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ハリケーン被災地の通信手段確保にアマチュア無線家ボランティアが貢献

» 2005年09月08日 09時06分 公開
[IDG Japan]
IDG

 先週初めにハリケーン「カトリーナ」に襲われたルイジアナ州、アラバマ州、ミシシッピ州などの被災地で通信手段が切実に必要とされており、アマチュア無線家のボランティアたちがその確保の支援を通じて救援機関や緊急対応機関に協力している。

 被災地の大部分で依然として停電が続き、電話サービスが復旧されたのはニューオーリンズ、ビロクシー、ミシシッピ州ガルフポートなど、大打撃を受けた地域の一部にとどまっている。アマチュア無線家はアメリカ赤十字などの機関から、ミシシッピ州、アラバマ州、フロリダ州北西部に設置された200カ所以上の避難所の通信の補完を要請されている。

 全米から駆けつけた約700人のアマチュア無線家のボランティアが既に支援活動を始めており、さらに多くの人が現地に向かっていると、全米に15万7000人のアマチュア無線家会員を擁する米国アマチュア無線連盟(ARRL)の広報担当者アレン・ピッツ氏は語る。「これは短距離走ではなくマラソンだ」と同氏。「現地に入っているボランティアもいるが、これからもっと大勢の人が参加する」

 ピッツ氏によると、アメリカ赤十字から9月4日、500人強のアマチュア無線家に、避難所と炊事施設での避難者支援の応援依頼があった。ボランティアはまずアラバマ州モンゴメリーとオクラホマ州、テキサス州に設けられた中間準備地域に赴いて当局から説明を受け、そこから避難所に派遣されている。アマチュア無線家は被災地に自分の車か自費で交通機関を利用して向かうという。

 ボランティアの多くはカトリーヌがメキシコ湾岸に上陸する前から迅速に対応を開始し、「Hurricane Watch-Net」サイトのサービスの一環として、8月29日のハリケーン直撃の3日前から警戒情報を流していたとピッツ氏は語る。

 アマチュア無線機器は被災地で、電力供給がなく、電話回線や中継施設などの通信システムがダウンしている場合でも使える。電池や発電機で動かせるためだとピッツ氏は説明する。「個々の機器が独立した完全な送受信センターとして機能する」と同氏。「一部が故障しても問題ない。アマチュア無線家に電池とラジオ、ハンガーを1つ渡せば、使えるようにしてしまうだろう」

 ボランティアは発電機用の燃料と必要なすべての機器を用意して支援活動に参加している。中古のアマチュア無線システムは100ドルでも買えるが、最新のハードをそろえると5000ドルも掛かるという。

 また、アマチュア無線家は自分の機器とノートPC上で動くソフトを組み合わせ、インターネット経由の電子メールアクセスを復旧し、通信支援を強化することができるとピッツ氏は語る。

 同氏によると、救世軍や連邦緊急事態管理局(FEMA)、米国沿岸警備隊(USCG)、国土安全保障省(DHS)などの災害対応機関からもアマチュア無線家への協力要請が来ている。

 先週末にはボランティア活動に関する連邦機関である全米コミュニティーサービス公社(CNCS)が、ハリケーン被災者が支援を受けている地域にARRLのボランティアが移動、滞在するのに掛かる費用の負担軽減を目的とした10万ドルの追加補助金の交付を発表している。

 「ハリケーンによって通常の通信網が寸断されているため、ボランティアのアマチュア無線家が提供する通信サービスは、諸組織にとっても、最愛の人と連絡を取ろうとしている個人にとっても極めて重要だ」とCNCSのCEOデビッド・アイズナー氏は声明で述べている。「この重大な時に追加援助ができることをうれしく思っている」

 追加補助金はARRLの「Ham Aid」プログラムを通じて利用される。このプログラムは2002年にCNCSからの補助金を基に、アマチュア無線家に対する緊急対応認定トレーニングの充実を目的に創設された。

 ARRLの最高開発責任者メアリー・ホバート氏は声明で、ARRLの90年の歴史の中で、会員が負担した災害対応活動費用の一部を埋め合わせることができるのは、今回が初めてだと述べている。

 アマチュア無線家のボランティアは、数週間から数カ月にわたると見られる今回の災害対応の継続期間を通じて、各地に分かれて活動にあたるとARRLは述べている。

 既にARRLの数人の会員は、被災者と緊急対応チームの連絡を支援することで救助活動に大きな役割を果たしている。ARRLの声明では、あるアマチュア無線家が、ニューオーリンズで増水のために家の屋根に取り残された15人の被災者の救助活動の編成に貢献した例が挙げられている。

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