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MicrosoftとRealが見いだした独禁法訴訟の着地点(2/2 ページ)

» 2005年10月12日 22時55分 公開
[Matt Hines,eWEEK]
eWEEK
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 このほかMicrosoftは、自社のWindows Media DRM(Digital Rights Management)システムとRealのHelix DRM製品の相互運用性を「強化」し、Realが非Windowsの携帯デバイスと、Windows Media DRMを使ったPCでのコンテンツ再生を推進できるようにする方針を示した。

 Realは2003年12月に米国でMicrosoftを提訴し、同社がOSソフト市場での支配的地位を利用して、マルチメディアアプリケーション分野で競争を妨害したと訴えた。

 Realはまた、Microsoftが多数のコンピュータメーカーとの間で、メーカーが製品に独自にプログラムをインストールすることを制限する内容の取り決めを結んだと訴えた。Realはこれらの問題に関連して損害を被ったとして10億ドルの賠償を求めていた。

 Realは米国で訴訟を起こしただけでなく、Microsoftと欧州連合(EU)の独禁法訴訟でEU側についたベンダーの中で最後に残った1社だった。EUは2004年、Microsoftに対し、Windows Media Playerを搭載しないバージョンのWindowsを新規に提供するよう命じた(6月9日の記事参照)

 さらに、EUはMicrosoftに5億9700万ドルの制裁金を科したほか、Windowsソースコードの一部公開を命じた。

 Microsoftはこれらの是正命令を不服として上訴する計画を表明してきたが、EU第一審裁判所は関連する公聴会の日程を決定していない。

 MicrosoftはRealと和解するまでに、同社と同様にMicrosoftが反競争的行為を行ったとして独禁法訴訟を起こした企業に和解のために数十億ドルを支払ってきた。

 例えば、MicrosoftはTime Warnerとは7億5000万ドル、Sun Microsystemsとは19億5000万ドルの支払いで和解している。

 また、Microsoftはこの数年間にNovellBurstCCIA(Computer and Communications Industry Association)とも和解に達している。

 業界観測筋は、今回の動きはMicrosoftとRealの双方にとってプラスになると評価している。和解によって両社の法的問題に決着がつき、両社はそれぞれの製品計画を展開できるためだ。

 また業界アナリストは、Realとの問題が片づいたことで、EUとの訴訟や、今後のいかなる独禁法関連の訴えも、Microsoftにとってそれほど脅威にはならないだろうと見ている。

 「欧州での訴訟でEU側を支持する企業はRealしか残っていなかったため、今回の和解はMicrosoftの上訴に有利に働くだろう。懸案だった問題は解決したと考えられるからだ」とJupiter Researchのアナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は語る。

 「ある意味で、Microsoftはこうした和解に応じたことで戦いに敗れたことになるが、同社は明らかに、訴訟問題にけりをつけて前に進むことを目指す方針に転換している」(同氏)

 ウィルコックス氏は、Realにとっても、今回の和解により、Microsoftの流通チャネルのPCメーカーと協力関係に入り、さらには新しいデジタルメディアアプリケーション群を開発してこうした企業を通じて販売できるかもしれないという有望なチャンスが開ける、と指摘する。

 さらに同氏は、Realが既にMicrosoftの多くの技術を利用しているという点でも、今回の和解は理にかなっていると見ている。実際、RealPlayerソフトではWindowsのブラウジングエンジンが使用されており、RhapsodyサービスではWindows Media技術が採用されている。

 また市場観測筋は、両社は提携により、マルチメディア分野でApple Computerとより効果的に競争できるだろうと考えている。この分野でAppleの音楽ダウンロードサービスiTunes Music Storeは圧倒的な強さを誇るサービスと目されている。

 Forrester Researchのアナリスト、テッド・シャドラー氏は、MicrosoftはRealとの提携で、MSNの顧客向けの音楽サービスをようやく手に入れるが、このサービスはMicrosoftのIM製品にも統合されることになりそうだと語る。

 「Microsoftはポータル向けの会員制音楽サービスでYahoo!と競争する手段を何も持っていなかったが、提携によってこの状況は改善される。基本的には顧客をRealのサービスに誘導するという仕組みだとしてもだ」とシャドラー氏。「Microsoftはまた、MSN Messengerが単なるIMソフトではなく、メディア配信クライアントの機能も果たせることを示そうとしている」

 シャドラー氏の最新の調査によると、MSNは米国のポータルユーザーの21%が利用しているのに対し、Yahoo!は40%が利用している。市場リーダーのGoogleではこの数字は48%に上る。

 さらに同氏は、MicrosoftがWindows技術をRealに開放することは、Realが自社APIを開発者に公開し、新しいマルチメディアアプリケーションの開発技術の提供で第一人者を目指す目標を推進するのに役立つかもしれない、と話している。

 Jupiterのウィルコックス氏は、Microsoftの今回の和解やSunなどの企業とのこれまでの提携から分かるように、同社は最大のライバル企業の一部と協業を進めていると指摘する。

 だが同氏は、Realが今回の和解で、新しい技術ライセンス条件といった点の恩恵をすぐに受けられる保証はないとも述べている。

 「実のところ、Microsoftのパートナーの大部分は同社の好敵手でもある。だが、それは今に始まったことではない」とウィルコックス氏。

 「Realがライセンスを供与されたからといって、ただちに両社が密接に協業するということにはならない。例えば、AOLはTime WarnerとMicrosoftの和解で多くのライセンスを得たが、まだ活用できていない」(同氏)

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