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Transmeta、トランジスタの低消費電力技術「LongRun2」をNECに供与

» 2004年03月25日 21時30分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 米Transmetaは2月25日、次世代の半導体に対応した省電力技術「LongRun2」のライセンスを、NECエレクトロニクスに供与する契約を結んだ。NECエレは、90ナノメートルプロセスで製造する半導体製品にLongRun2と同社の省電力技術と組み合わせて搭載、2005年から製品化する予定だ。同社のコア技術といえるLongRun2のライセンス供与はこれが初となる。

photo 記者発表会場でライセンス契約書にサインしたNECエレクトロニクスの橋本浩一副社長(左)とTransmetaのマシュー・ペリー社長

 これまでNECエレが取り組んできた省電力化技術にLongRun2を加えることで省電力技術を強化、「消費電力は従来の約6分の1になる」(NECエレ・橋本浩一副社長)。

 NECエレは、ライセンス料に加え、利用に応じたロイヤルティーをTransmetaに支払う。またNECエレは2003年12月のTransmetaの公募増資に参加、Transmetaの株式を取得(全株式の2%以下)しており「将来にわたって関係を強化する」(NECエレ・橋本副社長)。

 LongRun2は、ソフトウェア技術や半導体の構造、ハードウェア回路など複数の技術から成る。「Crusoe」に搭載した「LongRun」技術(用語辞典参照)では、プロセッサの動作周波数と電圧を制御して、プロセッサ/半導体回路が動作しているときの「アクティブ電力」を抑えた。これに対してLongRun2では、半導体回路のトランジスタの動作に関わる「しきい値電圧」(Vt)を制御することで、トランジスタが動作していないときの「リーク電流」を減らして消費電力を抑えるという。

 リーク電流とは、トランジスタが待機状態にあるときに流れる電流で、半導体プロセスが微細化すればするほど流れやすくなる性質がある。リーク電流を抑えるには、一般的にはしきい値電圧を高くすればよいのだが、しきい値電圧を高くすると、トランジスタの動作速度(スイッチング速度)が遅くなってしまう。

 180ナノプロセス世代までは、アクティブ電力を抑えることが総消費電力の低下につながったが、プロセスが微細化するにつれ、トランジスタの待機時に流れるリーク電流が増大。90ナノ世代以降の半導体回路では、アクティブ電力を動的に減らしても、リーク電流によって消費される電力が大きくなるため、リーク電流を抑えることが半導体製造の課題だった。LongRun2では、トランジスタの動作時/待機時のしきい値電圧を動的に制御して、トランジスタの動作速度を落とさずにリーク電流を減らせるという。

 また、しきい値電圧は、トランジスタが動作する時の温度によっても変化するが、LongRunではこうした変化にも対応できるため、半導体設計を容易にする。さらに、半導体製造時のトランジスタのしきい値電圧のばらつきの許容範囲が広くなるため歩留まりも向上するという。LongRun技術を採用したことによる回路の増加は少なくて済むので、「ライセンス料を足しても、従来の製品よりも低価格になると考えている」(橋本副社長)。

 NECエレがLongRun2を製品に搭載するのは2005年から。90ナノプロセス世代のモバイル機器にまず投入する。このほか基幹通信デバイス、サーバ、ワークステーション、デジタル家電など幅広い製品に順次搭載をすすめ、2006年度以降には65ナノプロセス世代にも対応。以後、45ナノプロセス世代の半導体にも採用予定だ。

photo 左からTransmetaのデビッド・ディッツェルCTO、NECエレの橋本副社長、Transmetaのマシュー・ペリー社長、NECエレの山口純史執行役員

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