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ゲルシンガー氏がIDF基調講演でIntelの最新ロードマップを解説(1/2 ページ)

» 2005年03月03日 11時01分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Intelの最高技術責任者(CTO)を務めてきたパット・ゲルシンガー氏だが、先日の人事異動でエンタープライズプラットフォームグループの事業部長に就任。元をたどればデスクトッププロセッサのマーケティング部隊を率いていたゲルシンガー氏の、久々の現場復帰である。昨年、同職を務めていたマイク・フィスター氏がIntelから退社したことで、一時的にアビ・タルウォーカー氏が後任となっていたが、やや若さを感じざるを得ない面もあった。

 それだけにゲルシンガー氏の最初の基調講演に注目が集まったが、話題の中心はマルチコアプロセッサとその周辺技術、それにエコシステムの確立といった部分を中心に、Intelの持つ“次のイノベーションへと進む材料”を用意したものだった。

15以上のマルチプロセッサコアを並行開発

 Intelがプロセッサコアを複数組み込んだマルチコアアーキテクチャへの素早い移行を宣言してから1年、同社は開発プロジェクトを整えることに成功しアグレッシブな予定を示した。ゲルシンガー氏は基調講演の席上、年内に投入する5つのマルチコア試作チップを提示しつつ、「これ以外にも10以上のプロジェクトが走っている」と話した(関連記事)

ゲルシンガー氏が示したロードマップ ゲルシンガー氏が示したIntelの最新プロセッサロードマップ。新しく多くのコードネームが公開された

 コア自身のアーキテクチャはPentium 4系列、Itanium系列、Pentium M系列の3つに分類できるが、用途やマルチコアの構成などにより、数多くのバリエーションがある。なお、デスクトップとモバイル向けプロセッサに関しては、別のIDF基調講演で詳細が語られる予定だ。

 ゲルシンガー氏担当のエンタープライズ領域での注目は、Itanium 2の後継プロセッサに関して、Montecito世代の2つ先まで、マルチプロセッサ版、デュアルプロセッサ版ともにコードネームが公開されたことだろう。Intelの社長がポール・オッテリーニ氏に変わって以降、Itanium 2に関しては以前ほどIntelからのプッシュが見られなくなっていた。また現実問題として、Itanium 2と64ビット機能を備えることとなったXeonの競合が避けられない状況になってきている。

 市場に漫然と存在していたItanium 2の将来に対する不安に対し、ゲルシンガー氏は“IA-64アーキテクチャを今後も開発し続ける”と言いたかったのかもしれない。基調講演ではマルチコアのMontecitoを用いた「Intel Virtualization Technology」(以前、Vanderpool Technologyと呼ばれていたもの)のデモも行われ、4プロセッサ構成のサーバで8個のCPUが動き、さらにそのCPUを3台の仮想マシンに振り分けて動作させた。

 とはいえ、ゲルシンガー氏は64ビットXeonとItanium 2のすみ分けに関して「Xeonは幅広い価格レンジ、性能レンジに対応する万能型、Itanium 2はPOWERやUltraSPARCを用いたハイエンドサーバと競合する“ビッグアイアン”向け」と説明しており、特定用途のみの傍流の印象が強い。

 なおデュアルプロセッサ版のMillingtonには、サーバ内の温度に余裕がある場合に、通常時よりも高い電圧、クロック周波数で動作する、省電力モードとは逆の発想の動作モードが加わり、突発的なトラフィックへの耐性を高めることが可能という。

ややわかりにくいデスクトップ向けマルチコアCPUの構成

 一方、サーバ/ワークステーション向けのXeonプロセッサがデュアルコアになるのは、年末ギリギリ、もしくは2006年早々になる。というのも、Pentium 4系のNetBurstアーキテクチャを採用した最初のデュアルコアチップは、Xeonでは採用されないためだ。

 NetBurstアーキテクチャ最初のマルチコアプロセッサは、既報の通り第2四半期に登場するSmithfieldだが、そのフロントサイドバスは最高800MHzに留まり、最高クロック周波数も3.2GHzと既存のPentium 4を下回るスペックとなる。Intelはこの一時的なスペック低下を、デュアルコアによる並列処理によるアドバンテージで乗り切ろうとしている。

 とはいえ、こうしたスペック面での数値の低下は、ノーマル版とエクストリームエディションの差を微妙なものにしている。ノーマル版のSmithfieldは「Intel Pentium D Processor」という名称となりi945チップセットと組み合わされ、性能面で上位とされるエクストリームエディションのSmithfieldは「Pentium Processor Extreme Edition」という名称でi955Xチップセットと組み合わされる。いずれもFSBおよび動作クロック、EM64TやVTサポートなどのスペックは同じだ。

 両者はチップセットの違いはあるものの、違いはHyper-Threading(HT)の有無のみとなる。Pentium Extreme Editionは各コアがHTをサポートしており、最大で4つのスレッドが同時に実行できるが、Pentium DはHTに対応しないため最大同時実行スレッド数は2となる。これらがどのようにアプリケーションのパフォーマンスに影響するかは未知数だ。

 Smithfieldはマルチコア化の計画を早めるため、予定されていたシングルコアのTejasをキャンセルして開発された。そのためか急いで作った印象が拭えず、本命は2006年登場のPreslerかもしれない。

 Xeonプロセッサのマルチコア化は、Preslerと同じ世代のPaxville(マルチプロセッサ版)、Dempsey(デュアルプロセッサ版)となる。これらのプロセッサは65ナノメートルで製造され、キャッシュメモリが増加し、クロック周波数やFSBも上昇する。ただし基本的なNetBurstアーキテクチャに変化はないようだ。なお同じデュアルコアでも、こちらは2つのシリコンチップを1つのパッケージに入れるマルチチップモジュールになる。

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