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「MS Officeにそっくり」が売り 中国から4980円のオフィスソフト

» 2006年09月21日 18時55分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 中国の大手ソフトメーカー・キングソフト(金山軟件)の日本法人・キングソフトは9月21日、マイクロソフトの「Word」「Excel」「PowerPoint」と操作性やファイル互換性を最大限に近づけたという統合オフィスソフト「Kingsoft Office 2007」を発表した。11月1日からオープンβとして無償公開し、来年1月に製品版を4980円(税込み、以下同)ダウンロード方式のみで発売する。

 ワープロソフト「Kingsoft Writer」、表計算ソフト「Kingsoft Spreadsheets」、プレゼンテーションソフト「Kingsoft Presentation」のセット。「価格はマイクロソフトOfficeの10分の1」(日本法人の広沢一郎社長)だが、MS Office製品の機能の約8割は利用できるという。

 WordやExcel、PowerPointで作成した資料が、他社のオフィスソフトよりも忠実に表示できるといい、「.doc」「.xls」「.ppt」形式で保存も可能。ユーザーインタフェースも極力似せており、MS Officeに慣れたユーザーなら迷いなく使えるとしている。

画像画像 Wordファイルをズレなく表示できる(左)。ユーザーインタフェースもそっくり

 PDF出力機能や、ファイルをタブで切り替えられる機能などを備えた。ダウンロードサイズは31Mバイト、インストール時は87Mバイトと、容量もコンパクトに抑えている。

 ワープロと表計算だけのセットも3480円で発売。各ソフト単体ならそれぞれ1980円で購入できる。

「そっくりにする以外、方法がない」

 同社はオフィスソフト開発で18年の歴史を持つ(関連記事参照)。中国語オフィスソフト「WPS」は1988年、MS-DOS向けに初代を発売。1994年には中国語専用オフィスソフト市場の90%を占めていた。だが1995年からマイクロソフトがWindowsとOfficeをバンドル販売して以降、WPSのシェアは10%台にまで急落したという。

画像 「中国本社は社運を賭けている」と広沢氏

 新製品は、「中国本社が社運を賭けた」(広沢社長)といい、マイクロソフト製品にあえて似せることでシェア奪還を狙う。中国では昨年9月に「WPS Office 2005」として発売。IT専門誌から「キングソフトのロゴを張ってある以外、見た目はほぼMS Officeと同じ」などと評され、オフィスソフト市場でのシェアも20.22%まで回復した。

 「最初から似せようとしたのではないが、ここまで進んだ独占を打破するには互換路線しかない。MSの攻勢でシェアが激減した上での苦渋の策。独自機能を付けたところでMS Officeとの“違い”としか見てもらえず、ユーザーにとっても不便」――広沢社長は“Officeそっくり”にするしかなかった背景をこう説明する。特許や著作権については、弁理士に相談し、問題ないことを確認済みという。

 中国本社のレイ・ジュンCEOは「独占市場は技術の進化を阻害する。Microsoftに全面的に挑戦したい」と語る。中国政府も支援しており、中国政府機関の56%がWPS Officeを使っているという。会見には中国大使館の科学技術担当者も駆けつけ「キングソフトは中国の情報産業の代表選手の1つ。寡占状態のオフィスソフト市場に風穴を開けたい」などと語った。

セキュリティソフトは無期限ライセンス版も

 年間利用料980円と安価なセキュリティソフト新版「InternetSecurity2007」も、9月21日からダウンロード販売を始めた。最初の6カ月間は無料で利用できる。

 従来のライセンスは1年〜5年までの1年刻みだったが、新たに、無期限ライセンスを3900円(税込み)で販売する。同ライセンスは、年内は1980円に割り引くキャンペーンを行う。

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