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ブッシュ対ケリー、IT政策はどう違う?

» 2004年10月22日 15時22分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米大統領ジョージ・ブッシュ氏と民主党の対立候補ジョン・ケリー氏は、いずれもブロードバンド普及とサイバーセキュリティを唱えているが、Computing Technology Industry Association(CompTIA)が公表したIT政策に関する質問状の回答では、両候補のアプローチは異なっている。

 ブッシュ陣営はブロードバンド普及に関する質問に対し、インターネット税の執行猶予とブロードバンドインフラの規制緩和について語った。ブッシュ氏はまた、2000年12月時点で700万世帯だった米国のブロードバンド導入が2003年12月に2800万世帯に拡大した点に言及している。

 「21世紀の政策を21世紀の技術に適用することで、われわれはブロードバンドを米国のさらなる地域、さらなる世帯にもたらす新たな投資を振興する」とブッシュ陣営の回答にはある。

 マサチューセッツ州選出の上院議員であるケリー氏は、地方と都市部のブロードバンド技術への投資を10%減税すると主張した。同氏の計画の下では、現行のブロードバンド技術よりも20倍高速な技術への投資の場合は20%の減税を受けられる。

 ケリー氏は回答の中で次のように述べている。「私は投資を推進し、競争を奨励し、新サービスをもたらし、革新を生み、普遍的でコストが手頃なブロードバンドネットワーク・アプリケーションの開発を加速する通信政策を支持する。地方にもっと多くの機会をもたらすことで、通信革命は多くのコミュニティーの社会機構を強化できる」

 CompTIAの質問状は、ここで公開されている。この質問状では両陣営にITに関連した12項目について質問し、両陣営ともにおよそ10日以内に回答を返した。これは、CompTIAの2万の加盟企業が、両候補のIT関連問題に対する見解について迅速に情報を得られるようにするためのものだと、同団体の公共政策担当ディレクター、ロジャー・コケッティ氏は話している。

 サイバーセキュリティに関する質問では、ケリー氏は政府機関と民間企業の「真のパートナーシップ」を訴えた。同氏は、グローバルな標準と慣行を推進する計画だとしているが、詳細なことは記していない。

 「われわれのネットワーク――21世紀のインフラ――をもっと強力に、安全にすることにホワイトハウスのエネルギーを投じる大統領が必要だ。これは、いつでも脅威を検出できるサイバーセキュリティ・インテリジェンスシステムの支持を意味している。私はセキュリティの弱い部分を強化するために、グローバルな標準とベストプラクティスを実施する」(ケリー陣営の回答より)

 サイバーセキュリティに関するブッシュ氏の回答は、2003年2月に発表された「National Strategy to Secure Cyberspace>」に焦点を当てたものだった。ブッシュ陣営の回答は、この戦略に国家安全対応システムや政府のサイバーセキュリティプログラムなどの優先事項が含まれる点に触れている。この戦略には既に実施されている部分や、開発中の部分がある。

 ブッシュ陣営はこう回答している。「電子商取引、インターネットベースの通信、サイバースペースを使った一部物理インフラの制御の多大なる重要性を考えると、サイバーセキュリティは不可欠だ。国家のサイバーインフラの安全確保とサイバーセキュリティ研究開発において今行われている投資は、将来の世代のネットワークソフト・ハードの攻撃への脆弱性を減じ、侵害を受けても重要な任務を維持できるようにするために使われている」

 質問状には、知的財産保護に向けた連邦政策のあり方についての質問もある。ブッシュ氏は、知的財産法の違反には、技術を違法とすることなく対処する必要があると答えた。

 「技術は重要な情報のパイプであり、違法な著作権侵害に悪用されることもある。技術を非難することではこの問題に対処できない。われわれは精力的に知的財産保護を実施し、技術ではなく違反行為を追及しなければならない」(ブッシュ氏)

 ケリー氏も知的財産を保護する法律を支持しているが、デジタル作品のバックアップやほかのデバイスへの転送を認めることで消費者を保護する新法制定にオープンな姿勢を示している。

 「技術革新を不当に抑え付けることなく、法律により確実に個人や企業の作品を保護することが必要だ」とケリー氏。

 両候補のCompTIAへの回答の多くはほかのさまざまな場所でも入手できるが、ほとんどのIT関連問題は選挙運動の大きな関心事とはなってこなかった。ブッシュ氏は最近の街頭演説で、医療業界に電子医療記録などの技術を採用させることを主張した。ケリー氏は国外アウトソーシングに関するブッシュ政権の対応について、米企業に国外への業務移管を思いとどまらせるための手を何も打っていないと批判している。

 IT問題への注目が比較的少ないことから、ITコミュニティーには幾らかの不満が起きている。Intelのクレイグ・バレットCEO(最高経営責任者)は10月19日に、両候補の関心が薄いと不満を訴えた。同氏は、「教育、技術インフラ、研究開発において米国がいかに他国に対する競争的優位を失っているかについて、両候補が注目していない」と不平をこぼしたと伝えられている。

 だがCompTIAのコケッティ氏は、両陣営とも質問状に迅速に回答しており、これは両候補ともIT問題に関心を持っているということだと主張している。「いずれの陣営も、ITセクターが経済の重要な分野であることを認識している。技術関連職に就いている有権者は、両候補の選挙運動にとって本当に重要なターゲットの一部だ。彼らは各方面で浮動票層の1つと考えられているためだ」

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