資本・業務提携を発表したパイオニアとシャープの両社長が9月20日に記者会見した。パイオニアの須藤民彦社長は、シャープから液晶パネルを調達して液晶テレビ市場に参入する方針を示したが、シャープの片山幹雄社長は、プラズマ参入について「多分ない」と話し、パイオニアの音響技術などを自社製品に組み込んでいきたいとした。
松下電器産業の子会社だった日本ビクターがケンウッドとの経営統合を発表するなど、家電業界で再編の動きが進んでいる。家電業界は、デジタル化で開発コストがかさむ上、商品の価格下落も激しい。片山・須藤社長とも「経営環境が厳しい」という見方で一致。提携で生き残りを模索していきたいと話す。
片山社長は「グローバル競争が激しく、技術の進化が早い。1年先どころか半年、3カ月先も予想がつかない。必要な技術を自社だけでまかなおうとすると、時間も費用もかかって商機を逃してしまう。自社にない技術やノウハウを持ち、相性のいい相手と組みたかった」とパイオニアとの提携を決めた背景を述べる。
パイオニアの須藤社長は「厳しい経営環境の中、いい提携先が欲しいとかねてから考えていた」という。提携の話が出たのは、同社の次世代車載ディスプレイにシャープの液晶を採用した際のあいさつの席。「どちらからともなく自然発生的に」(須藤社長)話が進んだという。
具体的な提携内容はこれから詰めるが、パイオニアはシャープから液晶パネルを調達し、液晶テレビ市場に参入する方針だ。「当社はプラズマ専業で展開してきたが、競合のプラズマメーカーはどこも液晶をやっている。液晶をラインアップに加えることは現実的な判断。新たなディスプレイ事業が展開できる」(須藤社長)
シャープは3800億円を投じて第10世代パネルの工場建設を進めるなど、液晶増産に思い切った投資を続けている。片山社長は「パイオニアは当社にとってお客様。工場の操業率アップにつながる。大歓迎だ」と話す。
シャープは、パイオニアのオーディオ技術を液晶テレビに導入するなど、パイオニアが強みとする音響やカーナビの技術を、自社製品に活用していく方針だ。「パイオニアの音響技術を活用すれば、例えば、先日発表した薄さ2センチのテレビにふさわしい良い音が出せるだろう」(片山社長)。ただプラズマテレビへの参入については「多分、ない」と否定的な姿勢を示した。
両社はテレビや車載機器のほか、有機ELや次世代DVDの分野でも協業していく。
資本提携により、シャープはパイオニア発行済み株式の14.28%を保有する筆頭株主に、パイオニアはシャープの発行済み株式の0.9%を保有することになるが、「両社とも従来通り、独立して経営する。持ち株比率を将来どうこうする、という予定もない」(須藤社長)として、買い増しや経営統合の可能性は否定した。
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