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コラム
» 2004年07月06日 15時41分 UPDATE

「Project Green」こそ、MSの正しきLinux対抗策

MicrosoftはLinuxに勝ちたいのなら、OS機能で勝負するよりも、Linuxの弱点である高度な統合型アプリを提供するべきだ。縮小されてしまったProject Greenは、まさにそれを実現するものなのだが。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 妙な話だ。多くのコンピュータおたくやシステム管理者たちは何年も前から、誰かが現れてMicrosoftの独占状態を打ち崩してくれることを期待してきた。実際、私もそのうちの1人だった。Windowsにとって最も健全な状態は、競争の存在だからだ。だが、それが現実になろうとしている今、妙なことに私はMicrosoftの対応が心配でしかたがない。MicrosoftはLinuxとの競争で誤った戦い方をしようとしている。

 まず、同社はまるでBeowulf(Linuxスーパーコンピュータ)のMicrosoftバージョンとでも呼べるような、高性能コンピューティング(HPC)市場向けの製品を発表した(6月24日の記事参照)。この「Windows Server 2003 HPC Edition」は、複数の小規模サーバやCPUにわたって高性能コンピューティングを提供するためのもの。どこかで聞いたような話ではないだろうか? Microsoftが常々アンチLinuxの理屈を言い連ねていることからすれば、この突然とも言える発表の真意や、なぜ今この時期になのかといった点に疑問を感じて当然だろう。

 さらに悪いのは、Microsoftは自社のアプリケーション事業を犠牲にしてまで、この製品の開発に取り組んでいるように見えることだ。Microsoftは以前、「Project Green」について発表した。これは、同社がGreat PlainsやNavisionから買収した顧客関係管理(CRM)、人事(HR)、財務などのアプリケーションを1つにまとめ、その機能を(おそらく、すべての既存顧客とともに)全く新しいプロプライエタリな統一コードベースに移行するための取り組みだ。

 だがMicrosoftは、政府部門で突如Linuxの支持が高まりつつあることに、過敏に反応しているようだ。同社は先ごろ、Project Greenの開発担当者200人のうち約130人を「主力製品ライン」の担当に配置換えした(6月25日の記事参照)。そしてProject Greenの最初の成果は当初2004年末までに提供される予定になっていたが、今ではその予定は2008年以降に延期されている。Officeの開発要員が限界に達し、Microsoftの新製品発表の大半がOSに関連していることからも、これらの開発者の配置換え後の担当製品は容易に推測できる。

 だが、なぜなのだろう? OS市場におけるMicrosoftの独占状態を打ち崩すための最大の障害は実際のところ、OS技術自体の問題ではないということは、少し考えればすぐに分かることだ。もしそうだとすれば、既にこの4年間でLinuxがとうにMicrosoftを退散させていただろう。機能だけを比べれば、WindowsとLinuxにはいくつかの違いはあるが、多くのデスクトップユーザーにとっては、どちらのOSも一般的なユーザーが必要とする基本的なツールはすべて提供している。ただし、1つの例外を除いてだ。LinuxではOfficeを実行できない。これまでのところ、MicrosoftにとってLinuxが軍事作戦上のマイナーな脅威にすぎなかったのはこのためだ。

 だがCodeWeaversがWINEプロジェクトの実装として、Linux上でOfficeを動作できるCrossOver Officeを提供したことで、こうした認識に急速に変化が起き始めた。Linuxデスクトップでは依然としてすべてのWindowsアプリケーションを実行できるわけではないものの、重要なアプリケーション、すなわちお馴染みのMicrosoft Officeは実行できるようになった。そして、OpenOfficeがある。OpenOfficeはコーディングは堅牢だが、直観的なユーザーインタフェースや洗練の度合い、特定の機能、特にExcelに関しては、依然としてOfficeに遅れを取っている。また米国企業の従業員の大半は、新たにプロダクティビティスイートの使い方を学び直したくはないだろう。そして大半の経営者も、そうしたトレーニングのためのコストは支払いたくないはずだ。これは、長期的に見た場合、OpenOfficeが超えなければならないハードルだ。

 だがそれより、Linuxコミュニティにとってさし当たり最善の策は、LinuxデスクトップにおけるOfficeの互換性を確実にすることだ。そうなれば、ユーザーはLinuxデスクトップを安全かつファジーな感覚で選択して、好みのプロダクティビティスイートを実行できる。だがそれは一方で、Microsoftにとって最強の武器はBeowulfのような高性能製品ではなく、まさにProject Greenで目指していたような統合された高度な機能性であることを意味している。つまり、標準的なプロダクティビティスイートでは得られないような高度な要素がすべて、新しいOSプラットフォームに整然と統合された状態だ。

 現実を直視しよう。LinuxがWindowsよりも優れた技術であろうとなかろうと、MicrosoftにはLinuxコミュニティと比べて大きな利点がある。企業ユーザーの要望に関する10年以上の経験だ。つまり、MicrosoftにはビジネスプロセスやUI設計といった具体的な経験のほか、企業やISVやコンサルタントからの多量の情報がある。企業顧客にとって、OSは単にプラットフォームであり、購入するのは各種のアプリケーションツールだ。OpenOfficeがどうであろうと、Linuxは依然としてその分野では遅れている。Microsoftも、OSの機能で直接対決を目指すのではなく、そうしたLinuxの弱点を利用すべきだ。OSの機能をめぐる戦いでは、既に多くがMicrosoftの負けを認めているのだから。

 ああ、なんだか、全米ホッケーチームを負かすこつをロシアに教えているような気分になってきた。

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