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Googleが構築する「Web規模のスーパーコンピュータ」

» 2004年05月10日 11時53分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Googleが最近発表したWebメールサービス「Gmail」は、1Gバイト分の電子メール容量を無料提供するが、それと引き換えにユーザーのメッセージをスキャンして関連する広告を挿入する。一部ではこれに関してプライバシーの侵害を懸念する声が上がっている(4月14日の記事参照)。その一方でInfoWorld Test Centerの寄稿者フィル・ウィンドリー氏らは、これは根本の問題から注意をそらすものだと考えている。「私のプライバシーを真に尊重してくれるのなら、私とGoogleの関係に構わないでくれ――これはプライベートなことなのだから」と同氏は自身のブログに記している。

 別のブログでは、Googleのさらなる野望について辛辣な分析がなされている。Topix.netのCEO(最高経営責任者)、リッチ・スクレンタ氏は、「The Secret Source of Google's Power(Googleパワーの裏側)」と題したエッセーを掲載、その中でGoogleのサーバファームはカスタマイズされたクラスタOSとペタバイト級のフォールトトレラントファイルシステムで構成されており、スーパーコンピュータと化していると主張している。「競合他社は、Googleが導入している個々のアプリケーションに目を向けているが、GoogleはWeb規模のプログラミングに向けた巨大な汎用コンピューティングプラットフォームを構築している」と同氏は記している。

 「分散化」が流行語となり、「ルーズ・カップリング(緩い結びつき)」こそグローバル規模の戦略を達成する唯一の手段とうたわれるこの時代に、スクレンタ氏はエッセーの中で核心を突き、「正しい形で中央集中化され、緊密に結び付いたアーキテクチャに実際的な限界はない」と示唆している。これに触発されたティム・オライリー氏は、自身のブログの中で「インターネットアプリケーションが(グローバル規模に)真に拡大した暁には、ネットワークそのものが消滅し、地球規模の仮想コンピュータが出来上がるだろう」と記している。

 「中央集中化と分散化」はコンピューティングにおける「陰と陽」にあたる。Microsoftを見てみよう。PCに専心する同社は、Googleのスーパーコンピュータの概念と根本的に対立するように見える。MicrosoftのITオペレーションは、x86系PC上でWindowsソフトだけを動作させることを正当な誇りとしている。しかし最近同社を訪問して、同社の世界規模のビジネスオペレーションがSAP R/3のシングルインスタンスで処理されていることを知って感心した。

 さて、それでは「コンピュータがネットワークである」と言うべきか、それとも「ネットワークこそがコンピュータ」なのか? これらはいずれも真である。スーパーコンピュータは――グローバル規模でも、企業レベルで運用されている場合でも――複数のサービスをつなぐ内部ネットワークを構築する。さらにスーパーコンピュータ同士が連係して、無数のクライアントと交信し、より壮大な規模で演算を実行する。正しいアーキテクチャやトポロジーが1つだけということはない。われわれはいずれ、企業内ならびに企業間においてこうしたすべてのパターンを統合するシステムを導入することになる。肝心なのは、オライリー氏が指摘するように、演算処理がどこであるいはどのように実行されるかではなく、むしろ「誰がそのデータを所有しているか?」である。

 「そのデータとは厳密に何を指すのか?」という点も疑問になるかもしれない。Gmailを例に挙げると、それは「大量の個人メールボックスのコンテンツ」をはるかに超えるものだ。これらメールボックス全体は、この種のアプリケーションからマイニングできる「関係」に関するデータを含んでいる。同じように、Webサービスの仲介者は、SOAPエンドポイント間の関係を見て、トランザクションの文脈を推断することが可能になる。こうした特権的な立場から、大きな権力が行使できるし、実際に行使されるだろう。

 ネットワーク理論家は、すべてのネットワークは必然的にハブを形成すると確信している。企業の設計者が今日織り上げている「サービス」という織物は、平等主義的に見えるかもしれないが、このルールから免れられない。Googleのスーパーコンピュータ(またはスーパーノード)は、同社を競合他社よりも優位に立たせている。あなたのスーパーコンピュータ――あなたが「スーパーコンピュータ」をどう定義しようとも――もそうなるだろう。

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