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「メールは読まずに想像」「ブログ=付録?」――室井佑月のちょっと変わったネット生活(2/2 ページ)

» 2006年04月28日 15時31分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 でも結局、原稿料の割の良さに負け、書くことした。文章を画面で見るのが好きじゃないから、当初は、原稿を編集者に渡して印刷してもらい、紙の上でチェックしていた。

 2回目の更新を終えたころ、「トラックバック」なるものがあり、読者の反応がリアルタイムに分かるらしいと聞いてから、画面でブログを見るようにした。そしてすっかりハマった。トラックバックの素早い反応は、読者の意見を聞きたいと常に思っている室井さんには嬉しかった。

 「ファンレターだとまず出版社に届くから、自分の目に触れるのが1カ月後だったり、下手すると1年後になっちゃう。ブログならすぐ反応が返ってくるのが楽しい」

 読者の意見が直接聞けるもがいい。「ブログなら、批判が来ても直接読めるじゃない。テレビ局とか雑誌とかだと編集者通してだから……編集者とか局の人に怒られるのも嫌だし、1人で作ってるものじゃないから迷惑かけても嫌」

 ブログの内容は、日々の生活、仕事のこと、息子のことなど。「初めは、テレビとかで話せないことを書こうと思ったの。でもだんだん、自分のことばっかりになった。あんまり世の中の評価とか考えないで書いてる」

 ブログはエッセイに近い? それとも日記?――そう聞くと、室井さんはこう答える。「友達を毎回家に招き入れている感じ」

友達と一緒に、何か作りたい

 ブログという我が家に、見知らぬ“友達”が訪ねて来て、トラックバックという足跡を残していく。その足跡をたどり、室井さんも友達の家を訪問する。

 こんな交流を通じて、メル友もできた。「くだらない悩みとか、メール交換してる」。年齢も性別も不明だが、メール嫌いの室井さんが喜んでメールでき、「親友」と呼べる関係にまで発展しているという。

 友達と一緒に何か作りたい――そう思い、1冊の本を企画した。トラックバックで文章を募集し、傑作をまとめた本だ。テーマは「ラブレター」。老若男女、誰でも参加できて、人の温かい部分が感じられるテーマにしたかった。

 「誰かを愛しているという気持ちは絶対悪いものじゃない。不倫であっても、執着心のあるものでも、誰かを好きだという気持ちはいいものよ。そういうものだけを集めたかった」

 ラブレターはもちろん、思いがこもったものでなくてはならない。しかし、思いがこもり過ぎた手紙は、差出人と受け取り手の2人にしか分からないものになりがちで、本にできない――この矛盾を、ブログが解消してくれた。「(第三者に見せることを前提にした)ブログだから、風穴が空いた。手書きの手紙だったら、もっと重くなったと思う」

 寄せられたラブレターは400余り。室井さんはその1つ1つを読み、講評し、改善点を指摘した。指摘された点を改め、また応募してくる人もいた。書籍に載せられたのは、そのうちごく一部。「全部いいから、絞り切れなくて」、最後は編集者に選んでもらった。

見知らぬ人と作る意味

 「知らない人に話しかけれたら無視しなさい」――子ども達がそう教えられる時代。せめて大人である自分たちは、見知らぬ人を信頼したいと室井さんは言う。

 「以前、駅のホームでけんかしている人を誰も助けず、結局殺されてしまった、って事件あったじゃない。そのホームには100人くらいいたんだから、みんなで取り押さえることはできたと思うの。私がやりたいのはそれと同じこと」

 見知らぬ人同士が集まって作った温かいラブレターの集積。この本が誰かの気持ちをあっため、収益が誰かの役に立てば嬉しいという。本の印税は、ユニセフに寄付する。

 「みんなで作ったみんなの本だから、印税を私だけが受け取るっておかしい。それに、印税分けるのもめんどくさいじゃん」

画像 LOVE LOVE LOVE」(ソフトバンク・クリエイティブ刊)は、全224ページで1000円(税込み)
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