ソニーが1月30日に発表した2006年第3四半期(10月〜12月)の連結決算によると、ゲーム分野の売上高は拡大した一方、損益面では542億円の営業赤字(前年同期は678億円の営業利益)となった。プレイステーション3(PS3)の「戦略的な価格設定」(同社)が損益を圧迫したほか、PSPハードが落ち込んだ。PS3の「生産出荷台数」は184万台で、目標としていた200万台には届かなかった。
生産出荷台数とは工場から出荷された数で、実際の販売数ではない。任天堂と同様に販売台数を公表するべきではという指摘もあるが、同社の大根田伸行CFOは「生産出荷台数で発表しているのは、数をアキュレート(正確)に把握できるから」と説明した。
ゲーム分野の売上高は4428億円と、前年同期比5.6%増。PS3のハード・ソフトが増収に貢献したが、PSPハードやPS2ハードは減収。損益面では、PS3の価格引き下げやPS3立ち上げ費用がかさんで大幅損失となった。
ハードの生産出荷台数はPS3が184万台、プレイステーション2(PS2)が前年同期比23%減の411万台、PSPが同72%減の176万台で、PSPの落ち込みが激しい。
ソフトはPS3向けで520万本出荷。PSP向けは前年同期比24%増の2120万本、PS2向けは同16%減の7800万本出荷。PS2の落ち込みをPS3、PSPでカバーし切れず、ソフト全体では減収となっている。
ハードとソフトの生産出荷台数は以下の通り。
ハード | 2006年3Q | 2005年3Q | 前年同期比 |
---|---|---|---|
PS3 | 184万台 | - | - |
PSP | 176万台 | 622万台 | −72% |
PS2 | 411万台 | 536万台 | −23% |
ソフト | 2006年3Q | 2005年3Q | 前年同期比 |
---|---|---|---|
PS3 | 520万本 | - | - |
PSP | 2120万本 | 1710万本 | +24% |
PS2 | 7800万本 | 9300万本 | −16% |
同社はゲーム機やゲームソフトについて生産出荷数ベースで開示しているが、「工場出しの時点でカウントする」(大根田CFO)ため、実際の販売台数や収益に与える影響が分かりづらいという指摘もある。ライバルの任天堂は販売台数ベースで開示している。
大根田CFOは「生産出荷だとアキュレートな数字がとらえられる。セルスルーだと調査によって数字が変わってしまう」と生産出荷で開示するメリットを説明。今後販売台数べースでの発表を行うかについては「お約束できない」とした。
PS3は他社ゲーム機との競合で苦戦しているが、大根田CFOは「PS3はゲーム以上の機能を持っている。コンテンツやアプリケーションを拡大し、それがうまく伸びていけば十分に戦っていける」とコメント。ネット接続しているユーザーは50万人以上おり、ネットからコンテンツをダウンロードできる「グランツーリスモHD」は30万ダウンロードあったという。
他社ゲーム機はPS3よりも低価格だが、値下げについては「2〜3年後ならあるかもしれないが、当面は考えていない」(大根田CFO)とした。
PS3の損益は、来期に改善する見込みとしている。CELLの集積度の向上や部品点数削減、半導体の歩留まり向上でコストを下げる計画だ。CELLについては、当初は90ナノメートルプロセスで生産していたが、すでに65ナノメートル版の量産も始まっているという。
PSPのてこ入れ策としては「いくつかの案を検討している。PSPをあきらめるつもりはない」(大根田CFO)とした。また「PSPの72%減は生産出荷台数ベースで販売ではない。特に欧米では好調に売れている」と湯原隆男SVPがコメントした。
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