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『スピリチュアルマシンの時代』のカーツワイル氏に聞くナノテクの未来Interview(1/3 ページ)

» 2004年11月05日 14時32分 公開
[IDG Japan]
IDG

 テクノロジーの開拓者で起業家、そして未来派であるレイ・カーツワイル氏(56)は、フラットベッド・スキャナの発明者でもあり、目の不自由な人のための最初のテキスト音声変換装置を発明し、オムニフォント光学式文字認識(OCR)システムを開発した。ほかの多くの業績の中には、大語彙音声認識技術発売の先鞭を切ったことも含まれる。同氏は、発明と革新に対する米国最大の賞であるLemelson-MIT賞や、1999年にクリントン元大統領から授与されたNational Medal of Technologyなど、多数の賞を受賞している。近著『Fantastic Voyage: Live Long Enough To Live Forever』(Rodale Books)の中で、同氏と共著者のテリー・グロスマン医学博士は、新しい技術によって人間の寿命をほぼ永遠に延ばす方法を説明している。

―― あなたの「永遠に生きる」計画に、コンピュータ技術は、どのように組み込まれるのでしょうか。

カーツワイル (近著の中で)根本的な生命延長のための3本の懸け橋について説明しています。

 1本目の懸け橋として紹介しているのは、今日既に存在している、加齢と病気の進行を遅らせるための知識に基づいた詳細なプログラムです。私は、20年間自分の体の生化学の再編を進めてきました。5年前からグロスマン博士と共同作業を行うようになり、より徹底的にやっています。私は毎日約250種類のサプリメントを飲み、毎週点滴治療を受けています。40歳のときに受けた生物学的老化度判定テストでは、38歳くらいと判定されました。56歳の今、広範囲な生物学的老化度判定テストを受けたところ、私の生物学的年齢は40歳という結果が出ました。つまり、過去16年間、あまり年を取っていないということです。

 グロスマン博士と私は、老化と疾病のプロセスを遅らせる方法について記述しています。このプログラムは、意欲さえあればベビーブーマーが、バイオテクノロジーの発展が全面開花の時を迎えるまで生き延びられるようにするものです。そしてこのバイオテクノロジーの全面開花が、第二の懸け橋です。それは、生物学における情報処理の再編です。バイオテクノロジーは、向こう10年から20年の間にピークを迎えるでしょう。

 コンピュータはバイオテクノロジーに重大な役割を果たしています。ゲノムの解読は、コンピュータなしでは不可能だったでしょう。また、コンピュータは、副作用を最小限に抑えつつ、がん細胞を破壊するという、生化学の明確なミッションを遂行する際の、標的療法を設計するのに活用されています。健康状態をモニターし、診断を下す生化学的センサーの体内への埋め込みが始まっています。人工膵臓は、現在臨床試験の段階ですが、これはグルコースセンサー、インスリンポンプ、そしてコンピュータを、患者の体内に埋め込むものです。

 バイオテクノロジーはさらに、第三の懸け橋――ナノテクノロジー――に引き継がれます。そこで私たちは、生物学の限界を超え、肉体的、精神的な能力を何千倍、いや何百万倍にも引き上げることができるでしょう。ナノテクノロジーの黄金期は2020年代に到来します。私たちは、虚弱な「バージョン1.0」の肉体を、大幅強化されたバージョン2.0にすっかり取り替えるでしょう。グロスマン博士との共著には、これら3本の懸け橋の詳細を記しました。

 20年後のナノテクノロジーのキラーアプリケーションは、ナノボットです。ナノボットは、人間の体と脳の内部で病原体とがん細胞を破壊し、DNAエラーを修理し、毒素や壊死組織片を破壊することにより、または、老化作用を逆転させることにより、根本的な延命を実現するでしょう。ナノボットは、人間の血流中を移動できるほど小さなコンピュータベースのロボットです。

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