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合併の意外な誕生/私はいかにして心配するのをやめてAdobeとMacromediaの合併を歓迎するようになったか

» 2005年04月19日 15時54分 公開
[Sean Gallagher,eWEEK]
eWEEK

 AdobeがMacromediaの買収を決めたことに対するクリエイティブ市場のプロユーザーたちの感想としては、2通りの反応が考えられる。そのうちの1つはおそらく、下品な言葉を使わずには記せないような内容だろう。

 AdobeとMacromediaの合併により誕生する一枚岩の巨大企業は、充実した品揃えの技術を提供することにより、ほぼすべてのメディアを念頭にコンテンツを作成しようとしている人たちに確実に影響を及ぼせるようになるだろう。AdobeはMacromediaを吸収することにより、Webサイト構築ツールのDreamweaverや、WebメディアプラットフォームのFlashなど、自社ではけん引力を生み出せなかった各種のWeb技術を手に入れ、デジタル画像処理やイラストの分野で辛うじて生き延びている少数の競合製品を排除することになるだろう。

 おそらく、株主利益を考えればMacromediaにとっても良い取引なのだろう。34億ドルという株式総額は、ワコムのタブレットペンを振って反対するほど悪い条件ではない。しかもMacromediaの顧客の大半は既にAdobeの顧客だ。

 では、誰もが勝者なのだろうか?

 そういうことでもない。

 上述したとおり、Macromediaの顧客は大半が既にAdobeの顧客でもある。現に私もDreamweaverとStudio MXを使い、一方ではPhotoshopとInDesignを使っている。FireworksやFreeHandなど、Adobeのポートフォリオと重複しているMacromediaの製品はどれも強力だが、大半のデザイナーやイラストレーターにとってはPhotoshopやImageReadyやIllustratorよりも優先して選ぶほど魅力的なわけではない。

 だが少なくとも、これまでは選択の余地があった。AdobeとMacromediaの合併に伴い、間もなく、多数の製品が打ち切られることになるのは必至だ。

 AdobeはDreamweaverを優先させ、GoLive製品ラインを一掃することになると私は確信している(あるいは少なくとも、Dreamweaverツールの消費者バージョン「Express」と同等のレベルまで降格させることになるだろう)。FreeHandとFireworksはおそらく、AdobeのCreative Suiteのラインナップに吸収されるだろう。これまでこうしたツールを使ってきたユーザーにとっては、今こそ、自分がこれらの製品にどれだけ依存してきたかを再確認すべきときだ。

 クリエイティブツール市場における製品の選択肢が狭められる可能性のほかにも、AdobeによるMacromediaの吸収合併の影響をあまり歓迎できないのには、純粋なビジネス上の理由もある。Adobeはこの買収により、コンテンツ作成市場において、実際にはそうでなくても、事実上は独占企業となる。そうなれば、長期的にはコンテンツ指向の企業にとって、戦略上、問題となる可能性がある。Adobeのソフトやスイートの料金が今後さらに値上がりするようなことになれば、経済的にも問題が生じることになる。

 市場の競争という点では、AdobeとMacromediaの合併に反対する立場に置かれている企業はないようだ。Quarkの突然の復活と事業の多角化の動き、あるいはMicrosoftやAppleによる何かしら大きな動きがない限り、Adobeは今回の取引によって、基本的には電子の世界におけるすべてのクリエイティブなコンテンツに対して関税を徴収する力を得たも同然だ。

 この取引の非競争的な性質をかんがみ、規制当局はこの合併をすぐには承認しないかもしれない。ただし、誰かがこの取引に異議を唱えないことには、当局も干渉は行わないだろう。そして、これだけ友好的に見える取引であるからには、おそらくそうした抵抗が起きることもないのだろう。

 だから、私も心配はやめて、この独占状態を歓迎すべきなのかもしれない。さもなければ、クレヨンと活版の世界に戻るしかない。

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