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“Mactel”マシンでWindowsは使える?

» 2005年06月16日 15時50分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 Appleは、今後投入予定のIntelプロセッサ搭載MacでWindowsを実行したいと考える人たちの邪魔はしないという。ただし、そうしたMacで直接Windowsを実行できることになるかどうかは、まだ不明だ。

 米Apple Computerは先週、Intelプロセッサを搭載するコンピュータの販売を2006年6月までに開始する計画を発表した(6月7日の記事参照)。

 Appleの開発者コミュニティーは当初、Intelプロセッサに移行するという決定を複雑な気持ちで受け止めていたが、新しいMacでWindowsも実行できるということになれば、同社にとっては、熱心なコンピュータユーザーからビジネスユーザーに至る各ユーザー層で、ある程度の新規顧客を確保するための支柱となるかもしれない。実際、一部のMacユーザーは以前から、Microsoft Virtual PCなどの仮想化ソフトを介して、Mac上でWindowsを実行している。

 Appleはこれまでのところ、今後投入予定のIntel搭載MacでWindowsを実行するというアイデアに水を差すような行動は起こしていない。一方、Microsoftの計画に詳しい情報筋によれば、同社は今後登場するAppleのハードウェア製品でWindowsをサポートするかどうかや、そのための方法を検討中という。

 Apple幹部によれば、同社はMac OS XをDellなどのPCメーカー各社にライセンス供与する計画はないが、WindowsやWindows向けのアプリケーションが同社のIntel搭載Macで動作するのを阻止するつもりもないという。

 そうなると、企業や個人ユーザーが今後、Mac OSとWindowsのデュアルブートマシンを構築する可能性もある。ただし、実際、そうした“Mactel”ハードウェアで直接Windowsを動作させるためにはどのような処置が必要かについては、Appleが具体的にどのIntelハードウェアとソフトウェアドライバモデルを選ぶかも含め、詳細の多くがまだ謎に包まれたままだ。

 Appleのソフトウェア製品マーケティング担当ディレクター、ブライアン・クロール氏は先週、同社のWorldwide Developer Conferenceで取材に応じ、次のように語っている。「AppleはWindowsの販売やサポートは計画していない。ただし、Mac上での動作を排除するようなことをハードウェアサイドで行う計画もない」

 クロール氏は、Mactelハードウェアやソフトウェアの計画に関して詳細を語ることを断っている。

 「現時点でのフォーカスは、PowerPCとIntel、両方のプロセッサに対応するユニバーサルバイナリを開発する必要があることをAppleの開発者コミュニティーに理解してもらうことだ」と同氏。

 AppleはまずIntelのPentium Mプロセッサから採用を開始し、プロセッサやそのほかのハードウェアの起動には、標準のBIOSの代わりにEFI(Extensible Firmware Interface)を採用すると見られている。だが同社は、既製のIntelプロセッサとチップセットを使うのか、それ以外の方法を取るのかについては、まだ詳細を決定していない。

 アナリストによれば、Appleは現在、IBMの標準的なPowerPC 970FXプロセッサを使い、対応するチップセットを独自に設計している。MactelハードウェアでネイティブにWindowsを実行するためには、Intelのハードウェア計画の詳細とともに、そうしたハードウェア向けのソフトウェアドライバに関する詳細を把握することが、きわめて重要となるはずだ。

 Mercury Researchのアナリスト、ディーン・マッキャロン氏は次のように指摘している。「Mac/IntelハードウェアでWindowsをプライマリOSとして実行するためには、ドライバレベルでのOSサポートが必要となる。BIOSに関連した問題か何かがあるかもしれない。WindowsをMac/Intelハードウェア上で実行するためには、Mac/Intelハードウェアは独自のレイアウトのハードウェアであり、PCではないという前提を離れ、適切なドライバを用意する必要があるだろう」

