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“負け犬”Blogで勝ち組に化けろ ネット金融とBlogの接点とは

» 2004年11月26日 17時20分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 独身女性専用Blog「化け犬.jp」が10月にオープンした。参加できるのは独身女性か、子どものいない既婚女性だけ。開設したのは、ネットを中心に金融関連サービスを提供するファイナンスオールだ。

 ネット金融の企業がなぜ今、独身女性向けBlogなのか。同サイトの立ち上げ人で、同社マーケティング室アシスタントマネージャーの松永夏奈さんに聞いた。

 「もともとは、金融のポータルサイトを作ろうと思っていたが、うまくいかなかった」と松永さんは打ち明ける。一言で金融といっても、消費者金融から保険、為替、年金、株……とさまざまな商品があり、短期的な借り入れから長期の投資まで、範囲は非常に広い。1つのポータルにまとめるのは困難だった。

 そこで「金融中心ではなく、生活中心に考えるサイトにしよう」と発想を転換。まずは、日々の生活について活発に情報交換できるユーザーコミュニティを構築し、金融関連の話題も自然に話せる場を作ろうと考えた。

 ユーザーは、金融商品に興味があり、お金を持っている層に限定したい。今の日本でお金を持っているのは(1)中高年層、(2)子どものいない共働き夫婦、(3)実家で暮らす独身女性──。だが中高年層はネットと疎遠な人が多いためボツ。残った2者のうち、目を付けたのは独身女性だった。

 松永さんは「ネットコミュニティは、人が不安な時に発展する」と見る。不安な人はコミュニケーションによって不安感を共有し、解消しようとするためだ。夫婦よりも独身女性の方が、不安が強い人が多いだろうと考えた。

 松永さんの周囲の独身女性の多くが株や投資信託など金融商品を購入しており、金融に興味がある人は少なくないだろうという肌感覚も、このチョイスを後押しした。

 「金融関連の会社が運営する独身女性専用Blogポータル」という珍しいサイトは、こうして出来上がった。

“負け犬”は前向き

 サイトのネーミングは迷った。「負け犬」「ミリオネーゼ」「おひとりさま」「独身女性房」「春風」……いくつもの候補が挙がったが、「負け犬」こそが、前向きな独身女性にぴったりはまる言葉だと思い、採用した。

 後ろ向きに見られがちな「負け犬」だが、女は結婚するものという従来の固定観念にはまらず、独身を“選んだ”女性にとっては便利な言葉だという。

 「経済的に自立している女性にとって結婚は、子孫を残す意味しかない」と、自らも30歳・独身の“負け犬世代”である松永さんは言い切る。子どもが不要なら、結婚は自由な人生の足かせになるというわけだ。

 しかし、ある程度の年齢になったら結婚するのは当然と考えている人に対して、結婚しない理由をいくら説明しても分かってもらえないことが多い。そんな場合に「私、負け犬なんです」と言えば、相手はそれ以上突っ込んでこず、丸く収まるという。

 「化け犬.jp」の化け犬は、“一皮ムケタ”負け犬という意味。「負け犬」と言われて傷ついたり怒ったりせず、結婚しないことに対してポジティブで、向上心の高い独身女性を指す。

負け犬の人生設計サポートをビジネスに

 Blogは「仕事」「お金」「老後」などといったカテゴリーごとに分類し、情報収集しやすくした。サイトには、負け犬達が一生独身でも困らないよう、マネープランや人生設計を指南するコンテンツを掲載する計画だ。

 近い将来、ユーザーと共同で編集したBlogも掲載する予定。「年金節約のため海外に住もう」「男性人口が多い国へ見合い旅行に行こう」「競走馬を買ってみよう」「精子バンクを使ってみよう」「相続した家を建て替えて負け犬仲間で一緒に住もう」などといったテーマで、負け犬女性の人生設計に役立つBlogの掲載を考えている。

 金融関連の有料セミナーや、男性との出会いを目的にしたパーティの開催も計画する。

 スタートから1カ月弱がたち、集まったユーザーは約320人。20−30代の独身女性がほとんどだ。ただし、年収は400万円以下が6割と最も多く、当初想定していたよりも高収入層が少なかった。このため、節約法や副収入の伸ばし方など、年収をアップさせたい人向けのコンテンツ掲載やセミナー開催も視野に入れる。

 ユーザーは1年間で6000人に増やしたい計画。独身女性という限定したカテゴリーで濃いコミュニティを作り上げ、ビジネスにつなげたい考えだ。

「ネット上のコミュニケーションと同様に、リアルな結びつきも重視したい」と松永さん

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