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Oracle、すべてを統合する「Fusion」スイート開発

» 2005年01月19日 12時19分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Oracleは2008年、同社の3つのアプリケーションすべての顧客の移行ポイントとなる新しいアプリケーションスイート「Fusion」をリリースする。同社幹部が1月18日、PeopleSoft統合後の新会社発足イベントで明らかにした。

 このニュースは、合併をめぐる長い戦いの中でPeopleSoft顧客が懸念していた、Oracleのアプリケーション戦略のビジョンを明確にする助けになるものだ。Oracleは先月、敵対買収の申し出から始まった18カ月に及ぶ攻防の末、103億ドルでPeopleSoftを買収した(12月13日の記事参照)

 OracleとPeopleSoftの開発者から成るチームは既にFusionに取り組んでおり、このアーキテクチャを使った初期の技術は2006年に登場すると幹部は語った。Oracleは、個々のFusionアプリケーションは2007年にリリースされ、完全なスイートは2008年に登場すると予測している。

 その間、Oracleは3つのアプリケーションのメンテナンスを継続し、2006年に「PeopleSoft Enterprise 9.0」、「EnterpriseOne 8.12」(PeopleSoftがJ.D.Edwardsから取得したソフトシリーズ)、「Oracle E-Business Suite 12」とそれぞれメジャーアップグレードをリリースする。これらアップグレードは、それぞれの製品ラインの最後のメジャーアップデートとなり、その後Oracleは統合されたFusionシリーズに移行する。

 Oracleはこれら3つの製品ラインを少なくとも2013年までサポートすると、新たにアプリケーション開発担当上級副社長に任命されたジョン・ウォーキー氏は語った。同氏は、前任のロン・ウォール氏からこのポストを引き継いだ。OracleはPeopleSoft買収完了直後、ひっそりとこの役職を入れ替えた。

 FusionはJavaベースのサービス志向アーキテクチャ(SOA)で、PeopleSoft、Oracle、J.D.Edwardsのアプリケーションからの自動アップグレードプロセスが搭載される予定。「変換ではなく自動アップグレードプロセスだ」とOracleのラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)はイベントで強調した。

 同社はFusionへの取り組みを進める一方で、OracleとPeopleSoftの開発チームはある程度分離し続けるつもりだ。Oracleの人事アプリケーション開発責任者のジョエル・サマーズ氏は、PeopleSoftのプレザントン本社での業務監督に任じられたとウォーキー氏は説明した。

 OracleはPeopleSoftとの事業統合に当たり、5000人以上の社員のレイオフを進めているところだ。元PeopleSoftツール・テクノロジー担当ジェネラルマネジャー、ジェスパー・アンダーソン氏など、PeopleSoft社員のうち数人はOracleのアプリケーション部門で主導的な役職に就くことになる。アンダーソン氏はOracleのアプリケーション戦略チームの責任者になるという。

 Oracle幹部は今回のイベントで、自身を新たな活力を得て、ビジネスアプリケーション市場の覇権をめぐってSAPなどのライバルに積極的に挑戦する準備を整えた企業として描いている。この市場は、営業、人事、サプライヤーリレーションなどの企業業務を管理するためのソフトを含む。

 チャールズ・フィリップス社長によると、同社の国際営業チームは1カ月前に比べて65%拡大した。また同社は、PeopleSoftのパートナーであるIBMに接触しているという。IBMは、今回の合併により最も打撃を受けそうな企業とアナリストに予測されている。PeopleSoftとは違って、Oracleはミドルウェアとデータベースの市場でIBMと直接競合している。フィリップス氏は、PeopleSoftとIBMのつながりを利用して、2社の技術をより効率的に統合したいと話した。

 「うまくいけば、IBMとの関係がもっと前進するだろう」(同氏)

 Oracleはイベントの中で、3人の顧客とのパネルディスカッションを行った。これら顧客はいずれも、自社内でPeopleSoftとOracleの両方の技術を採用している。どの顧客も、合併については楽観視しており、もっと強力なアプリケーションの登場を期待していると語った。

 顧客の1人であるUnitedHealth GroupのCIO(情報統括責任者)、ロブ・ボーネンカンプ氏は、PeopleSoftとOracleの首脳の違いを表現して聴衆の笑いを誘った。PeopleSoft創設者デビッド・ダフィールド氏は物腰穏やかで、職場にベーグルを持ってきたり、会社のパーティでペットの犬を歓迎することで知られている。では、ラリー・エリソン氏は? 「ダース・ベイダーだ」とボーネンカンプ氏は言った。

 衝突はあったものの、2社の営業・サポートの文化は非常に似ているとボーネンカンプ氏。「私の両社との取引経験には、共通する点がたくさんある」

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