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「情熱は同じ」スターバックス出身のマイクロソフト新社長

» 2005年07月28日 09時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 マイクロソフトの日本法人は去る4月20日、同社の新会計年度(2005年7月〜2006年6月)に合わせた人事を発表した。そしてこの7月1日より、米Microsoft Corporation コーポレートバイスプレジデントのダレン・ヒューストン氏が、代表執行役社長として前任であるマイケル・ローディング氏を引き継ぐ形で就任した。そして7月27日、ヒューストン氏は就任後、初の記者会見を行った。

Starbucks Coffee Companyからの転身を果たしたダレン・ヒューストン氏

 ヒューストン氏は1966年1月生まれでカナダ ブリティッシュコロンビア州の出身。ブリティッシュ コロンビア大学で経済学の修士号を取得。さらにハーバード大学でMBAを取得後、カナダ政府の経済担当顧問やStarbucks Coffee Companyのバイスプレジデントを務め、2003年9月にMicrosoftへ入社した。

 入社後は北米地域スモール アンド ミッドマーケット ソリューションズ&パートナー グループを担当、それまでの経験および職歴を生かした手腕を発揮し、この分野における同社のビジネスの成長に貢献した。

 先日の就任発表記者会見では「(ローディング氏からの)基本姿勢を踏襲」という控えめな方針を表明していたヒューストン氏。だが、今回の会見では方針の転換こそないものの、現在のコンピューティング環境や同社の社会的役割といったものを踏まえつつ、大規模なてこ入れ施策、「PLAN-J」を打ち出した。

 「世の中ではデジタル情報が爆発的に増加している。こうしたデジタル情報を管理するためには優れたソフトウェアが必要。マイクロソフトはソフトウェアを提供する会社であり、これに対応できる力を持っている。」「われわれが1ドルの売上を達成するときには、インストールや開発、関連サービスなどで日本の経済にその7倍の効果をもたらすことができる」とヒューストン氏はアピールする。

 そして、「日本市場はわが社においてきわめて重要な位置にある。日本におけるマイクロソフトの今後3年間を考えたとき、より深く、目立った形で、日本の政府や産業界とパートナーシップをもって活動していくことが大切」(同氏)との考え方から3カ年計画であるPLAN-Jに取り組む基本姿勢を語った。

ヒューストン氏が取り組む「PLAN-J」とは?

 PLAN-Jが国内業績の建て直し計画なのか、日本市場のさらなるポテンシャルを見込んだ意欲的な施策なのかは現時点では不明だ。しかし内容を見る限り、その成功のカギは数字レベルでの達成ではなく、企業としての社会的な位置固めにあるといってよいだろう。

投資や技術革新を中心に、他者との関係強化に重点が置かれている

 投資と技術革新で企業としての底力をつけ、パートナーシップをもとに産官学との連携を強めていくという図式だ。実はこれは以前から同社が執り進めてきた方法論である。ただし、PLAN-Jではその達成に期限をつけられたということだろう。より明確に対策とその効果がヒューストン氏には求められているわけだ。

 先日、Microsoft会長のビル・ゲイツ氏が来日した際に発表された東芝との協業に見て取れるように、日本企業が持つ技術と、現在それが大きく反映され急成長しているデジタル家電市場には、決して小さいとは言えない野望がマイクロソフトにはある。こうした背景も、国内施策であるPLAN-Jの実施には影響しているように思える。会見でヒューストン氏がことあるごとにXbox 360に言及していたのはなぜか、と思うのは勘繰り過ぎだろうが。

 「(Starbucks Coffee CompanyからIT業界への転身ということで)よく聞かれるのが、『2つの業界の共通点は?』という質問。もちろん共通点はある。それはよりよいものを提供しようとする情熱だ。人々が持つ情熱は、StarbucksでもMicrosoftでも違いはない」(ヒューストン氏)

 なお会見中、ヒューストン氏は今後数日間にWindows Vistaのベータ版が提供されることも明らかにしている。

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