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» 2004年10月25日 10時40分 公開

2020年、Intelの半導体はどうなっている?

Intelはカーボンナノチューブやシリコンナノワイヤを使った新しい形状のトランジスタ開発を考えている。このトランジスタは、原子レベルにまで小さくなっているかもしれない。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 米Intelは10月22日、2020年に向けてトランジスタの小型化、高速化、省電力化を進める先進プロジェクトの一部を披露した。

 米カリフォルニア州サンタクララにあるIntel本社で行われた報道・アナリスト向け説明会で、Intel研究者らは、カーボンナノチューブ、ナノワイヤなどの新しい素材や、トランジスタを原子レベルに縮小化する新技術を紹介した。

 この30年の間にトランジスタはかつてないほどの小型化が進み、その性能とコストがもたらす恩恵によってIntelをはじめIT業界全体は発展を遂げてきた。しかし先進研究に携わる研究者たちは、従来の素材やテクニックでは実現不可能な、トランジスタのさらなる小型化を目指す取り組みに着手している。

 トランジスタが原子レベルにまで小さくなれば、トランジスタゲートの幅は原子1個か2個程度になり、現行の製造技術や素材を適用できなくなると、Intelフェロー兼技術戦略ディレクターのパオロ・ガディーニ氏は語った。

 同社は最近、90nm(ナノメートル)製造プロセスへの移行を完了したばかり。2011年頃にトランジスタゲート長を10nmに縮小する計画は既にあるが、2年サイクルで進むトランジスタ小型化のペースに従うとしたら、Intelと半導体業界は、2013年までに新たな素材を見つけなければならない。1nmは10億分の1メートル。

 カーボンナノチューブ、ナノワイヤは多く企業が注目している将来有望な素材だと、Intelのコンポーネント研究ディレクター、ケン・デービッド氏は語った。カーボンナノチューブは、カーボン(炭素)原子の輪から作られ、筒状の形をしており、トランジスタを往来する電気を通すチャネルとして利用できる。トランジスタは、電流が遮断されるか、もしくは電流がその経路を通過できる場合に機能し、1ビットの情報を示す「オン」あるいは「オフ」の状態が作られる。

 デビット氏によれば、ナノチューブは耐久性に優れた構造をしており、現行の素材よりも速いスピードで電子を通すことができる。Intelは最近、理論上、従来型のトランジスタと同じ大きさと消費電力で、速度が3倍のカーボンナノチューブトランジスタを開発したという。

 ナノチューブの研究は多くの企業および大学で進められているが、今後の挑戦課題は、ナノチューブを量産製造プロセスに統合することだとデビッド氏は語った。シリコンナノワイヤについても同じで、Intelは将来これを使ったまったく新しい形状のトランジスタ開発を考えているという。

 現行のトランジスタで採用されている金属ゲートは、チャネルとシリコン素材の上に据えられているが、Intelは向こう約4年間のうちに、ゲート素材がトランジスタを3方向から囲む「トライゲートトランジスタ」を同社のプロセス技術に統合する計画だ。デビッド氏によれば、これは、特にトランジスタのオフ時における電流リークの制御に役立つという。

 ただしIntelが考えるトランジスタの究極の形状とは、チャネルの周囲全体をゲートで覆う単純な筒状だとデビット氏は説明した。この種のトランジスタは、電子の可動性と電流リーク制御とのバランスを最もうまく取れるという。シリコンワイヤはこのトランジスタの素材として使うことができるが、トランジスタの電気性能を最適化させ、製造プロセスを構築するまでにはこの先膨大な研究を重ねていく必要があると同氏は言い添えた。

 ナノチューブとナノワイヤ素材が実用化されるのは2013年〜2019年頃になるだろうとデビット氏。それ以降の計画はほとんど未定という。

 ガディーニ氏は、Intelでは、2020年をめどに先進研究プロジェクトに取り組んでいる世界の主要大学と密接な関係を築いていると語った。こうした関係を通じて、Intelは初期段階の研究を各大学に依頼し、その中から将来性のある技術を選ぶいう。

 こうした技術の1つが「スピントロニクス」と呼ばれるものだと、Intelの新研究技術担当マネージャー、ジョージ・ブールアノフ氏。トランジスタの「オン」「オフ」を切り替える要素として従来ゲートが用いられてきたが、Intelは磁場などの方法を用いて同じことを実行する研究に取り組んでいるという。

 スピントロニクスはスピン(回転)する電子の研究だ。電荷が回転すると磁場が発生し、回転の方向によって一定方向が示される。一方向を示す磁場はトランジスタの「オン」状態とし、反対方向を示す磁場を「オフ」とすることができる。

 この技術のメリットの1つは、従来のトランジスタゲートをオンとオフに切り替えるのに必要な電力に比べ、極めて少ない消費電力で電子の回転を変えることができ、その電子を使って反対の状態を作り出せる点だとブーリアノフ氏は説明した。

 IBMもスピントロニクスを先進トランジスタ製造テクニックとして採用することに目を向けている(4月27日の記事参照)。同社は既に同じような手法を用いてハードディスク用の巨大な磁気抵抗ヘッドを開発、劇的な大容量化に成功している。

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