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オープンソース化に満足?――Javaの父ゴスリング氏に聞く(2/2 ページ)

» 2007年05月16日 18時55分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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 ある程度のレベルでは、Web2.0がどう進化しようと変わりません。Web2.0という言葉は嫌いなんです。誰もその意味を知らないのですから。ですが、そこで使われている中核技術はJavaScriptです。定義がバラバラになっているので、こうなってしまったのはいささか残念です。

 当社がJavaの検証などに厳しいと批判する人もいます。厳しい検証がなぜ重要かというと、それを示す大きな反例の1つとして、JavaScriptのたどった道が挙げられます。平均的なJavaScriptのコードを見ると、やりたいことにごくわずかな時間しか費やしていません。残りの時間は「Internet Explorerでこれを動かす場合は、このやり方でやらなければならない。Safari、Opera、Firefoxなら、別のやり方でやらなければならない」といったことに費やしているのです。

 それから、すべての違いを統一しようとするライブラリが出てくる段階に達します。そしてライブラリのライブラリのようなものが登場して、深いメタ循環になってしまいます。こうした複雑な構造のすべてのピースは、プラットフォームがごちゃごちゃになっているという事実に対処しようとするためだけのものなのです。

―― JavaFXではそのような状況に陥らないのでしょうか?

ゴスリング そこにはJavaScriptはありません。JavaFXは基本的にJava VM(仮想マシン)向けにコンパイルする言語です。つまり、まったく新しい言語、まったく新しいAPIではないのです。SwingとJava2Dを推進するおもしろい方法です。

 ですからJavaプラットフォームに付いてくるレンダリングライブラリ、アニメーション機能などはすべてそこにあります。これは全部、JavaScriptにはないものです。

―― SunとJavaのオープンソースの方向性には満足していますか? あなたが抵抗したという噂も前にありましたが。グラハム・ハミルトン氏(Sunの前Javaリードアーキテクト)は、それが原因で辞めたと言われています。Sunの取った路線に不満はないですか?

ゴスリング これまでの進展には満足しています。当社は最初から、これをほぼオープンソースプロジェクトとして進めてきました。大きな問題は相互運用性と一貫性に関連したものです。それから、オープンソース世界に関して、多くのプロジェクトが分裂の道をたどっていることをわたしが心配しているということです。

 多くのプロジェクトが、もっともな理由もなく、2万7000もの異なるバージョンに分かれてしまっています。

 それに、当社が採用してきたライセンスは大体、テストを義務付けたMozillaライセンスのようなものでした。ですが、開発者コミュニティーが十分に強力になり、彼らが一貫性、相互運用性、品質に関して、市場のプレッシャーによってものごとがうまく進むと強く感じる段階に来たようです。ですから不正を行おうとすると、市場で問題になるでしょう。

―― SunのJavaオープンソース化計画についての話が盛り上がり始めたときに、わたしは、SunはJavaをオープンソース化するつもりで、わたしは構わないというコラムを書きましたが……。

ゴスリング 大多数の人にとって、オープンソース化はすごいことではありません。実際、オープンソース化にネガティブな懸念を持つ人の方がたくさんいました。当社の最大の問題はおそらく、世界のもう半分にパニックを起こさせないことでした。

 人々がJavaに関して評価していた点の1つが、一貫性と相互運用性、そして検証だったからです。NASDAQのようにJavaを中核で走らせている組織があるという事実が……。

―― 検証の問題について、「利用範囲」制限なしでTCK(互換性テストキット)に自由にアクセスできるようにしてほしいというApacheの主張は正当だと思いますか?

ゴスリング わたしにはApacheの不満の正確なところは分かりません。それについてはサイモン(・フィップス氏。Sunのチーフオープンソースオフィサー)と話した方がいいかもしれません。当社がオープンソース化に関して抱えていた問題の1つは、人々がよくオープンソースコミュニティーを1つの幸せな大家族として一般化しようとしますが、実際には敵対する国家の群れだということです。彼らは皆防壁を築き、石を投げ合っています。

―― それは完ぺきな説明ですね。実際に戦いがあるのですから。

ゴスリング 現実に戦いが起きています。オープンソースコミュニティーに対して友好的になるのは難しいことです。ある陣営に対して友好的になれば、ほかの陣営から敵と見なされます。われわれが困っているのは、われわれはApacheの人たちが好きだけれど、どちらかというとGPLの人たちも好きだったということです。Apache陣営は、GPLを採用したことでわれわれに腹を立てていました。ですが、何かを選ばなければならなかったのです。Apacheライセンスを選んでいたら、GPL陣営の人たちはわれわれに腹を立てたでしょう(後編に続く)

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