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新入生も日本一のスパコンユーザーに 東工大100TFLOPSグリッド、来春稼働

» 2005年11月29日 20時32分 公開
[ITmedia]

 東京工業大学は11月29日、2006年4月の稼働を目指す日本最速のスーパーコンピューティンググリッドについて詳細を説明した。NECが構築を主導し、AMDのデュアルコアOpteronを搭載したSun Microsystems製サーバのクラスタリングでまず85TFLOPSを達成。その後100TFLOPSにまで強化し、同年6月発表のTop500でトップ5入りを見込んでいる。

photo 新グリッドの構成

 グリッドはSun Fire×655ノードで構成。1ノード当たり8CPUソケットを備え、デュアルコアOpteron(2.4GHz、2.6GHz)の搭載で合計1万480CPUコアとなる。メモリは合計21.4Tバイト。OSはLinux(SuSE Enterprise)。

 これに英ClearSpeedのSIMD(Single Instruction/Multiple Data)専用アクセラレータ×360ノードも組み合わせる。バイオインフォマティクスや流体解析など、特定アプリケーションの処理を高速化するのが目的だ。

 ストレージはSun製サーバ1.1P(ペタ)バイトを備え、ノードやストレージはInifiniBandで接続する。

 稼働開始時にはOpteron部分が50TFLOPS+SIMDアクセラレータが35TFLOPS=85TFlopsを達成する予定で、x64プロセッサベースのクラスターとしては世界最速となる。4月以降にSIMDアクセラレータを600ノード程度に強化し、処理性能を100TFLOPS超にまで高める計画。さらにNECの「SX-8」を追加し、ベクター計算機も備えるハイブリッド型スーパーコンピュータを実現する。

photo 新グリッドは「アジア初の100TFLOPS」に

 東工大は2002年、学内グリッドの先駆けとしてNEC製ブレード+Linuxによる1.8TFLOPSのシステムを構築し(関連記事参照)、研究と教育に活用してきた。新グリッドは同大キャンパスグリッドの中心として機能し、一線の研究者から学部学生まで広く利用してもらう。

 同大学術国際情報センターの酒井善則センター長は「従来のスーパーコンピュータは孤立した環境で特殊なソフトを使い、ユーザーも限られていた」と反省する。キャンパスグリッドを担当する同センターの松岡聡教授によると、新グリッドは「みんなのスパコン。東工大に入学すると、新入生はいきなり日本一のスーパーコンピュータユーザーになれる」。既存グリッドの100倍となる強力な計算資源をデスクトップPCの延長のように気軽に使ってもらうことで、学内からのブレークスルーを期待する。

 x86ベースとしたのも使いやすさを重視したため。「x86ではソフトの汎用性が高い上、ハードウェアなども含めたエコシステム(生態系)ができあがっている。『みんなのスーパーコンピュータ』を実現しようとすると、エコシステムを使わざるをえない」(松岡教授)。OSも従来のグリッドと同様にLinuxを採用したが、今後はSolarisやWindowsへの対応も検討する。

photo 酒井善則センター長(上左)、松岡聡教授(上右)、NECの山本雅彦常務(下右)、日本AMDのデイヴィッド・ユーゼ社長(下中央)、サンのダニエル・ミラー社長

 NEC−Sun−AMDは有力な競合に競り勝って今回の受注を獲得した。特にプロセッサ技術のトップ企業を標榜するAMDと、最新のTop500中に自社マシンが4台しかランクインしていないSunにとって、世界最高クラスのグリッドに自社製品が採用される意義は大きい。

 サン・マイクロシステムズのダニエル・ミラー社長は「日本とアジアのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)にとって大きな節目。東工大のキャンパスグリッドは、『Stanford University Network』として設立されたSunの発足当時を思い起こさせる」と喜んだ。SunでOpteronサーバ開発を指揮したアンディ・ベクトルシャイム氏も個人的に新グリッドに関わったという。

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