「会見でも開かないと、球団買収の正式オファーすらさせてもらえない」――ライブドアの堀江貴文社長は6月30日、都内で開いた会見で大阪近鉄バファローズ買収提案の経緯を説明した。同社は近畿日本鉄道に対して、2月から球団の買収提案を行ってきたが、まともに取り合ってもらえなかったという。堀江社長は「球団運営が十分可能な会社の買収提案を無視するのは、新規参入の阻害だ」と、プロ野球界の閉鎖性を批判した。
堀江社長によると、ライブドアは今年2月下旬、ある証券会社から「バファローズを買収しないか」との提案を受けたという。同証券会社を通じて近鉄に買収を申し入れたが、「相手にされなかった」(堀江社長)。今シーズンが終わってから改めて交渉する予定だったとしている。
ところが先月、バファローズとオリックス・ブルーウェーブとの合併問題が浮上。「合併してチームが減るとプロ野球界が衰退し、日本社会の損失になる」(堀江社長)として、「選手会にも関係するある人を通じて」(ライブドアの宮内亮治CFO)買収意向を表明することにした。意向表明書は今日中にも提出するとしている。
一方近鉄は同日、ライブドアの買収意向表明に関して「明確にお断りしている。今後ともオリックスと合併する方向で手続きを進める」とのコメントを発表した。
「買収は以前から検討していたこと。一部報道機関にスクープされたため突然の発表となり、売名行為ではとの憶測も出ているが、売名なら広告宣伝費を使って堂々とやる。球団買収提案で売名しようなどとは全く思っていない」(堀江社長)。
ライブドアには球団経営に十分な体力があると堀江社長は強調する。同社の昨年9月期の売上高は108億円、営業利益は14億円。「今期は売り上げを250億円に、利益を50億円に伸ばす。球団を買ったとしても、5−10年程度で手放すような弱い会社ではない」(堀江社長)。
買収金額は「2月の交渉時には10−30億円を提示した」(宮内CFO)。資金は500億円以上ある現預金から出すとしており、「オリックスよりはいい条件を出せる自信がある」(堀江社長)。
ただ、買収金額とは別にかかるプロ野球機構への加盟料30億円を支払うかどうかについては「交渉したい。横浜ベイスターズも払っていないと聞いている」(堀江社長)と言葉を濁した。
「球団を買いたい会社は、私が知っている限り2−3社はある。しかし球団経営に“ふさわしくない”会社に球団は売らないという球界の強い力が働いており、よく分からない理由でオファーを断られるのが現状。そんな球界の体質に一石を投じたいと思っている。近鉄だけでなく、球界全体を相手に戦う覚悟はできている。力が続く限りがんばる」(堀江社長)。
球団を買収できた場合、本拠地は大阪に残し、「大阪」「バファローズ」の名前も引き継ぐ方針。同社が培ってきたベンチャー経営のノウハウを取り入れ、年間40億円とされる赤字を抱えた球団経営の早期黒字化を目指す。
経営のスリム化・効率化のほか、球団の株式を発行し、選手にはストックオプションを与えるなどといったIT企業ならではのテコ入れ策を考えている。「黒字の他球団や、Jリーグ、米大リーグの黒字チームの経営手法も参考にしたい」(堀江社長)。
本業のインターネットサービスとの関連については、野球コンテンツを充実させられるメリットなどを挙げた。
また会見では、昨年提携したイーバンク銀行との関係が泥沼化したことを引き合いに、買収後の経営を危ぶむ声も出たが、「イーバンクは15%以下の出資から始まった提携でしかない。買収は100%経営権を握るということ。経営陣との対立などもなく、問題は起きないだろう」(堀江社長)。
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