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移動体通信向けWi-Fiシステム、日本から欧州へ

» 2005年10月19日 16時45分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Allied Telesynは欧州のユーザーに、アクセスポイント間を途切れることなく移動できる広範囲なWi-Fiネットワークを提供したい考えだ。このネットワークは、アジアで開発・導入されたプロプライエタリな技術を使って実現する。

 Allied Telesynのドイツ部門ディレクター、マーカス・オットー氏は、「欧州では、モバイルIPソリューションに興味はあるが、802.11a/b/gシステムの資産を守りたいと考えているインターネットプロバイダー(ISP)、地域電話会社、企業などに向けた市場が見込まれる」と言う。

 このモバイルIPシステムは、日本企業のルートの技術者によって開発された。ルートは今年、Allied Telesynの親会社であるアライドテレシスに買収されている。

 このシステムはルートのプロプライエタリなレイヤー3ローミング技術に基づいており、無線ネットワーク内のIP接続のハンドオーバーを、携帯電話のネットワークでの音声やデータと同じように実現する。オットー氏によると、例えば鉄道の線路に沿って十分なアクセスポイントを設置し、列車にモバイルルータを搭載すれば、乗客は途切れることなくストリーミングビデオを見ることができるという。

 このシステムは香港の地下鉄と、シンガポールの空港と中心街を結ぶ高速鉄道で試験運用されている。「われわれの技術は、時速300キロまでの高速移動体でのハンドオーバー接続が可能だ」(オットー氏)

 技術の鍵となる構成要素は認証サーバとホームエージェントサーバ。

 「ホームエージェントサーバは、移動体のアクセスポイントとの交信を追跡する。このサーバがハンドオーバーのプロセスを担っている」とオットー氏。

 同氏によると、このモバイルIPシステムは、ニュートラルな無線アクセス技術だという。IEEE 802.11標準ベースのすべての無線アクセス技術に対応する。

 だが、懸案中の無線ネットワークでの移動性に関する標準、IEEE 802.20はまた別の話だ。この標準は、時速120キロで移動する機器の1.5Mbpsまでの接続をサポートするよう設計されている。これはルートのシステムと直接競合するかもしれない。

 「われわれは、既に802.11a/b/g標準ベースのシステムを持っている携帯電話会社や企業、組織への取り組みにフォーカスしている。欧州では802.11対応機器のインストールベースは非常に大きい。自社のサービスに移動性を加えたい企業が、802.11機器を葬らなくてもいいようにする必要がある」とオットー氏。

 もう1つのIEEE標準である802.16(WiMaxの方が通りがいい)も競合になり得る。WiMaxベースステーションは現在の802.11システムより受信範囲が広く、ハンドオーバーの問題は避けられるが、WiMaxの周波数帯免許は有料となるため、小規模Wi-Fi企業の多くはWiMaxへの投資をためらう可能性があるとオットー氏は指摘する。

 Allied Telesynは北欧とドイツの幾つかの匿名の電話会社と試験運用を行っており、欧州の大手廃棄物管理会社とこの技術の試験について話し合っている。

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