しかし、ノートPCから発火したという幾つかのオンラインでの報告を見て、同委員会のフォーカスを今まで以上にバッテリーに向ける必要を痛切に感じた、と同氏は話している。
この夏、多くのノートPCの発火事故が報告された。大阪で開催されたビジネスカンファレンスで起きたDellマシンの出火事故などは今ではすっかり有名だ。
すべての発火事故がDellマシンによるものではない、とグロッソ氏は強調する。最近では、ソニー製ノートPCでも出火事故が報告されている。
グロッソ氏は、バッテリーに関して「取り組もうとしていた仕事を急ぐ必要があるようだ」とメンバーに伝えた。特にApple、HP、Lenovoがサポートを表明したという。
確かに、Dellは410万台をリコールしたが、この数字は同社のノートPC出荷台数の約15%にしか相当しない。それでもバッテリーに関する最近の問題を受け、一部のアナリストは安全基準の設置は必須だと主張している。
調査会社IDCのアナリスト、リチャード・シム氏は、「バッテリー向けの安全規格が設けられていない事実に少し驚いている」と言う。
「安全なバッテリー規格は、この業界に大きな意味をもたらす。コンシューマーにとっても大いに役立つだろう」(シム氏)
だが、バッテリーの安全性に対する一般からの関心が高まり、共通規格の策定に向けた努力はなされているが、委員会は新たな規定をバッテリーサプライヤーなどのPC部品メーカーに強要することはできない。
その代わり、同委員会はメーカー各社に手を組むよう奨励し、各社で使用する部品が委員会の規定を満たすよう要求する考えだ。
ネットワークケーブルの接続などの手法を定義するPC業界技術標準は遍在するが、部品の製造方法に関する規格はほとんどない、とグロッソ氏は指摘する。
部品メーカーは競合を理由に情報の共有を嫌う傾向にある。
彼らの中でも特に閉鎖的なのが、リチウムイオンセルメーカーだという。
バッテリー製造の基礎は良く知られているが、リチウムイオンセルの具体的な製造に関しては長い間ベールに包まれたままだ。
セルメーカー各社は、社外秘の化学素材の組み合わせに関して固く口を閉ざしていると言われる。このため彼らを、競争市場を均等にするであろう1つの標準に向けることは無理があるかもしれない。
ただしグロッソ氏によれば、同委員会がメーカー各社を関与させるのは策定作業の第2段階であり、このレビュー期間中に提案した詳細に対するレスポンスを募るという。
通常は、「最初か2番目のドラフトをユーザーコミュニティーを通じて作成した後に(メーカーに)参加してもらう。彼らには大きな影響が出るだろう。しかし委員会としては、『これはできる、これはできない』という彼らの意見に縛られたくない。過去から今までずっと押し通されてきた『これが今までのやり方だから』という業界通念を根本的に変革していきたい」(同氏)
ただし、DellやHPなどのメーカーが、自発的に委員会の規格をバッテリーメーカーとの取引条件として義務付けることはできる。
バッテリーメーカーは関与する可能性があるため、同委員会の規定については事前に認識しておくべきだ。
「規格は複雑さを軽減すると同時に安全性と信頼性を高めることが分かっている」とグロッソ氏。
「問題に対する責任のコストは、特定の安全面に関する技術を共有することよりもはるかに高くつく。バッテリーセルメーカーは、こうした技術を自社の知的財産と考えるかもしれないが。」
IDCのシム氏は、PCメーカーが団結すれば、バッテリーメーカーの反応に当然影響を及ぼすだろうと言う。
だが、委員会の会合がまだ開かれていないため、今後どうなるかについては分からない点もある。
「現在はまだ未知の要素が多数あると思う。これは私たちにとって新しい分野であり、だからこそ初会合を迎え、いかに協力し合うか、最初に成功し得る最大のチャンスはどこにあるかを話し合うことに大いに期待している」とグロッソ氏は語っている。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR