ITmedia NEWS >

縁と縁とをつむぐ「リアル」SNS――あるカフェバーの場合社会とネットとサービスと──SNSその2(1/2 ページ)

» 2005年04月28日 17時07分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「まさかこんなに集まるとは」――東京・麻布十番のカフェバー「縁縁」のオーナー・河上純二さん(34)は、集まった150人を前に呆然とした。昨年5月13日、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「GREE」「mixi」で告知したオフ会「リアルソーシャルネットワーク」第1回。70人でいっぱいになる縁縁に、150人ものユーザーが詰め掛けた。SNSの力を思い知った瞬間だった。

縁縁

 それ以来縁縁では、SNSユーザーによるオフ会が月に2〜3回開かれている。「オフ会用のイベントスペースと勘違いしちゃう人が続出しました。普通のカフェバーなんだけど」――河上さんは苦笑する。ごはんもお酒も出すカフェバーという“正しい認識”は、最近になってやっと定着してきた。mixiの掲示板で告知している新メニューやイベントを楽しみに、足を運ぶユーザーも多い。

 店名通り、“縁”が生んだ店だった。開店は2003年の9月。河上さんと友人3人で、皆が集まる“たまり場”を作ろうと盛り上がったのがきっかけだ。「当時流行ってたから」、カフェバーを作ることに決めたが、4人とも飲食業未経験。友人のつてをたどり、手伝ってくれる人を探した。一級建築士やフードコンサルタント……40〜50人もが「手伝うよ」と手をあげてくれた。知り合いが知り合いを呼び、協力者が増えていく様子は、「今思うとSNS的だった」。

 多くの人の力を借り、縁縁はオープンする。コンセプトは「ギャラリーカフェバー」。アーティストと一般の人が出会う場にしようと、作品を店内に飾り、販売もできるようにした。縁縁が将来、SNSユーザーのたまり場になるとは、考えもしなかった。「当時はSNS自体、知りませんでしたから」

縁縁の店内

 河上さんがSNSに出会ったのは、縁縁オープン3カ月後の2003年12月。米GoogleのSNS「Orkut」に招待されたのがきっかけだ。さまざまな国に住む人と簡単につながれる仕組みを見て「使えそう」と思ったという。「南の島に移住してカフェを作るのが夢。その時に土地を買ったり、物件を押さえるのに役立ちそうだなと思いました」

 本格的にSNSを使い始めたのは、GREEに招待された翌3月から。面白そうな人に気軽にリンク申請でき、つながっていけるのが楽しかった。その後mixiにも入会。GREEとmixiの両方に「縁縁」のコミュニティを作り、スタッフやお客を呼び込んだところ、メンバーは雪だるま式に増えていった。「初期は、人数が多いコミュニティに人が集まる傾向があった」ことも手伝い、1カ月もたたないうちに100人以上のコミュニティにふくれあがった。

 「コミュニティ100人超えたね、せっかくだから何かやりたいね」――ある日、スタッフ会議でそんな話題が出た。“出会いのある場にしたい”と名づけた縁縁。店でオフ会を開こうと思い立ったのは、自然な流れだった。

 オフ会第1弾は「縁縁リアルソーシャルネットワークvol.1」と名づけ、GREEとmixiの掲示板で参加を募った。「誰も来なかったらどうしよう」――そんな不安は、午後7時のスタートと同時に吹き飛んだ。ユーザーは続々と詰め掛け、店に入り切れなくなって道路にあふれだし、「近所の人から苦情がきたり、警察が見回りにきたり――大変でした」。

 でも楽しかったと、河上さんは振り返る。「あのころのSNSは、新しいもの好きが高密度で集まっていて、面白い人が多かった。普段出会えないようなパワフルな若者と交流を持て、若返りのエナジーをもらいました」。

 リアルソーシャルはそれ以来、月1回のペースで続けている。ただし参加は1回50人限定。もちろん毎回、満員だ。

 「SNSは、知り合いを増やすには便利な仕組み。横の付き合いは加速したと思います。縁縁では、SNSで知り合った1人1人と、じっくり深く話し合う場を提供したい」

SNSは強力なマーケティングツールだが……

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.