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恐怖のIT屋敷へようこそマネジャーの教科書(2/3 ページ)

» 2006年11月01日 17時44分 公開
[Deborah Rothberg,eWEEK]
eWEEK

憂鬱なデータ変換の夜明け

 上級IT幹部が新興企業に戦略的ガイダンスを提供するという活動を行っている非営利組織、The CIO Collectiveの創業者/ディレクターで、「The System is a Mirror」(John Wiley & Sons刊、2006年)の著者でもあるステュアート・ロビンズ氏の場合、10年近く前に同氏にとって最悪の職業的悪夢が現実のものとなった。同氏のグループが、非常に古いバージョンのSybaseを当時の最新バージョンに移行しようとした時のことだった。

 「6つのバージョンを一気に飛び超そうとしたのだ(4.xから11.xへ)。取引していたサードパーティーベンダーが、Scopusのデータの有用性を維持するには、それしか方法がないと断言したからだ。Scopusを利用するにはSybaseのアップグレードが必要だったのだ」とロビンズ氏は話す。

 そこからが大変だった……。

 「非常に多くの問題があったため、前日の作業によって生じた問題の解決に専念するトリアージ(優先順位決定)チームが必要になった。そして予定より1年以上遅れ、予算を何万ドルもオーバーして、何とかデータをバックトラックしてSAPに移行した」(ロビンズ氏)

 ロビンズ氏によると、同僚から聞いた悲惨なプロジェクトの大多数は、同氏がSybaseで経験した惨事と同じく、カスタムデータ変換が原因だったという。

 「これは絶対にうまくいかず、法律で禁止すべきだ。ベンダーが何を約束しようが、重要な社内データが関係する大規模なベンダー変更を行う場合は、安価な派遣スタッフを利用して手作業でデータを再入力すべきだ」(同氏)

恐怖のゼロ除算の夜

 スティーブンス工科大学技術経営学部の副学部長を務めるジェリー・ルフトマン教授は、1976年のカーター候補対フォード候補の大統領選当時、大手TVネットワークをサポートする若いIBMシステムエンジニアだった。惨事が起きたのはその時だった。

 「古い昔のことだが、あのころも今日と同じく、だれもがテレビに釘付けになって(カラーテレビはあったが、チャンネルを変えるのには立ち上がらなければならなかった)、選挙結果を見守っていた。TVネットワーク各社は、他社よりも早く正確に選挙結果を予想する競争で必死になっていた」とルフトマン氏は話す。

 午後9時のピークタイムに突然、ルフトマン氏が担当していたネットワークで3台のメインフレーム(1台が本業務用で2台がバックアップ)のそれぞれが、5秒以下の間隔で次々とクラッシュしたのだ。

 「IBMとTVネットワークのチームのスタッフは最初、恐怖と当惑で互いに顔を見合わせた。TVモニターを見ると、当社のニュースキャスターが動揺を抑えているのが分かった。彼らは端末を見ながら、少しも不安を表に出すことなく開票状況の中継を続けた」とルフトマン氏は振り返る。

 キャスターたちが記憶を頼りに選挙結果を復唱する間、ルフトマン氏のチームは全員、システムを早急に復旧しようと必死になって障害の原因を調べた。

 「5分もたたないうちにコアダンプがプリントアウトされ、われわれは問題の分析を進めた。そのころ西南部で候補者が1人しかいない無競争の地方選挙が行われていた。そのせいで『ゼロ除算』が発生し、システムがそれに対応できなかったのだ」とルフトマン氏は話す。

 時間は刻々と過ぎ、キャスターたちが選挙結果を繰り返す中、誰かが素晴らしいアイデアを思いついた。その地方選挙に架空の候補者を追加し、その候補者に1票を与えるという方法だった。

 「これがうまくいった。3台のコンピュータは復旧し、キャスターの端末画面には最新情報が表示された。そしてカーター氏の勝利を最初に予測したのも、最も正確な予測を出したのもわれわれだった」(同氏)

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