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原因は「二重の人為的ミス」 ウイルスバスター不具合で謝罪

» 2005年04月24日 21時06分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「ユーザーに大変ご迷惑をおかけしました。深くお詫びします」――トレンドマイクロ代表取締役のマヘンドラ・ネギ最高財務責任者(CFO)は4月24日、都内で会見を開き、同社が昨日公開した「ウイルスバスター」のパターンファイルが原因で、多数のPCやサーバの不具合が起きたことを謝罪した(関連記事1関連記事2関連記事3)。本来行うべき動作テストの一部を省略してしまうなど、人為的ミスが重なったのが原因だった。

 対策として電話サポートや出張サポートを強化するほか、対策プログラムやCD-ROMを配布し、25日の新聞各紙の朝刊に謝罪広告と対策法を掲載する。

陳謝するトレンドマイクロ幹部。左からトレンドラボ・ジャパンの沓澤克郎ディレクター、トレンドマイクロの黒木直樹上級セキュリティエキスパート、同社代表取締役のマヘンドラ・ネギCFO、同社日本代表の大三川彰彦執行役員、同社マーケティング統括本部の沢昭彦バイスプレジデント

 問題が起きたのは4月23日朝。同社ウイルス対策製品ユーザーが、同日午前7時33分に公開されたウイルスパターンファイル「2.594.00」のアップデートを行うと、CPUの使用率が100%になり、PCの動作が極端に遅くなるというトラブルが発生した。同社はユーザーからの問い合わせで問題に気づき、同日9時2分に2.594.00の公開を停止。10時51分に、問題発生以前のパターンファイルを名称変更した2.596.00を配布した。

 原因は、パターンファイルのコードミスをテスト工程で発見できなかったこと。2.594.00の新機能として、ボット(bot)プログラムが使う「UltraProtect」という圧縮形式に対応したが、この形式の検査機能にコードミスがあり、特定の条件下で処理が無限ループになってCPUを占有。CPUを100%使用してしまい、PCが実質的に動かなくなった──というわけだ。

 こうしたミスは通常、テスト工程で発見・修正されるのが、「Windows XP SP2上でのテストを、人為的ミスで全く行わなかった」(トレンドラボ・ジャパンの沓澤克郎ディレクター)ため、不具合に気づかなかった。さらに、最新の検索エンジンでテストすべきところを、UltraProtect対応以前の古い検索エンジンでテストしてしまい、圧縮・解凍の動作を検査しないままパターンファイルをリリースするというミスが重なった。

 「これまでのテスト工程は、個々のメンバーのスキルに任せていたところがあった。今後は、ダブルチェックを徹底する。人の手によるミスを防ぐため、チェック体制を完全自動化していきたい」(黒木直樹上級セキュリティエキスパート)

殺到する問い合わせに対処しきれず

 問題のパターンファイル「2.594.00」のダウンロード数は約17万。同社は4月24日午前11時から、2.594.00を削除するツールの配布を始めた。

 ツールはCD-ROM化し、25日以降に家電量販店などで配布する予定。また同日以降、全国で100人程度のスタッフを企業や個人ユーザーのもとに派遣する。

 同社の問い合わせ窓口はパンク状態だ。23日に開設した窓口には、24日午前10時ごろまでに、個人向けで約16万1000件、法人向けで約1万3000件の電話が殺到。電子メールでの問い合わせも相次いだ。

 しかし同社がこれまでに対応できた問い合わせの数は、企業・個人、電話・メールあわせて4000件程度に過ぎないという。現在は人員を増強したため「個人の問い合わせの7割に対応できるようになった」(沓澤ディレクター)。今後も人員を増やし、できるだけ多くのユーザーに対応したいとしている。

「全社のリソースを100%使って対策にあたっている。すべての情報をオープンにするつもりだが、日々状況が変わっており、情報が錯そうすることがあって申し訳ない」とネギCFO

 会見での一問一答は以下の通り。

――月曜日(25日)に被害状況はどこまで広がるか。

黒木上級セキュリティエキスパート パターンファイルの更新サイクルに依存するので何ともいえない。障害が発生するのは、23日の午前7時33分から同9時2分にパターンファイルをダウンロードし、その後新しいパターンファイルをダウンロードしなかったPCやサーバ。土曜日(23日)にPCやサーバを走らせていなければ、月曜日にPCを立ち上げた時点で正常なパターンファイルがダウンロードされるはずで、問題ない。

――問題のパターンファイルはどういう体制で開発しているのか。チェックに関するルールはあったのか。

大三川執行役員 十数人のチームで、交代制で動いている。誰がチェックミスしたのかはまだ聞いていない。チェックには厳格なルールを適用しており、ISO9002(国際品質保証規格)にも認定されている。

――本社が米国、ラボがフィリピン、最大市場が日本という構造が、対応の遅れを引き起こした一因では。

ネギCFO そうは思わない。米国もフィリピンも日本も、今、24時間体制で動いており、距離の問題は感じない。ラボを国内だけに置いてしまうと、世界で発生するウイルスに対応できない。

――影響を受けた国内企業の数は。

大三川執行役員 確認している範囲だが、トレンドマイクロが直接取引している企業で、新聞社3社、鉄道1社など22社。パートナー経由で契約している企業で、製造業19社、レコード会社1社など39社。合計で61社。

――今回の不具合によって発生した被害は補償するのか。

大三川執行役員 ご相談を受ければ、個別に検討し、真しに対応したい。

――海外の状況は。

大三川執行役員 トレンドマイクロの最大市場は日本なため、海外での被害は大きくないようだ。米国では通常の倍となる約600件の問い合わせが来ており、オーストラリアも問い合わせが増えているが、欧州などでは問い合わせはほとんどない。時差の関係で、問題のパターンファイルがアップグレードされた時間帯にPCを立ち上げているユーザーが海外では少なかったのも大きいだろう。

――エバ・チェン社長はまだ来日しないのか。

ネギCFO ビザがすぐには取れず、26日にならないと来日できない。社長は「皆さんにご迷惑かけたことを、一刻も早く謝罪したい」と話している。

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