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ターボリナックス、Turbolinux 10 Serverで掲げる3つのSとは

» 2004年10月05日 16時50分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ターボリナックスは10月5日、ミッドレンジ向けLinuxディストリビューション「Turbolinux 10 Server」(以下10S)を発表した。これまでコードネーム「Celica」の名で呼ばれていたものだ。2002年10月にTurbolinux 8 Serverがリリースされてから、実に2年を経てのサーバ向け製品の登場となる。

 冒頭挨拶に立った、ターボリナックス代表取締役社長の矢野広一氏は、「1つだけあえていうなら、圧倒的なコストパフォーマンスが今回のポイント。最近は、OSとしてのLinuxは決して安いものだとはいえなくなってきたと耳にすることもあるが、そうしたものに対するアンチテーゼになると思う」と述べた。

「ある種マイクロソフト型のライセンス形態」と話す矢野氏

 これは後述するが、3万9800円という価格に5年間のセキュリティアップデートも含んでおり、他の商用Linuxディストリビューターのようにアップデートパッケージ取得のためのコストが必要なくなっているのが大きな特徴だ。

製品は3種類

 発表された製品ラインナップは、基本パッケージとなる「Turbolinux 10 Server」に加え、障害対応を含む1年間のサポートを付加した「Turbolinux 10 Server with Support」、そして開発者向けに一部機能に制限を加えた廉価タイプの「Turbolinux 10 Server Developer Edition」の3製品。出荷開始はいずれも10月29日から。製品はインストールCD(2枚)、ソースCD(2枚)、リコーフォント5書体などが含まれるコンパニオンCD、Javaベースのアプリケーションサーバーや開発フレームワーク、統合開発ツールを収録したJAVA CD、2004年9月に業務提携を行ったスリーアールソフトのスパム対策/情報漏えい防止ツール「SpamBreaker」などをはじめとする商用ソフトウェアの「評価版」が多数バンドルされたソリューションパックCDの7枚構成(Developer EditionにはソリューションパックCDは付属せず6枚構成)。

10Sのデスクトップ画面(クリックで拡大します)

 主なパッケージ構成は、Linuxカーネル2.6.8、Glibc 2.3.3、GCC 3.3.3、XFree 4.3.0。デフォルトのテスクトップ環境はKDEとなる。また、SMTPサーバはPostfixがデフォルトとなり、sendmailはコンパニオンCDで提供される。

「Turbolinux 10 Server Developer Edition」の制限については、ユーザー作成や削除が行えないほか、パスワードやユーザー情報の変更もできないようになっている。なお、あらかじめ「test0」から「test9」といったユーザー(パスワードも同じ)が用意されている。ルートのパスワードは通常通りインストール時に設定する。

 価格は、「Turbolinux 10 Server」が3万9800円、「Turbolinux 10 Server with Support」が9万8000円、「Turbolinux 10 Server Developer Edition」が9800円(いずれも税抜き)。また、サポート権は単体でも販売され、1年で9万8000円、2年で14万7000円となっている。なお、10Sは、Linuxカーネル2.4系を採用している「Turbolinux 8 Server」と併売していく予定となっている。

有償サポートの範囲とユーザー特典

「Turbolinux 10 Server with Support」、「サポートパック for 10 Server」のサポート範囲については、Turbolinuxのインストールサポートのほか、対象サーバサービスの設定/障害サポートを件数無制限でWebおよびメールで問い合わせることができる。今後、電話での対応も予定しているという。

 ちなみに、この対象サーバサービスに含まれているのは、Apache、Samba、Bind、DHCP、Squidといった主要なパッケージや、iptables、tcp_wrappers、nfs-utilesなど15種類が資料には記載されている。それほど数は多くない印象を受けるが、問い合わせが多そうなものについてはひととおり押さえているといえるかもしれない。

 また、ソリューションパックCDには商用ソフトウェアの評価版が収録されているが、ユーザーがこれらを気に入った際は、ターボリナックスのWebサイトに用意された10Sユーザー専用サイトから優待価格で購入できるようにするという。これは、インストールCDに収録され、プリインストールの形で提供されるトレンドマイクロの「ServerProtect for Linux」(90日間の体験版)についても同様だ。

気になる部分

 同社の開発コードネームは、クライアント向け製品が車のサーキット場の名前で、過去には「Monza」、「Silverstone」、「Suzuka」(10D)、「LEMANS」(10F...)といった名前がつけられていた。一方、サーバ製品は基本的にクライアント向け製品で実装された機能を盛り込んだ形で後から出てくるのが常なこともあり、そのサーキット上を走る車の名前がつけられている。過去には「Esprit」、「Viper」、そして今回が「Celica」となっている。

 同社は今年4月に10F...をリリースするなど、コンシューマー向けのイメージがあるが、売り上げで考えると、売り上げの7割をサーバ製品が占めているという。業績についても、直近の業績はまだ公表できないとしながらも、第2四半期までは黒字となっているそうだ。また、直接の業績には現れないが、中国市場での販売実績が好調で、最近では中国最大の移動通信体事業者の中国モバイルの基幹システムに採用されるなど、大型システム案件を数多く受注し、高いシェアを維持している。

 今回発表した10Sは、この5月に業務提携を行った日本ユニシスからも、「HP ProLiantファミリ」にインストールしたパッケージ製品として販売される予定だ。

 Linuxカーネル2.6系を実装したサーバ向け商用Linuxディストリビューションとしては、すでにノベルがSUSE LINUX Enterprise Server 9をリリースしており、パフォーマンスの向上などは語られつくしている感もある。

 同社の特徴は、Red HatやノベルがトップダウンでエンタープライズLinuxを推進するのとは逆で、導入コストの低さというLinuxのメリットはそのままに、デスクトップやミドルレンジのようなボトムアップで推進していこうとしているところではないだろうか。これはエンタープライズLinuxという言葉でふたをされていたもともとのLinuxの姿であるようにも思える。

 とはいえ、気になる点もいくつかある。まず、今回の製品はAMDのOpteronやEM64Tといったアーキテクチャには対応していない。これについては、「別の製品として出るかもしれないが、まだ検討段階」としている。別製品として出てくる場合は、「Turbolinux Enterprise Server 8」の後継になることも考えられるが、こちらの製品の登場は年明け以降になりそうだ

 また、Oracleなどサードベンダーからの認定が受けられるかどうかもエンタープライズ用途であれば気にしたいところだ。このバージョンでOracle認定は受けるのかについての問いには、「依頼はしていきたい」と話すに止まったことから、この部分については具体的な進展はしていないように推測される。

 今回、ターボリナックスは「Turbolinuxだけができる第2世代サーバLinux」として「Speed」「Security」「Solution」を掲げるとともに、かなりの低価格で勝負をかけている。現在のエンタープライズLinuxの姿勢に対して投げかけたこのアンチテーゼがどのように受け入れられるか期待したい。

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