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「著作権保護期間の延長を」――権利者団体が要望書 ネット時代も意識

» 2006年09月22日 21時51分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 16の著作権管理団体で構成する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は9月22日、著作権の保護期間を、著作者の死後50年から同70年に延長するよう、文化庁に要望書を提出した。「著作権がネット社会の障害になるという考え方もあるが、そうならないよう努力したい」――同日開いた会見では、保護期間延長を強く訴えつつも、ネットを意識した慎重な発言も目立った。

画像 各団体の代表者が出席

 日本の著作権法では、一般著作物の著作権・著作隣接権は著作者の死後50年間保護される。しかし米国や英国、フランスなど欧米先進国の多くでは70年間。この20年の差は、コンテンツが国際的流通する時代にそぐわないとと協議会は訴える。

 50年という年限は、著作権の国際条約・ベルヌ条約で決まっている最低限の保護期間で、「著作権は子孫2世代にわたり保護されるべき」という考え方によるという。欧米諸国は、平均寿命が延びていることなどを理由に、70年に延長してきた経緯がある。

 「日本の作家は20年分の権利をはく奪されており、創作意欲の減退につながる。海外の著作者からは『なんで日本は保護期間が短いんだ』と言われ、日本は著作物を大切にしない国だと思われてしまう」――協議会議長で、日本文芸家協会の三田誠広氏はこう訴える。

画像 松本零士さんは「模倣や応用、改造は作品のうちに入らない。世界で自分1人しか書けないという作品を作れてやっと創作者」などと持論を展開

 漫画家の松本零士さんは「著作者が生涯をかけて作ったものの権利が、50年で打ち切られるのは耐え難い。漫画やアニメは世界共通の文化のはずなのに、権利保護だけは年限の違い、という怪奇現象が起きている」と強い調子で語った。

 政府が推進する知財立国戦略にもそぐわないとも主張する。「保護期間が短いと、それだけ日本の財産が失われることになる。日本のアニメや漫画、文学作品が世界進出する中、世界標準に合わせることが必要」(三田氏)

 三田氏からは、ネットを意識した発言もあった。著作権の保護がコンテンツのパブリックドメイン化を阻害するのでは、という意見があることに触れ、「作家はできるだけ多くの人に作品を届けたいと考えており、著作権が切れた文学作品を無料公開する『青空文庫』のような試みはありがたい。著作権保護の年限が延長されても、そういった試みがこれまで通り円滑に運営できるよう協力していきたい」と語った。

 また「ネット事業者にとって著作権で最も問題になるのは、利用許諾に手間やコストがかかること」と指摘。「現行法内で許諾を取りやすくするシステムを作っていくことがわれわれの使命だ。事業者と著作権保護団体との話し合いの場なども作っていきたい」と配慮を見せた。

 その一方で、「ネットの話は経済的な面ばかりに目がいくことが多いが、適切な保護で創作意欲をかき立てることも必要。ネット上に公開した作品が50年後に評判になる可能性もあり、その時に著作権がすべて切れてしまっているのはおかしい」と保護期間延長を重ねて主張した。

 また、日本は太平洋戦争敗戦時に、連合国の著作物について、保護期間に戦争期間(10年)を加算する「戦時加算」が義務づけられた。要望書では戦時加算の撤廃もあわせて提案。国際的な平等化を求めていく。

 協議会は、日本文芸家協会、日本シナリオ作家協会、日本児童文芸家協会、日本写真著作権協会、日本音楽作家団体協議会、音楽出版社協会、日本レコード協会、日本脚本家連盟、日本児童文学者協会、日本漫画家協会、日本美術著作権連合、日本写真家ユニオン、日本音楽著作権協会、日本芸能実演家団体協議会、日本芸能実演家団体協議会、日本歌手協会で構成されている。

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