mixiの縁縁コミュニティでは徐々に、スタッフが新メニューの紹介やイベント告知を始めた。「PRする場があるのだから、積極的に伝えていこう」――そんな意識のもと、フード担当者は今日のランチや新作ケーキを、オーナーや店長はイベント情報を書き込む。mixiユーザーはそれを見て縁縁に足を運び、感想をレスとして書いていく。
「SNSは、成熟するに従って強力なマーケティングツールになるだろう」と河上さんは考える。コミュニティで情報発信すると、ユーザーからの反応がすぐに戻ってくる。生の声をマーケティングデータとして生かせるし、ユーザーの好反応は口コミの宣伝材料になる。「SNSはユーザー同士の距離感が近いので、呼びかけて何かを集めたときの回収率は非常に高く、反応はとてもアクティブ」
ただ、河上さんはSNS上で、縁縁オーナーとしての立場をあまり強調しない。例えば河上さんのmixi日記には、縁縁のことはほとんど書いていない。他のスタッフも同様だ。「無意識だけど、書き込みが宣伝っぽくならないように気を遣ってるところは、あるかもしれない」と河上さんは打ち明ける。「コミュニティサイトのユーザーは敏感。あからさまな宣伝したり、何か押し付けがましいことを書くと引いてしまうだろう」
「始めはWebサイトを情報発信スペースにするつもりだったけれど、今や完全にSNSに食われてしまった形です」。メニューやイベント情報の更新、ユーザーとの交流は、Webサイトよりもmixiの方が速くて深い。縁縁のWebサイト上で、縁縁にゆかりある人に執筆依頼しているBlog「縁Blog」のライターも、半数がSNSで出会った人々。SNSという閉じた空間が、完全公開のWebサイトよりも強い力を発揮している。
SNSがつないだ縁は、縁縁のサービス充実にも役立ってきた。縁縁でカウンセリングや占いなどを行う日替わりのスタッフは、多くがSNSを通じて名乗り出た人。アーティストから、作品を展示したいとの依頼も舞い込む。
mixiには、縁縁を核にしたコミュニティもいくつもできた。発端は、野球好きな共同オーナーの1人が作った「縁縁野球クラブ」。「メンバーが徐々に増え、『アパッチ野球団』のようにどんどん強くなっています」。
スタッフ以外の知り合いから、「縁縁の名を使ったコミュニティを作りたい」と頼まれることもしばしば。「縁縁マリンスポーツ倶楽部」「縁縁歌謡倶楽部」など、縁縁の名を冠したコミュニティが次々にできていった。
「SNSがきっかけで出来たコミュニティから、全国大会を制覇するようなチームが出たら笑えるよね。ウッチャンナンチャンの『芸能人社交ダンス部』みたいに、大会を目指して」――河上さんは心から楽しそうに話す。「SNSでのやりとりから、何か新しいムーブメントが起きると面白いよね」
そして、こんな夢を語る。「SNSや縁縁を、みんなの夢をサポートする手段に育てたい。SNSで広げ、縁縁で深めた人間関係をベースに、音楽やショートフィルムを作るとか、クリエイティブな活動を支援できれば」――縁縁は、SNSで知り合ったアーティストの作品を置き、「縁縁レーベル」でリリースしたインディーズアーティストのCDを流している。支援の芽は、確実に育ちつつある。
|
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR