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» 2005年12月22日 18時06分 UPDATE

サービス障害が浮き彫りにするオンデマンドの危機

Six Apart、del.icio.us、salesforce.comなどで最近続いたサービス障害が、「顧客をオンデマンドサービスから遠ざけることにならなければいいが」とアナリストは懸念している。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 ホスティング型サービス提供企業のシステム障害が頻発する中で、12月20日にsalesforce.comでクラッシュが起きた。一連の災難は、「オンデマンド」ソフトの波が顧客の需要を抑えるかもしれないと示唆している。

 「クリックしては待ち、クリックしては待ち」とチャーリー・クリスタル氏はsalesforce.comでの体験を語る。ソフトメーカーMission ResearchのCEOを務める同氏は、今年に入って6人の従業員のためにsalesforce.comのサブスクリプションに申し込んだ。20日のような全面的なサービス停止はめったにないが、クリスタル氏の推定では、少なくとも週に1回はほとんど使えないくらいにシステムが遅くなるという。

 「結局、営業チームに不満を抱かせてしまった。彼らはログインして売り上げをまとめたいのだ」とクリスタル氏は語る。同氏は近いうちにsalesforce.comのライセンスをキャンセルして、社内で開発した販売管理システムに乗り換える計画だ。

 salesforce.comはサービス障害の根源について堅く口を閉ざしている。同社のコーポレート戦略担当副社長ブルース・フランシス氏は、データベースクラスタの1つにソフト上の問題があったため、約6時間、一部顧客が断続的にサービスにアクセスできなくなったとしている。同社はサービス障害の範囲をまだ把握していないという。

 「実際のところはよく分からない。まだログを調べていない。今回のような場合は、とにかく修正することに集中している」(同氏)

 複数の報告から考えると、今回のサービス障害はsalesforce.comの6年間の歴史の中で最も深刻なようだ。「このサービス障害は、同社自身のシステムへのアクセスを制限したばかりでなく、大半の顧客に影響したと聞いた」とFirst Albanyのアナリスト、マーク・マーフィー氏はリサーチノートの中で述べている。「複数の顧客がこの問題にかなりの不満を持っていることが分かっている」

 salesforce.comのシステムは20日遅くにオンラインに復帰し、現在は正常に動いているとフランシス氏は言う。

 同社のサービス障害の前にも、ほかの「サービスとしてのソフト」提供企業で同様の障害が起きている。Six Apartのブログホスティングサービス「TypePad」は16日に、ストレージのアップグレードの失敗でダウンした。TypePadで全ブログをホスティングしているメジャーリーグのサイトなどが影響を受けた。さらに、Yahoo!が買収したブックマーク共有サービスdel.icio.usは先週、データセンターの停電により数日にわたって問題が起きた。

 Yankee Groupのアナリスト、シェリル・キングストーン氏は、salesforce.comのサービス障害のような散発的な問題が、顧客をオンデマンドサービスから遠ざけることにならなければいいがと語る。内製ソフトは停止しにくいということはほとんどなく、Yankee Groupのパブリッシングシステムは今週、数時間ダウンしたと同氏は語った。

 同氏はsalesforce.comのサービス障害について、「これがある傾向を暗示しているとも、また起きそうだとも言いたくはない。多数のベンダーがこのような状況を防ぐために多額の投資をしている」と話した。

 salesforce.comは大規模アップデートとインフラ刷新を進めているところだ。米国の東海岸と西海岸に、冗長性とフェイルオーバー機能を備えた新しいデータセンターを設置するために5000万ドルを投じている。同社はこの計画を「Mirrorforce」と呼んでいる。

 salesforce.comが11月半ばにカリフォルニアの新しいデータセンターをオンラインにしたときに、一連の統合問題が発生した。次のアップデートも同様に難しいかもしれない。ここ数カ月、顧客に影響する不具合に対処したあるコンサルタントは、salesforce.comのWinter '06アップデートは大変だとしている。salesforce.comはこのアップデートで、東海岸のデータセンターを稼働させ、同社のシステムとサードパーティーのアプリケーションを統合する新プラットフォーム「AppExchange」を立ち上げる。Winter '06は1月9日にデビューの予定だ。

 同社は今、オンデマンドCRM(顧客関係管理)システムで35万1000人の加入者をサポートし、1万8000を超える組織にマネージド販売システムを提供している。同社とカリスマ的なマーク・ベニオフCEOはホスティング型ソフトを伝道してきた草分けだ。ほかの多数のベンダーもこのモデルに飛びついてきたが、salesforce.comほど大規模なシステムを構築したところはまだほとんどない。フランシス氏は、システムの低速化が報告されているのは、同社が顧客の拡大についていくのに苦労していることの表れではないとした。

 「当社のような大規模で複雑なシステムを設計する場合は、常に改善に取り組むことになる」(同氏)

 21日夜の時点で、複数の顧客がsalesforce.comがサービス障害の詳細を公表するのをまだ待っていると話していた。「謝罪があれば良いのだが」とMission Researchのクリスタル氏は話している。

 顧客は情報を待つ間、salesforce.comから奇妙なタイミングでアドバイスを受けた。「オフライン版は常に同期を取ってください」というアドバイスが21日に同社のCRMSuccess.comブログに掲載された。常にデータにアクセスしたいユーザーにとっては、オンデマンドの世界ではバックアップが幸せの鍵になるのかもしれない。

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