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法則発表から40周年――未来を見据えるゴードン・ムーア氏(2/2 ページ)

» 2005年04月14日 22時27分 公開
[IDG Japan]
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 ナノテクノロジーに関しては、同氏は「懐疑的」であり、当分の間、同技術がメインストリーム分野でシリコンベースの集積回路に取って代わる可能性はないと考えている。

 「微少なトランジスタを作るのと、それらを10億個互いに結び付けて有用な機能を実現するのとでは大きな違いがある。この点が見過ごされていることが多いと思う」と同氏は語る

 集積回路は時代遅れになるどころか、病理分析用の遺伝子チップ、エアバッグセンサー、「マイクロフルイディクス」といった新たな領域に広がりつつあるという。「マイクロフルイディクスとは、チップ上の微小な化学実験室のようなものだ」と同氏は説明する。

 「ある意味では、シリコンチップがナノテクノロジーになったと言える。シリコンチップには100ナノメートル以下の形状要素が含まれているからだ。ナノメートルはナノサイエンスで一般に用いられる単位だ」(同氏)

 人工知能に関する質問に対しては、「今日作られているようなコンピュータは、人間の心のようなものに近づくことはない」と同氏は答えている。今日のコンピュータは元来、人間とは異なる方法で情報を処理するように設計されているからだ。科学者は心の働きを解明した上で、それを模倣するコンピュータをゼロから作る必要があるという。

 人間の知能を模倣するという点では「コンピュータは間違った方向に進んでいる」と同氏は指摘する。

 しかし言語を認識したり、「トゥー」という発音を聞いてそれが「two」であるのか「too」であるのかを判断する能力など、人間の知能を部分的に模倣することは可能かもしれないという。

 「そのくらいまで言語を認識できれば、コンピュータと知的な会話ができるようになるだろう。そうなればコンピュータの使い方が劇的に変化するだろう」とムーア氏は話し、さらに「そのレベルの知性が実現するのは10年から50年くらい先のことになるだろう」と付け加える。

 コンピュータの未来に大きな期待を抱くムーア氏は、将来には「度肝を抜くような」進歩がもたらされるという。「40年後まで生きて何が起きるか見届けたいものだ」(同氏)

 今後40年間にわたって業界を導く新しい法則を考え出すつもりはないかとの質問に対し、ムーア氏は、そのつもりはないと答えている。以前とは違い、もう現在のコンピューティング業界にはそれほど近くないことを同氏は認めている。

 「私は既に得た名誉に甘んじようと思っている」(同氏)

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