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“稼げる”口コミサイトの作り方 「4travel」に聞く

» 2006年08月04日 18時03分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ユーザーがコンテンツを作るCGM(Consumer Generated Media)がWeb2.0時代のキーワードとして脚光を浴び、CGM型と呼ばれるサービスに各社が参入している。だがCGMは一般的に広告が入りにくいとされており、ビジネスモデルに課題をかかえる。

画像 4travel

 2004年1月にオープンしたCGM型旅行情報サイト「4travel」は、着実に収益を上げている口コミメディアだ。月間ユニークユーザーは約200万人で、約2万人が7万以上の旅行記を登録している。

 主な収入源は、バナーやアフィリエイトなどの広告で、コンテンツやシステムの他社への外販も行っている。昨年度の売上高は、前年度比3.3倍の1億4500万円、経常利益は8900万円と、利益率も飛び抜けている。

 津田全泰社長(30)は「今CGMと呼ばれているものの多くは、MediaになりきれていないCG“C”(Consumer Generated “Contents”)だ」と指摘。ユーザーが作ったコンテンツをメディア化する仕組みを作ることが、収益化のカギだと語る。

稼げるCGM

 津田社長はメディアを「目的を持って情報収集に訪れる人に対して、端的に情報発信してくれる場所」と定義。「インプット側の視点ではなく、アウトプット側の視点から設計すべき」と持論を語る。

 メディアを作るには、読者や広告主に対する見せ方を考えることが先決。それを決めた上で、どんな情報をインプットしてもらう必要があるか考え、情報発信ツールをユーザーに提供する、という順序だ。

 4travelは、サイト設計時に、旅行先地域ごとのページを作ろうと計画した。その上で旅行記入力フォームの作成を開始。フォームに地域を選ぶタブを付けた。

画像 渡航地図

 コンテンツを数多く集めるために、ユーザーに「発信したい」と思ってもらえる仕組みも必要だ。ただ旅行記を書いてくださいと“丸投げ”するのではなく、投稿フォームを工夫したり、旅行記を書いた地域を塗りつぶせる「渡航地図」を提供するなど、発信の意欲を高める仕組みも用意した。

 こういった工夫の結果、充実した口コミ情報が地域ごとに集まるサイトが完成。旅行を計画しているユーザーが生の情報を効率よく集められ、旅行を売りたい代理店も地域ごとのターゲットにリーチしやすく、旅行者側も「旅行記や写真を載せたい」と思えるメディアに育ったという。

 一方で、CGMとして今脚光を浴びている、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の日記などは、テーマを区切らない雑多な情報の集積。見せ方よりも発信に重点が置かれているため、情報が整理されておらず、読者や広告主に対してメディアとしての魅力は打ち出しづらい。

旅行記サイトに広告集まる理由

 ユーザーが自由にコンテンツを作るCGMは、「何が書かれるか分からないメディアには広告を出したくない」と、ブランドを気にする大手広告主から敬遠されがちだ(関連記事参照)

 だが旅行記は、一般商品の口コミサイトと異なり、楽しい思い出を書き残す人が大半。「旅行記を“自分の空間”ととらえる人が多い」といい、場を汚すマイナスの書き込みはしたがらないという。このため、広告主となる旅行会社や航空会社などの悪評が書かれることも少なく、“優秀”な広告媒体になり得る。

大手もサイト強化急ぐが

画像 「新しい技術やサービスは、一般のネットユーザーが慣れてから導入する」と津田社長。ユーザーの質問にユーザーが答えるQ&Aシステムも最近取り入れたが、すぐに人気サービスに育った

 最近は、旅行関連情報サービスの紙媒体からの移行や、ネット媒体の拡充が相次いでいる。リクルートはこのほど、雑誌「AB・ROAD」を休刊し、ネットに完全移行すると発表。Yahoo!や楽天も、旅行関連のサービス合戦で火花を散らす。

 こういった大手が今後、サイトに旅行記の機能を付け、CGM型に移行してくることも考えられる。だが「大手ポータルはすでにブログを持っている。既存サービスを無視して旅行に特化したブログを始めるとは考えにくく、ブログに旅行カテゴリーを付ける、ぐらいの中途半端なものしかできないだろう」と津田社長は余裕の構えだ。

 また同社は、コンテンツや旅行商品は作らず、ユーザーが発信した情報を“見せる”メディアに徹する。特定の旅行会社や航空会社などと強い結びつきを持つポータルや旅行会社系サイトと異なり、中立の立場でいられることも強みだ。

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