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HP-UXのx86対応、オープンソース化はない――渦中のHPサーバ責任者が語る

» 2004年08月18日 17時31分 公開
[IDG Japan]
IDG

 アン・リバモア氏にとって、今はとうてい楽しい時期とは言えない。Hewlett-Packard(HP)が先週、アナリスト予測を下回る業績を報告した際、その責はリバモア氏が管理する部門の1つ、エンタープライズサーバ&ストレージ部門の肩にまっすぐ降りかかってきた。同部門内の「許容できない」問題により、売上高が4億ドル、営業利益が2億7500万ドル減少したと同社会長兼CEO(最高経営責任者)のカーリー・フィオリーナ氏は指摘し、そのわずか1時間後に同部門の幹部3人の解雇を発表した(8月13日の記事参照)

 HPは、この収益減の原因となった業務上の問題はもう解決したと主張するが、リバモア氏の前途にはまだ手強い課題が待ちかまえている。同氏はHPのテクノロジーソリューションズ部門の執行副社長として、同社のエンタープライズストレージ、システム、サービス、ソフト製品を担当している。同氏は多種多様なPA-RISC、AlphaServer、HP 3000の顧客を、Itanium搭載のIntegrityサーバに移行させ、同時にかつてHPの誇りだった――だが最近は苦戦している――ストレージ事業を立て直すという難題をこなさなくてはならない。

 22年前からHPに勤めるリバモア氏は、CEOの最有力候補と目されていたが、結局はフィオリーナ氏がその地位を獲得することとなった。同氏は今週シカゴで開催のHP Worldカンファレンスで、HPの状況について語った。

――昨四半期にエンタープライズコンピューティング部門が損失を出した理由は?

リバモア氏 同四半期は幾つかの主要分野の運営が、しかるべきレベルに達していませんでした。米国では、注文管理・製造に関して新しいシステムと業務プロセスに移行していたところでした。この移行により、計画していたよりも業務の中断が長引いたのです。

 その結果、サーバ、特にProLiantサーバの出荷台数が計画を下回ってしまいました。

 欧州では、チャネル管理プロセスに関する問題がありました。欧州のチームはクレーム処理の一部とチャネルへの支払い処理を一元化していました。これは、当社がうまくやれなかったもう1つの分野です。幾つか例を挙げると、EMEA(欧州、中東、アフリカ)では当初予定していた以上の値引きをしていました。

 幸いなのは――悪材料かもしれませんが――これらがすべて社内の執行の問題であり、自分で対処できるという点です。当社のビジネス製品における根本的な弱点ではないのです。

――ストレージ部門はどうですか?

リバモア氏 ストレージ事業に関しては、4月に製品ラインを強力に刷新する一連の新製品を投入しました。また9月に新たな大型発表を予定しています。われわれは自身の製品に満足しています。今はストレージ売上を押し上げるために、営業の専門家を追加したいと思っています。製品の販売強化で協力している付加価値再販業者も幾つかあります。

――HPはAlphaプロセッサを廃止し、RA-RISCからItaniumに移行しています。収益が減少したのは、顧客がItaniumに移行したがっていないことの表れかもしれないとは思いませんか?

リバモア氏 いいえ、Itaniumに関して言うと、四半期ごとに期待通りの伸びを見せています。昨四半期、当社のUNIXサーバの成長率は8%でした。前年同期と比べると順調な伸びです。

――UNIXサーバが8%伸びたというのは、Itaniumサーバのことを言っているのですか?

リバモア氏 UNIXサーバ全体の伸びです。

――ではItaniumはどうなのですか?

リバモア氏 PA-RISCとItaniumの伸び率の比較について、具体的な内訳は持ってきませんでした。ですがItaniumの観点から見て好ましく思うことがあります。ISV(独立系ソフトベンダーのアプリケーション対応や移植が順調だということです。当社のISVパートナーはいずれも、Itaniumへの移行は当社の計画よりも簡単だと考えています。

――昨四半期、Itaniumサーバの売上は予測に達しましたか?

リバモア氏 ええ。Itaniumサーバの売上も、UNIXサーバ全体の伸び率も予測に達しました。この製品ラインは好調だったのです。これは当社にとって重要です。UNIXは、市場全体の成長率は鈍っていますが、ミッションクリティカルな用途に使われるからです。こうした用途では、当社のUNIX環境、それから多くの場合はストレージを使って多数のサービスを販売する傾向があります。ですからUNIXはHPの重要なオペレーティング環境なのです。

――IBMはPowerアーキテクチャ、Sun MicrosystemsはUltraSPARCを堅持しています。 こうした状況、そして顧客からのフィードバックの中に、HPのItaniumオンリーの戦略に疑問を抱かせるような要素はありますか?

リバモア氏 ありませんね。それにItaniumオンリーの戦略ではありません。顧客の視点から見て、当社は非常にシンプルなアーキテクチャのセットを有しています。当社にはItaniumとx86があります。コンピューティングの点から見た場合、当社の強みの多くは、両方を提供しているというところにあります。当社はItaniumマシンでLinuxまたはWindows、UNIXを提供できます。x86マシンではLinuxとWindowsを提供できます。

――Intelがx86に64ビット拡張機能を取り入れたことは、HPのx86戦略に影響を与えましたか? 例えば、こうした64ビットシステムが出回っていることで、HP-UXをx86プラットフォームに移植しようと思いますか?

リバモア氏 いえ、その必要があるとは思っていません。当社はx86アーキテクチャで存在感と認知度を獲得しているため、(64ビット対応x86は)低価格で市場に投入できる素晴らしい製品がまた1つ増えただけのことです。

――x86対応Solarisを推進するSunの取り組みをどう思いますか?

リバモア氏 製品投入に関して言うと、Sunはゲームに参加してくるのがかなり遅いと思います。顧客は幹部の長期的展望に目を向けており、幹部が戦略や論調を変えたときにそれを受け入れるとは限りません。Sunはかなり遅くまで待ってからこの戦略に打って出ました。

――HP 3000のMulti-Programming Executive(MPE)OSのオープンソース化を目指す動きが以前からありますが、それに対する意見は?

リバモア氏 この件については、いかなる姿勢も取っていませんし、何も決定していません。当社は今なお、顧客の移行を支援するために積極的に協力しており、顧客は当社の2006年という目標に向けて取り組んでいます。少なくともこれまでのところ、当社はメカニズム、アプローチ、プログラムなどあらゆる種類のものを顧客に対応させており、そのことに満足しています。

――どうしてオープンソース化しないのですか?

リバモア氏 サポートを提供できるほどの能力や知識のある広いコミュニティーがないのです。それに、パーツの入手や修理が可能なライフタイム購入に関して、もっと基本的な問題が幾つかあります。(コミュニティーは)多数の顧客がMPEでミッションクリティカルな環境を走らせているという事実を論じることができなくてはならないのです。この種の環境にサービスとサポートを提供できるという自信を持てなくてはなりません。

――SunがSolarisのオープンソース化を約束したように、HP-UXをオープンソース化する考えはありますか?

リバモア氏 それは当社の有している選択肢でも、優先事項でもありません。その根本的な理由は、ミッションクリティカルな分野でHP-UXを運用している顧客の満足度が極めて高いからです。当社は同OSに関して優れたサービス・サポートの手腕を持っています。HP-UXの性質と対応アプリケーションから考えると、(オープンソース化する)納得のいくビジネス上の理由はありません。

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