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NORにはNORの強み──Spansion、下期に黒字化へ

» 2006年06月15日 15時23分 公開
[ITmedia]

 富士通と米AMD合弁のNOR型フラッシュメモリメーカー・米Spansionのバートランド・カンブー社長兼CEOは6月15日、都内で経営戦略を説明し、「ビジネスは順調だ。今年下期には営業黒字に転換するだろう」と話した。会津事業所(福島県会津若松市)に12億ドル程度を投じて新鋭ラインを増設する計画だが、競争と価格下落が厳しいNAND市場とは一線を画し、高付加価値市場に注力する。

photo カンブー社長

 今年第1四半期の売上高5億6200万ドルに対し、第2四半期は約7.6%増の6億500万ドルに拡大する見込み。米NASDAQに株式公開を果たした昨年は営業赤字だったが、カンブー社長は「研究開発費など、投資的な費用の影響」と説明。実質のキャッシュフローを示すEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)ベースでは黒字化しており、今年第1四半期もEBITDAは1億100万ドルの黒字だった。

 第2四半期の売上高のうち、携帯電話向けNORフラッシュ製品「MirrorBit」が4割を占める見通しだ。携帯電話向け市場での同社シェアは2005年に32%で、今年第1四半期には38%に伸ばした。フラッシュメモリ市場全体での同社シェアは、韓国Samsung Electronics、東芝、米Intelに次ぐ4位。

NORにはNORの強み

 フラッシュメモリはNAND型とNOR型に分けられる。NOR型は高速な読み書きが可能で、携帯電話など電子機器のOSや内蔵ソフトの格納などに使用されている。NAND型はNOR型に比べると遅いが、その分安価。そのため携帯プレーヤーやメモリカード、USBメモリなどデータ保存用途に使われている。

 NANDフラッシュ市場は韓国Samsung Electronicsと東芝が2強。だがIntel−Micron連合の参入などで競争が激化し、価格下落ペースもきつい。一方でNORフラッシュ市場は寡占化が進んでいる。

 半導体市場調査会社iSuppliによると、今年第1四半期のNOR市場シェアはSpansionがトップで27.9%。これに2位のIntel(26.7%)、3位の仏伊ST Microelectronics(16.2%)を加えた3社で7割を占めた。Samsung(6.2%)、東芝(3.5%)の2強もNOR市場ではマイナープレーヤーだ。

 Spansionの「MirrorBit」は、従来のNOR型と比べ工程を4割削減できる上、チップサイズもNANDと同等で、「コスト的にもNANDと対等にできる」(カンブー社長)のが特徴。さらに、MirrorBitをベースにインタフェースをNANDと互換化するなどした「ORNAND」製品も投入。NORをベースにNAND的な用途にも対応できる製品として、携帯電話用の大容量SIMカードなどで普及を目指す。

 カンブー社長は、携帯電話やデジタル家電、車載端末などの「インテグレート」市場の規模は2010年に150億ドルと予想し、そのうちNORが100億ドル、NANDが50億ドルと想定。同市場では、SamsungなどのNANDが強い「コモディティー」(日用品)製品と異なり、高い信頼性などが要求される。カンブー社長は「Spansionには特別な技術の強みがある。この市場への新規参入は難しくなっていくだろう」と自信を見せた。

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