても便利

 ハブを使っているため、ハブダイナモとエアハブは同時に使うことはできないが、両方の機能を備えた「ハブ」があってもいいかも。「エアハブ」は、電気系を使わない、新たなメカの登場ということで、新分野を開拓したと言えるだろう。この世界、まだまだ奥が深いなあ。

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