オーマイニュース・インターナショナルは8月28日、市民参加型ネット新聞「オーマイニュース 日本版」を公開した。「市民記者」として登録した一般ユーザーと、同社に所属するプロの記者の記事を掲載するネット新聞で、既存のマスメディアやネットコミュニティーの言論とは異なるスタンスで情報を発信していく方針だ。
オーマイニュースは、韓国Ohmynewsが運営するネット新聞「OhmyNews」の日本版。韓国版の市民記者は4万人で、2002年の大統領選では盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補の当選に大きな影響力を持ったと言われおり、既存メディアと同等の影響力を持つとされる。
日本版を運営するオーマイニュース・インターナショナルは、ソフトバンクとOhmynewsの合弁会社。ジャーナリストの鳥越俊太郎さんを編集長に据え、元新聞記者などが運営に携わる。
「最小限の編集と最大限の事実確認」「責任ある参加」を編集方針に掲げる。実名で記者登録すれば誰でも市民記者になれるが、記事は編集部で事実確認や校正を行った後で掲載する。
市民記者の募集は7月21日から始め、8月28日までに、14歳から81歳まで、1145人(男性8割、女性2割)の応募があったという。坂本龍一さんの娘・坂本美雨さんなど有名人も記者として参加している。
掲載記事には原稿料を支払う。トップ記事(1本)は1本2000円、トップ直下に入る記事(3本)は同1000円、それ以外は300円。どの記事をトップに選ぶかはその時々によって異なるが、市民記者の記事を中心にしつつ、プロ記者が書いた大きなニュースや、既存メディアとは異なったスタンスのニュースがある場合はそれを優先するなど、臨機応変に対応する。
原則として全記事を掲載するが、事実と大きく異なる記事や、あまりに読みにくい記事などは書き直してもらうか、ボツ原稿として「ニュースのたね」というコーナーに無編集で掲載する。記事の採否は「メディアとしての常識で判断する」(鳥越編集長)としている。
創刊までに集まった記事は50〜60本。創刊後に、ソフトバンクの孫正義社長が書いた記事を含む7本の記事が寄せられたという。記事は順次編集し、掲載していく。
編集責任はオーマイニュースに帰属し、事実確認も責任をもって行うとしている。ちなみに韓国Ohmynewsでは、創刊から7年で、市民記者が書いたニュースに関する訴訟が6〜7件あったという。
2ちゃんねるやブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の日記など、個人が自由に発言できる場はネット上には多いが、オーマイニュースは「実名による本音記事」が集まる場にすることで、これらと差別化していく。
鳥越編集長は「国会でも会社の会議でも、本音は終わった後で別の場所で言っている人が多い。テレビの匿名インタビューのような、モザイクや“首なし”の発言ではなく、名前を出して本音を言う文化を日本に定着させたい」と意気込みを語る。
実名を出して登録した市民記者は1000人を越え、「予想よりもはるかに多かった。日本も捨てたもんじゃない、と思った」と鳥越編集長は安心した表情だ。市民記者は今年中に5000人、2年以内に韓国と同等の4万人を目指す。市民記者の交流会なども行っていく。
オーマイニュースは政治的・思想的中立を守るとしており、市民記者は、権力からも資本からも編集部からも独立している、と表明している。
ただ、事前にオープンしていたブログで、同社編集者が書く記事に思想的な偏りがあるという指摘もあった。これについて鳥越編集長は「編集部にもいろんな意見があり、編集者も1人の記者として意見を表明することもある。評価する際に偏っていると言う人がいるのは自由で、仕方がないこと」と語り、今後市民記者による記事が増えていく中でバランスが取れていくだろうという見方を示した。
収益はバナー広告などでまかなう計画で、現在、トップページには、ボーダフォン携帯のソフトバンクモデルのバナー広告が掲載されている。
「資本からの自由というスタンスと、ソフトバンクの資本が入り、孫社長の記事を載せるという事実の整合性がとれない」という質問も出たが、鳥越編集長は「孫社長には『ソフトバンクの不祥事も書く』と言ってある。資本に縛られるならやらない方がまし」とし、スポンサーには左右されない姿勢を強調した。
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