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「著作物の利用許諾、ネットで簡易に」 著作権保護期間延長派が計画(2/2 ページ)

» 2007年01月25日 22時02分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 三田さんは、著作権保護期間を70年以上としている国のリストを提示。英国や米国、フランスなど欧米諸国の多くが70年としていると指摘し、「文化的コンテンツを輸出入している国は70年がほとんど。75年や100年の国もある」と語り、「反対派の主張はあまり根拠がないのではないか」とした。

「戦時加算は撤廃にも延長が必要」

 日本は太平洋戦争敗戦時に、連合国の著作物について、保護期間に戦争期間(10年)を加算する「戦時加算」が義務づけられた。三田さんは「日本と同様に戦争に負けたドイツやイタリアには戦時加算はないし、60年以上前に終わった戦争の傷跡を引きずるのはおかしい。早急に解決せねばならない問題」としながらも、「日本の保護期間が50年のままだと申し入れをすることもできない」とし、まずは70年に延長して対等の立場に立つことが先決とした。

 「先に譲歩した上で、相手からの譲歩も引き出そうとするのは、うまい交渉とは言えない」という指摘もあるが、三田さんは「EUは圏内の保護期間を70年に統一しつつある。欧米諸国も、日本だけ保護期間が異なるのはやめてほしい、と思っているだろう」と推測。「70年にした際、戦後加算10年も残るとは考えにくい」とした。

 JASRACは今後開かれる著作権協会国際連合(CISAC)の会合で、戦時加算について各国の音楽著作権管理団体に問いかける予定だ。

「創作物の価値」にも視点を

 会見には賛成派団体の幹部が出席。それぞれが意見を述べた。

 日本音楽作家団体協議会の川口真理事長は「著作権が流通の邪魔になっている“悪者説”もあるが、経済的な合理性ばかりを見ていてよいのかな、と思う。作家のインセンティブや、創作物をみんながどう評価するかも考えるべき。私は世の中に音楽があふれてほしいし、そのために音楽著作権がしっかりする必要がある」とした。

 日本作詞家協会のいではく理事は「反対側の論点は、使う側の利便性に重点を置いて語られているが、創作物の価値観をどう見るのかというところも語っていただきたい、と思っている。タダだから使う、有料なら使わないというのは、その作品の価値を認めていないということでは。作った側からすると、使用料払いたくないなら使わなくていいじゃないか、と思う。利便性だけで語らないで欲しい」とした。

 さらに「50年で十分保護しているだろうという意見は、作った側が言うなら納得できれば、使う側の人に言って欲しくない。そんな権利は誰にあるんだ」とし、「パブリックドメインになると、作詞した歌をパロディされるとか、安易な使われ方、不快な使われれ方をすることも十分考えられる。自分の歌をパロディにはしてほしくないと思うから未来永劫に守ってほしい。それが無理ならできるだけ長くして欲しい」と語った。

 JASRACの平尾昌晃理事(作曲家)は「人から『お前は(著作権料の支払いが死後も続くため)孫まで金がいくんだからいいじゃないか』と言われることもあるが、ぼくらはそんなに簡単に曲を書いている訳じゃない。それを盗作とは言わないまでも簡単に真似されたり……」と不快感をあらわにし、「著作者の権利は守られないといけない」と語った。

 JASRACの加藤衛常務理事は「50年を70年にする、というだけでなく、その背景にあるものをすべて俎上(そじょう)にあげたい。無理矢理延長するつもりはないが、延長が遅くなると、不利益を被る人が増えてしまう」と語った。

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