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自分の手でネットを“進化”させたい――「はてな」社長の夢(1/2 ページ)

» 2004年04月19日 14時49分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「インターネットがあれば何もかもが便利になって、皆がハッピーになれる」――“ネット万能論”がまかり通っていたネットバブル末期。ドットコム企業の株価は上がっても、一般の人の生活は一向に変わらない。そんな状態に業を煮やし、「自分なら世の中を本当に便利にするネットサービスが作れる」と起業を決意した当時25歳の青年がいた。「はてなダイアリー」や「人力検索サイト はてな」などで知られるはてなの近藤淳也社長だ。当時、自転車レースを主に撮影する、京都在住のプロカメラマンだった。

photo 近藤淳也社長

 起業を決めた近藤社長はカメラマンの仕事を捨て、妻と友人3人で2001年7月、京都で有限会社はてな(現在は株式会社)を設立。初心者でもネットで手軽に目的のサイトが探せる「人力検索サイト はてな」をオープンした。

photo 人力検索サイト はてな

 人力検索サイトとは、知りたいWebサイトを文章で質問すると、別のユーザーが教えてくれるというサービス。ネットを始めたばかりの父親が、検索に苦労する姿を見てひらめいた。

 「ネットで情報を探すには“語句間にスペースを入れればアンド検索”など特殊な検索ルールを覚えねばならず、初心者には難しい。一方で、人間にはもともと“文章で質問する”という技術があるんだから、それを生かして検索できるサービスがあれば便利だろうと考えた」(近藤社長)。

 しかし当初はユーザー数が伸びず苦戦した。原因は、質問を有料にしたことにあったと近藤社長は分析する。質問するには1回60ポイント(1ポイント1円)が必要。満足のいく回答を寄せてくれた回答者には、質問者が任意のポイントを支払う仕組みになっている。

 「“はてな”という聞いたこともないサイトがあって、有料で何か質問できると突然言われても信頼できないし、正直、僕でも使わないだろうと思った」と近藤社長は当時を振り返る。ブランド力のないサイトに、抵抗なくお金を払ってくれるユーザーはなかなかいなかった。

 かといって、無料化はしなかった。「質問が無料だと、質問者の立場が回答者よりも低くなってしまう。無料の掲示板やQ&Aサービスでは、初心者が簡単なことを質問をすると『そんな当たり前のことは聞くな』とか『既出だよ、ちゃんと調べてから質問しろよ』などと回答者に冷たくあしらわれることが多い」(近藤社長)。有料にすることで質問者の立場を高め、検索が苦手な初心者でも優しく迎えてもらえるサービスをめざした。

起死回生の策としての「アンテナ」と「ダイアリー」

 人力検索サイトのユーザー数を増やすため、無料化の代わりにとった策は、2002年5月に始めた「はてなアンテナ」と2003年3月オープンの「はてなダイアリー」。「便利なサービスをもう一つ提供するから、人力検索と一緒に使って、ネットの便利さを体感してほしいという思いだった」(近藤社長)。

photo はてなアンテナ

 はてなアンテナは、指定したWebサイトを自動巡回し、更新情報を表示してくれる無料のアンテナサービス(オプションは有料)。近藤社長が使っていたフリーのアンテナソフトからヒントを得た。4月16日現在、4万8700人に利用されている。

photo はてなダイアリー

 はてなダイアリーは、Webブラウザから簡単に更新できる無料日記ツール(同)。「同じ興味を持った人と自然にコミュニケーションできるシステムがあれば楽しいだろう」と考えた近藤社長は、同じキーワードを使っている日記同士がリンクでつながる仕組みを取り入れた。この仕組みが人気を呼び、はてなダイアリーは4月16日現在、3万7400人のユーザーを獲得している。

 ブログ(Blog)サイトが流行し始めた最近、「はてなダイアリーは日本最大のブログサイト」「国内のブログサイトの先駆け」などと言われこともある。しかし近藤社長はダイアリーを作った当初、ブログは全く意識していなかったという。

 「国内でブログが流行しだしたので、宣伝効果を狙って“はてなダイアリーもブログです”と言ってはいるが、もともとブログとは関係ない、オリジナルのサービスとして始めた。ブログは一過性のブームだから、1、2数年後には沈静化し、いくつかのブログポータルがつぶれるような事態になるだろう。その時にも何事もなかったかのように涼しい顔をしてダイアリーを続けていたい」(近藤社長)。

 はてなが目指すのは、初心者でもとっつきやすく、ずっと使い続けてもらえるサービス作り。ブームを利用してユーザー数を増やすことはあっても、ブームだからといって人と同じことはしない。「他の誰かができることをしても意味がないから」(近藤社長)

 2004年4月、はてなは京都から東京に移転した。「本当は、京都でずっと続けてみたかった。でも東京で色々な人に出会い、刺激を受けることも必要だと思った」(近藤社長)。

経費はかかっても、ユーザーは多ければ多いほどいい

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