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日本最大の電子論文アーカイブ、NIIが公開

» 2006年06月02日 20時55分 公開
[ITmedia]

 国立情報学研究所(NII)は6月2日、世界の主要な学術雑誌約1000誌・約280万論文の電子アーカイブを国公私立大学の図書館と共同で導入し、公開を始めた。従来のアーカイブと合わせ、約610万論文をネットワーク上で閲覧できる国内最大のアーカイブだとしている。

photo 1918年11月発表・アインシュタインとの「相対性理論批判についての対話」

 導入したのは、ドイツの学術出版社Springerと、イギリスのオックスフォード大学出版局が刊行する学術雑誌の電子アーカイブ。Springerは科学・光学・医学を中心に約200万論文、オックスフォード大出版局は人文科学系など約80万論文で、それぞれ19世紀半ばまでさかのぼれる。

 大学図書館で構成する国立大学図書館協会・公私立大学図書館コンソーシアムと共同で導入した。料金交渉を団体で行い、ライセンス契約は各大学が学生数などに応じて行い、Springerは約100大学、オックスフォード大出版局は約50大学が導入した。

 団体で交渉した結果、料金を安くすることができ、国立大の場合は平均でSpringerが約90万円程度、オックスフォード大出版局が約20万円前後という。契約は更新がなく、永久に有効だ。

 通常のケースでは欧州のサーバにアクセスして閲覧する形になるが、今回はNIIのサーバにデータを格納することで安定的に利用できるようにした。契約した大学の研究者や学生、図書館の一般利用者は論文の本文(PDF形式)をすべて閲覧でき、それ以外の一般ユーザーもNIIの電子ジャーナルリポジトリ「NII-REO」から論文タイトルと抄録を検索可能だ。

photo NIIのアーカイブ内訳

 大学の研究現場では論文の電子化が急速に進んでおり、最新の情報はネットワーク上で入手するのが主流。電子化は1990年代以降がほとんどだが、「ネットワーク上で論文を探して見つからないと、その情報は存在しないと考える風潮もある」(NIIの安達淳教授)。

 新たに導入したアーカイブは世界有数の規模。150年以上の過去までさかのぼって検索でき、「学術価値の高い『知の共有財産』が、過去から現在までインターネットで切れ目なく利用できる」(安達教授)。さらに国内サーバに保存することで、安定的・恒久的な利用も確保できた。

 NIIの坂内正夫所長は「研究活動は学術コンテンツに多くを依存しており、これをどう確保するかが非常に重要。今回は大学図書館との連携で導入を実現できた。今後の論文数の拡大に向けた方向性ができたのでは」と期待している。

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