 つまりマッキャロン氏によれば、MactelでWindowsをサポートするためには、Microsoftやそのほかの企業にAppleハードウェアに関する詳細な知識を提供する必要がある。Appleは、自社のマシンの魅力を増すことによるプラスの影響と、ほかのハードウェアでMac OS Xを使おうとする人たちを支援することになるリスクとを、比較考量する必要があるだろう。

 Microsoftでは既に、AppleのIntelへの移行がどのような影響をもたらすかについて、社内で会合を開いている。Microsoftの計画に詳しい情報筋によれば、同社は、プロセッサの切り替えに伴いAppleの出荷台数は最初は減少する可能性があるにせよ、最終的には数パーセントの市場シェアを得るまでに回復するだろうと考えている。

 そのため、MicrosoftにとってはWindowsの市場シェア拡大が何より重要であることを考えれば、AppleのハードウェアでWindowsをネイティブに実行できるようサポートするのは、同社にとっては簡単な決断のように思われる。ただし、同社の計画に詳しい情報筋によれば、幾つかの問題もある。もしAppleが、チップセットや独自のソフトウェアドライバなど、非標準のハードウェアを使うことになれば、Microsoftにとっては、Intel搭載MacでWindowsをサポートするのは、コスト効率の悪い選択となってしまう。

 Burton Groupのアナリスト、ピーター・オケリー氏は電子メールで、次のように指摘している。「Appleは実際のところ、例えば、ハードウェアやライセンス方針を通じて、Intel搭載MacでWindowsをネイティブに実行することを法的に不可能とすることもできる。私は、そうした判断は結局、誤りであり、逆効果だと思う。だが、これまでも解せないことは起きてきた。おそらく最終的には、SunがWindows Certifiedサーバでそうしたように、AppleもWindowsの実行を消極的にサポートすることになるのだろう。ただし、Sunはそのせいで、Windows Serverを直接販売できずにいる」

 ハードウェアのフルサポートが提供されないとしても、進取的なMactelオーナーには頼みの綱がある。デスクトップ用Pentium 4プロセッサには今年、Pentium Mにも来年には、Intelの仮想化技術が組み込まれる予定だ。Intelプロセッサに仮想化技術が組み込まれれば、Intel搭載Macは、複数のソフトウェアを同時に実行できるようパーティショニングできることになる。そうなれば、Intel搭載MacでWindowsやLinux、それに付随するあらゆるアプリケーションを実行できない理由は何もない。

 「理論的には、Mac OS上でWindowsを実行できるはずだ。現在も、Virtual PCによって実行されている。違うのは、ハードウェアベースの仮想化により、ほとんどフルスピードで実行できるようになる点だ。全体としては、フルスピードの仮想システムということになるだろう」とマッキャロン氏。

 個人ユーザーや企業ユーザーがわざわざIntelベースのMacを買って、WindowsをインストールするためにMac OSを削除するということはないだろう。だがIntel搭載MacでWindowsを使えるということは、Appleのデザインが好きだがWindowsも使いたいというような、こだわりのユーザーにとっては大きな魅力となるはずだ。教育機関や政府機関、中小規模企業などの組織にとっても、Appleのハードウェアを選択しやすくなるだろう。

 Appleの年次報告によれば、同社はここ数年、年に約300万台のMacを出荷しており、2004年会計年度には約330万台を出荷している。微増であっても、Appleにとっては意味のある増加となるはずだ。

 Gartnerのアナリスト、レスリー・フィアリング氏は次のように語っている。「熱心なユーザーは、Appleだからという理由でMacを購入するだろう。ただし、AppleのハードウェアでWindowsを実行しようという人たちも、少しは出てくるだろう」

 だが、たとえWindowsを使えるようになったとしても、大企業向けの売り上げの増加は期待すべきではない、とフィアリング氏は指摘している。

 「Appleはこれまで、PCライフサイクル管理の提供など、企業向けのサポートに投資はしないという方針を明確に示してきた。そのつもりはないということなのだろう」と同氏。

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