IEEE(電気電子技術者学会)はこのほど、シャープが1964年から1973年にかけて開発した一連の電卓が世界の電子技術に貢献したとして、電気電子分野の歴史的業績をたたえる「IEEE マイルストーン」に認定した。
12月1日には都内で贈呈式が行われ、同社の町田勝彦社長は「電卓の開発がエレクトロニクス業界に与えた波及効果は大きい。改めて産業の発展に貢献していきたい」と喜びを語った。
IEEE マイルストーンは、電気電子技術分野における歴史的業績をたたえるもので、ボルタの電池やマルコーニの無線電信、フレミングの二極管など65件を認定してきた。日本国内ではこれまで、八木アンテナ、富士山頂レーダー、東海道新幹線、セイコーのクオーツ(水晶発振)時計の4件が認められた。
シャープ製電卓は日本で5件目の認定。対象は1964〜1973年に発売された4製品で、世界初のオールトランジスタ式として発売された「CS-10A」から、世界で初めてCMOS LSIと液晶を搭載してポケットサイズ化した「EL-805」までとなる。
認定には、それまで巨大だった計算機を小型化・省電力化し、個人が使える情報機器としての普及に貢献した点や、ガラス基板上へのCMOS LSIと液晶の搭載など、その後の半導体産業の基盤になった点も評価された。
贈呈式で町田社長は、「民生用としては当時初めて電卓に搭載したLSIはその後『産業のコメ』として成長し、液晶は薄型テレビとして現在最も規模の大きな産業なっている。その後電卓に搭載した太陽電池は、“環境の世紀”と呼ばれる21世紀に大きな事業になろうとしている」と話し、現在のエレクトロニクス産業の3つのキーデバイスが、電卓を起点に発展してきたことを振り返った。
贈呈式にはIEEE名誉会員の佐々木正氏ら、電卓開発に携わった同社の元副社長3人も出席した。町田社長は「電卓開発はシャープにとっても無形の資産を残した。まったく新しいモノを作る創意の遺伝子、新たなデバイス作らないと新たな商品は作らないというスパイラル戦略、電卓競争に勝ち抜いた勇気と知恵だ」と感謝し、「薄型テレビ競争は世界的に厳しいものになるだろうが、この勇気と知恵で乗り切っていきたい」と話した。
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