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Winny事件初公判、開発者は無罪を主張裁かれるP2P

» 2004年09月01日 12時03分 公開
[ITmedia]

 P2Pファイル共有ソフト「Winny」をめぐる一連の事件で、著作権法違反のほう助罪で起訴されたWinny開発者の東京大学助手の初公判が9月1日、京都地裁で開かれた。助手は「無罪を勝ち取るまで戦います」と述べ、起訴事実を全面的に否認した。

 公判の冒頭から起訴事実などをめぐって検察側と弁護側が激しい論戦を繰り広げ、弁護側も冒頭陳述を行う異例の展開となった。

 開発者は罪状認否で「Winnyを開発して公開したことは間違いないが、技術的な見地から行ったのであり、著作権侵害の意図はなかった。実際に著作権を侵害して逮捕され、起訴された被告との面識はなく、被告が何をやったかも知らない。Winnyの開発は日本のためにやったのであって、社会に迷惑をかけるためにやったのではない。ソフト開発そのものが著作権法違反のほう助として認められるという前例が認められると、ソフト開発者を萎縮させ、社会に与える影響は大きい」として無罪を主張した。

 弁護側は「開発者は著作権法を侵害した実行犯と連絡を取ったことはなく、あくまでほう助にあたるのなら、どの点がほう助にあたるのか検察は明らかにすべきだ。公訴事実に罪となる事実はない。公訴事実からは、Winnyの開発・改良を違法とするかのように読み取れるが、これを違法とする根拠は存在せず、罪刑法定主義を逸脱している」として検察側の釈明と公訴棄却を求めた。

 検察側は「釈明の必要はない」と一貫して突っぱねた。裁判長も審理の続行を宣言した。

 午前中は検察側の冒頭陳述で終了。午後、弁護側が冒頭陳述を行う。詳報は追って掲載する。

 起訴状や冒頭陳述などによると、助手はWinnyを2002年5月からWebサイトで無料配布。群馬県高崎市の男らが昨年9月、同ソフトを使って映画などを無断で送信できる状態にし、著作権法違反(公衆送信権の侵害)を手助けした疑いがもたれている。

 P2Pソフトの開発者が罪に問われた世界的にも異例の事件。公判では、インターネットで不特定多数にP2Pソフトを配布した開発者を、直接の面識や接点がない正犯(実行犯)をほう助した従犯として罰することが可能かどうかが争われる。

 判例上は、自分の行為が正犯の実行行為を容易にするものだとほう助者が認識していれば、ほう助者が正犯の具体的な犯行日時などを知らなくてもほう助罪が成立するとされる。この場合開発者が、Winnyユーザーによる著作権侵害が行われることを認識していた上で配布していたかどうかが焦点になる。

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