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カブロボ、始動――ロボットはテクニカル分析で人間を凌駕するか?

» 2004年09月15日 23時16分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科(以下早稲田大学)、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、野村総合研究所(NRI)は、共同で、オープンソース・ソフトウェアを用いて、アルゴリズムの設計を楽しむ環境を提供することを目的に、ソフトウエア・プログラミング・コンテスト「カブロボ・プログラミング・コンテスト」(略称:カブロボ・コンテスト)を開催することを発表した。なお、企画運営はリンゴラボ(早大出資TLOパートナー)が行うほか、後援には経済産業省、日本経済新聞社が名を連ねている。

村岡氏 「多くの人が参加すると思うが、優勝は早稲田といわず、どこかの大学であってほしい」と笑うカブロボ・コンテスト実行委員会の委員長で、早稲田大学理工学部教授の村岡洋一氏(早大副総長)

 コンテスト参加者の申し込みは本日から、参加者用情報サイトで受け付けている。

カブロボとは?

 今回のコンテストは、ロボットプログラミングの対象を「株の売買」として新しく開催するもの。今回のコンテストで、Javaの一層の普及と、開発者の増加が期待されている。

 同コンテストを一言でいうと、PC上で動作するソフトウェアのロボット(ソフトウエア・エージェント)のプログラムを作成して株の売買を自動で行い、1か月間の運用成績で、そのアルゴリズムを競うもの。プログラミングというよりは最良のアルゴリズムを考えることに主眼が置かれているといえる。

 こう書くと、プログラミングの未経験者は尻込みしてしまいそうだが、プログラミングをまったく知らなければ、あらかじめ用意されているサンプルロボット(コード)のパラメータを設定するだけでよい。この設定も、15個の質問に答えるだけで終わってしまう。まさにゲーム感覚で最先端のプログラミング技術を身に付けていくことが可能となっている。もちろん詳細設定を行うことも可能だ。

 初・中級者であれば、このロボットに自らプログラムしたコードをマージさせることも可能だし、上級者であれば金融工学などを駆使したまったくオリジナルのロボットを作成することで、思い通りの動作をさせることが可能である。なお、プログラムには再現性の確保が必須となるため、乱数を用いたようなプログラムは利用できない。

「ミニ四駆で例えれば、コースは主催者が用意し、参加者はミニ四駆を改造して参戦、最速を競うようなもの。株価の変動要因にはミクロ的要因とマクロ的要因があるが、ミクロ的要因はテクニカル分析の範疇であり、こちらならプログラムが人間に勝つのではないだろうか」(リンゴラボ代表取締役、加藤浩一氏)

 なお、株式、各種インデックス値などのデータは、東京証券取引所、野村證券、野村総合研究所、東証コンピュータシステムの各社、およびNRI e-AURORAサービス(機関投資家向け情報サービス)から提供を受けている。

コンテストの流れ

 同コンテストは、プレコンテストを2004年11月から1か月間行った後、本戦を2005年1月下旬から1か月間開催する。本戦までは、ロボットを考察する期間として、過去の実績データを用い、何度でもロボットの評価・修正が可能。

 売買が可能な銘柄は、日経225銘柄からコンテスト実行委員会が選定した40銘柄で、自己資金は1000万円からのスタートとなる。売買指示は、コンテストの仮想証券会社(大会サーバ)に対して行う。売買は1日1度、終値ベースで行い、売買銘柄数の制限はない。そのほか、売買手数料を考慮しなくてよいなど、若干簡素化されている。

 コンテスト期間中には、参加ロボットの売買指示内容と成績などが、毎日Web上で公開される。また、コンテストの結果、運用成績の上位チームや、ユニークなアルゴリズムのロボットを開発したチームは表彰される。面白い点としては、ロボットがあげた利益が賞金となることだろう(上限設定あり)

 コンテストへは最大3名を1チームとして無料で参加できる。1人が複数チームで応募することはできない。また、賞金などが出る関係上、チームの代表者は18歳以上であることが条件だが、それらを満たせば高校生などでも参加できる。また、プログラミングに必要な開発環境として、EclipseとWebSphereの利用を推奨している。

 なお、同コンテストのシステムは、渋谷にある日本IBMのソフトウェア・コンピテンシー・センター(SWCOC)で運用される。このコンテスト運営サーバは、ブレードサーバ「IBM eServer BladeCenter」で、その上で「IBM WebSphere」とデータベース管理ソフトウェア「DB2」が稼動している。


 ITmediaでは、同コンテストに注目し、実際に参加するとともに、独自のロボットを考えているチームなどへの取材を通して、プログラミングの楽しさを伝えていきたいと考えている。ご期待ください。

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